12月7-8日、茨城県の日立駅前にある新都市広場周辺で、モビリティの未来を体験する「ひたち次世代モビリティフェス」が開催されました。便利で環境にやさしい様々な種類の乗り物を、市民のみなさまに一挙に体験いただくことができました。
日立市主催のこのイベントには、日立製作所が日立市と推進する次世代未来都市共創プロジェクトで掲げるテーマの一つ「公共交通のスマート化」に取り組むプロジェクトメンバーが参加。11月22日に発表* した、「2035年の日立市の公共交通の将来像」として描いたグランドデザインを、ここでもご紹介し、街や交通の未来のことを一緒になって考える機会となりました。
* 日立製作所ニュースリリース:日立市と日立製作所が、2035年の「日立市の公共交通の将来像」 としてグランドデザインを描きました(2024年11月22日)
今回の実証は、技術的な検証を軸にしたものではなく、「どんなシーンで使ってみたいか?」「どんな乗り物に、いつ乗りたいか?」といった利用者の目線を知ることで、街づくりに生かしていこうというもの。いろいろな観点を想定したアンケートに回答をいただくことで、さまざまな年代の方に、生活に取り入れる可能性を思い描いてもらうこともできました。
2日間開催されたフェス全体でのモビリティ試乗者数は合計345名。関連するクイズなどに参加してまわるスタンプラリーには、500名近い参加を頂く結果となりました。
新都市広場にやってきた未来感のある乗り物たち
今回、日立製作所が出展したのは、研究開発グループのカート型自動運転モビリティ。イベントには他にも、ベンチ型自動運転モビリティ、立ち乗り/座り乗り型パーソナルモビリティ、そして電動キックボードの全5種類を、市民のみなさまに試乗いただきました。他にも、未来を感じざるを得ない!運転席が完全になくなったシャトルバス型自動運転車両や、現在日立市内の大甕駅周辺で試験走行中の自動運転バスと同型の車両など、来場者が自由に乗り降りできる展示も充実していました。
運転席がないシャトルバス型自動運転車両。アンケートでも乗ってみたいモビリティ部門で一番人気でした(株式会社ティアフォー)
「乗用車型自動運転モビリティ」と「カート型自動運転モビリティ」が颯爽と市内を走行!
日立製作所は、カート型と乗用車型の2種類の自動運転モビリティの試乗体験会を行い、2日間で延べ65名の方に試乗いただくことができました。日立市内での公道走行は今回初めての試みですが、あらかじめ決められたルートに従って、GPSやカメラに加えて、「LiDAR (ライダー)」と呼ばれるレーザー光のセンサーにより、車両自身が自分の位置を正確に把握し、車線からはみ出ないよう、障害物や危険がないかを常に計算しながら安全に走行しました。どちらも速さの設定は時速20km。より安全に傾けた設定に加えて、人間が運転するときにありがちな「死角から歩行者は出てこないだろう」「対向車は曲がってこないだろう」といった、根拠のない仮説は排除し、データに基づいた判断を下しながら、安全に、そして大変スムーズに公道走行をお披露目することができました。
★自動運転データ★
・走行速度:時速20㎞
・走行距離:約1㎞の周回コース
・走行時間:5分~7分かけて安全に走行
・自動運転に関わるセンサー:
複数センサーの組み合わせで信頼性を向上
―カメラ(前方に2台)、GPS(衛星)、LiDAR
―車両や、歩行者はLiDARとカメラが検知
―信号は、カメラが画像認識し、ブレーキを操作
※青になっても歩行者が残っている場合は障害物として検知し停止します
実証実験として日立駅前の公道を走行したこの日。実は、いつものテスト走行とは違う環境で、想定していなかったことが起きました。これぞまさに実証の醍醐味!
その正体は、試乗体験として同じコースを周回していた「電動キックボード」です。「直立不動の人間」=「歩行者」としてセンサーが察知するも、最高速度20kmで走行もする、そのヒトらしき物体は、一体何なのか、コンピュータも驚いたに違いありません。このまちではまだ見かけることが少ないこのモビリティも、この日の実証により、「公道の脇を、直立不動だが高速で動く人間は、電動キックボードという一つのモビリティ」と認識されることになったことでしょう。こうやって、未来の街が作られていくのかもしれませんね。
自動運転走行中の様子。前方に電動キックボードを発見、スピードを落とします
人間による運転では、ある程度危険予知に関する仮説を捨てており、そうしなければ動けなくなるのだそうです。ですが、自動運転ではあらゆる可能性を考えて運転操作を指示しなければなりません。そうした場合にどれくらいの制限を許容するのか、どこまで安全に傾けるのか、社会の受容を見極めていかなければならないということでした。
今回はいざというときに人間が運転をとって変わることができる自動運転レベル2。今後も、運転手を必須にしないレベル4の世界をめざして、技術面と実際に人が活用する社会実装の両面で、レベルアップが期待されます!
運転手が、前にならえ!ハンドルから手を離していますが、走行中です。
モビリティの新しいアイデアがぞくぞく生まれる、未来を描く小さな工場
茨城大学工学部が出展していたのが、おもちゃのブロックでモビリティを作るブース。市民参加型を掲げるプロジェクトとして、大変重要な鍵を握るこのワークショップでは、日立市の未来を担う子どもたちの自由な発想によりモビリティの新しいアイデアが生み出されていました。タイヤに囲まれたモビリティ、空を飛びそうな形状や乗る人のテクニックが試されそうなバランス型など大変興味深いものばかり。中でも目を引いたのが、日立市の象徴でもある、満開の桜が咲き誇る木と一緒に移動ができるモビリティ。自動運転であれば、宴会をしながら、仲間を増やしながらどこまでも走っていけそうです。
どこか懐かしい動く縁側?モビリティ
今回のフェスの中でもう1台、自動運転走行していたのがこちらのベンチ型モビリティ(久留米工業大学 インテリジェント・モビリティ研究所、Le DESIGN株式会社、パーソル クロステクノロジー株式会社)。乗車する人は進行方向を向きません。座った人同士が横並びになり、時速3kmでゆっくりと走行する姿はまさに、動く縁側です。走行音がほとんどなく、振動も感じないため、温かいお茶などを手にしながら、ご家族やご友人とのんびりとおしゃべりをしたり、心地よい日差しを楽しむことができる空間を提供します。新都市広場から伸びる約200mの直線距離を、横断歩道も安全に渡りながら6~7分の癒しの時間を演出していました。
単純に見えるかもしれませんが、ここにもさまざまな最新技術が搭載されており、その一つがタイヤです。オムニホイールと呼ばれるもので、一つのタイヤに巻き付くように複数のタイヤが装備されたような形状をしています。各タイヤが個別に動けるため、車輪の向きを変えずに前後・左右に自在に移動することができます。
この日、家族で体験した小学2年生は「かみね動物園で、どうぶつを見ながら移動したい。いつもはパパが運転ばかりだから、横に座っていろいろ話したい」と、NHKのカメラ取材に回答していました。
★自動運転データ★
・走行速度:時速3㎞
・走行距離:約200mの直線コース
・走行時間:6分~7分かけて安全に走行
・自動運転に関わるセンサー:カメラとLiDