背景
労働人口の減少が深刻な課題となる中で、インフラ点検や物流、防災などの分野において、ドローンの活用による省人化や業務の効率化が期待されています。また、2022年12月には改正航空法が施行されてドローンのレベル4飛行が可能になったことで、ドローンの早期社会実装が求められています。一方で、ドローンをレベル4飛行で運航する場合、ヘリコプターなどの有人機やドローンなどの無人航空機などとの接触を防ぐため、安全に十分に考慮した飛行経路の設計や緊急時の制御などのオペレーションが必要になり、運航における作業負荷や労働力の確保が課題になります。これらの課題を解消して、運航の効率を向上させるためには、1対多運航の実現が不可欠とされています。
運行管理システム(UTM)とは
1対多運航の実現に向けて注目されているのがUTM(UAS*1 Traffic Management)です。UTMは、ドローンを安全に運航させるために必要な飛行空域の利用計画調整、適切な運用状況の把握、有人機を含めた運航リスクの把握をサポートする管理手法です。UTMにより、事故の未然防止や飛行実績の管理による運航品質の向上などを実現することができます。
日立はこれまで、UTMの開発や、UTMの機能構造に関する国際規格化に取り組む*2など、ドローンの社会実装の加速に貢献してきました。
*1 UAS(Unmanned Aircraft System)は、操縦者が乗らずに飛行する航空機およびそれを制御する仕組みの総称。
*2 2023年4月26日に国際標準化機構(ISO)から、国際規格「ISO 23629-5 UAS traffic management (UTM) – Part 5:UTM functional structure」として正式に採択・ 発行されました。詳細はニュースリリース「ドローンの社会実装に向けてドローン運航管理システムの機能構造を国際規格化」をご覧ください。
ソフトバンクとドローンの遠隔制御に関する検証を実施
ソフトバンクは、1対多運航の実現に向け、ソフトバンクの通信ネットワークとクラウドを活用して、遠隔からドローンを制御するシステムCloudGCS(Cloud Ground Control Station)の開発を進めています。このたび、日立の「ドローンソリューション」のUTMと、ソフトバンクのCloudGCSを連携させて、ドローンの遠隔制御に関する検証を実施しました。
検証では、オペレーター1人がドローン2機を飛行させて点検作業を行うシーンを想定し、CloudGCSで飛行経路の設計を行うとともに、UTMで有人機*3や無人航空機などと飛行経路が重複しないことを確認しました。また、飛行中のドローンが、有人機などに接近したことや飛行禁止エリアに進入したことをUTMで検知し、CloudGCSとUTMの双方のシステム画面にアラートが表示されることで、オペレーターが緊急停止できることを確認しました。日立のUTMとソフトバンクのCloudGCSの連携により、ドローンの飛行経路設計や緊急時のアラート、遠隔制御などの1対多運航のオペレーションが可能になることや、システムの連携による有用性を確認することができました。
*3 有人機を想定したデータで検証しました。
今後の展望
この検証で得られた成果を基に、日立はソフトバンクと連携してさらなる飛行実証や技術開発を行い、ソフトバンクがレベル4飛行を見据えたサービスとして提供予定である、法人向けの新たなドローンサービス「SoraBase(ソラベース)」の遠隔制御ソリューションの実用化に向けて、協創を推進していきます。
日立は今後もドローンを活用して空のイノベーションを加速し、インフラ点検などにおけるお客さまの課題解決を支援していきます。