Hitachi
お問い合わせお問い合わせ

私たちの生活やビジネス、あるいは業務のあり方を大きく変えようとしている生成AI。今後、生成 AI は、私たちの「相棒的な存在」や「日常生活の必需品」になる可能性を秘めています。
「教えて!あなたの生成 AI 活用術」シリーズは、生成AIを業務やプライベートで利用している日立の従業員が、創造力と技術力を生かし、おすすめの活用方法やアイデア、今後の可能性について、具体的なユースケースやエピソードとともに紹介する連載企画です。

今回は、デジタルシステム&サービスセクターの品質保証を担当する冨尾 燿平さんの活用術を紹介します。冨尾さんは入社3年目ながら世界的なデータ分析コンペ「Kaggle」でソロ金メダルを獲得した若手データサイエンティストです。
そんな冨尾さんは、普段は品質保証(以下、QA)業務に携わっています。QAの業務において、どのように生成AIを活用されているのでしょうか?
(※本記事の内容は、業務外での個人的な活用も含まれます。)

画像: Kaggleソロ金メダル獲得者に聞く生成AI活用術 ~品質保証×生成AIの可能性~

冨尾燿平(Yohei Tomio)
株式会社 日立製作所 
デジタルシステム&サービス統括本部 品質保証統括本部 デジタルサービス品質保証部
<Profile>
2022年、日立製作所入社。入社以来、デジタルシステム&サービスの品質保証部門で品質保証業務に従事。現在は、生成AIを活用した業務効率化やAIナレッジの作成を担当。2024年9月に世界的なデータ分析コンペ「Kaggle」でソロ金メダルを獲得。

業務内容について教えてください。

デジタルシステム&サービスセクターのデジタルサービス品質保証部に所属していて、主に2つの業務を行っています。一つ目は、生成AIを活用した品質保証業務効率化の検証です(後述)。二つ目は、AIに関するナレッジの作成です。AIは案件特有の事象によって、判別精度が低下してしまう場合があります。例えばAIの画像認識によって製品の故障を判別する場合、工場の照明が暗くAIが正しく判別できる画像になっていないなどのリスクが考えられます。そのような案件固有の品質リスクを抽出し、対策に繋げるためのナレッジの作成に携わっています。その他にもAIシステムの開発プロセスの妥当性を評価するためのナレッジや、生成AI活用時のリスクを纏めたナレッジの作成にも携わっています。

生成AIを使い始めたきっかけと時期、また利用頻度はどのくらいですか?

生成AIでデータ分析のコーディングができるという情報をネットで見たことがきっかけで、1年ほど前から利用しています。業務では週2~3日ほど利用しており、プライベートでは自身のスキルアップのため日常的に参加しているデータ分析のコンペの期間に毎日利用しています。

生成AI をどのような用途で活用していますか?

業務の活用例:品質保証業務の改革促進

現在担当している「生成AIを活用した品質保証業務効率化」とは、従来の品質保証業務でSEやQAが負担に感じている作業を生成AIで解決する取り組みです。我々の部ではSEやQAにとって、より効果が見込まれる作業を5項目抽出し、組織目標として解決しようと考えています。5項目のうち、現在私が開発している「ナレッジ選定の自動化」について説明します。

お客さま案件のプロジェクト(以下、PJ)でリスクを軽減するためには、品質保証部門が作成した品質ナレッジをSEの業務に適用する必要があります。ナレッジを適用するためには、PJに関連するナレッジすべてをQAやSEが読み、PJに必要なナレッジの適用可否を判断する必要があります。ですが、ナレッジの数は膨大であり、すべて読み終えるにはとても時間がかかってしまうことが課題となっていました。そのような課題を解決するため、PJ資料を社内の生成AI利用環境であるEffibot(えふぃぼ)に入力し、PJ資料から適用すべきナレッジを生成AIが提案するシステムを開発しています。「どのような形式でPJ資料を入力すれば良いか?」「質問文をどのように変えればユーザーが期待する形式で生成AIが返答するか?」「どのような設計にすればユーザーが使いやすいか?」などを考え、プロトタイプを開発しています。プロトタイプにて検証が終了した後、それらの仕組みを反映した「ナレッジ選定自動化ツール」をリリースして、現場でQAやSEに使ってもらうことを想定しています。

プライベートの活用例:データ分析コンペにおけるドメイン知識と翻訳作業のサポート

データ分析のコンペ「Kaggle」では、与えられたテーマに沿ったドメイン知識が必要になることがありますが、そうした専門知識を補うために生成AIを利用しています。
今回私が金メダルを獲得したコンペは、「病院で撮影された患者さんの皮膚の画像データと属性データ(性別、年齢など)から、検査対象の腫瘍が悪性であるか良性であるかを識別する」という医療分野のテーマで開催されました。私をはじめ、コンペの参加者の大半は医療知識がなかったため、どのような特徴量*がモデルに有効であるかわかりませんでした。
そこで言語理解の精度が高いことが知られている生成AIのClaudeに自分で作成した特徴量とデータの説明を入力し、「モデルの精度を向上させるための新しい特徴量を提案してください」と質問し、その回答から得られた特徴量をモデルに取り込みました。このアイデアはコンペの参加者によってKaggleのプラットフォーム上で共有されていたもので、精度向上に非常に有効であったため私も取り入れました。

*特徴量とは:機械学習やディープラーニングにおいて、大量のデータから汎用的なパターンを見つけ出す際に、データのどのような特徴に着目すべきかを表す変数。

画像: Claudeを用いて医療知識を補い、AIのモデルに有効な特徴量を導出(上:プロンプト、下:生成AIの回答)

Claudeを用いて医療知識を補い、AIのモデルに有効な特徴量を導出(上:プロンプト、下:生成AIの回答)

また「Kaggle」は、世界中の誰もが参加できるデータ分析のコンペで、その概要やデータの説明などすべてが英語で記載されています。さらに、コンペのテーマに沿った専門的な単語が記載されていることが多いため、理解するのに一苦労です。

しかし、ChatGPTを使って英語の翻訳作業のサポートと、専門用語の意味を聞くことで、コンペの概要を理解する速度が以前より向上したと感じています。

画像: ChatGPTにコンペの概要の英訳や専門用語を解説してもらい、素早い理解の助けに(上:プロンプト、下:生成AIの回答)

ChatGPTにコンペの概要の英訳や専門用語を解説してもらい、素早い理解の助けに(上:プロンプト、下:生成AIの回答)

生成AI を活用するメリットをどのように感じていますか?

私は入社してからコーディングを本格的に始めたため、生成AIにコーディングを手伝ってもらうことで作業効率の向上に繋がっています。生成AIを利用する以前は、コードを書くのに一苦労でした。「この関数どうやって使うんだっけ?」「このコードでバグが起きているけど、直し方がわからない…」などつまずくことが多かったのですが、生成AIを利用することで負担が大きく減りました。以前はデータ分析のコンペに出ても、コーディングにほとんどの時間を割いていましたが、生成AIを利用することでアイデア出しなど、別の作業時間を確保できています。

画像: ChatGPTでコーディングを効率化

ChatGPTでコーディングを効率化

今後、どのように生成AIを活用していきたいですか?仕事でも趣味でも自由にお聞かせください。

Kaggleでは、銀メダルをあと一つ取得すればCompetition Masterという称号を貰うことができるので、全力で取り組みたいです。Competition Masterを獲得するためにも、引き続きコーディングや英語の翻訳作業などで生成AIをフルに活用していきたいです。

業務では、「ナレッジ選定の自動化」の開発が終わった後は、「契約書関連のチェックリスト自動消化」の開発を推進します。契約書関連の資料は要件の漏れや不足があると大きな問題につながるため、チェックリストが存在します。ですが、チェックリストを消化していく作業は非常に時間がかかります。そこで我々は、契約書関連の資料とチェックリストを生成AIに入力し、生成AIがチェックリストを自動で消化するシステムを考えました。このシステムが現場で使える精度になれば、この仕組みを活用し、他の資料に関するチェックリストも自動消化出来るかもしれません。これらの開発によってQAやSEの業務の負担が減り、効率的な働き方を推進できると考えています。

今後も生成AIを活用しながら、品質保証業務に大きく貢献できるよう頑張ります!

関連リンク

※「ChatGPT」は、OpenAI OpCo, LLCの登録商標です。
その他記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。


This article is a sponsored article by
''.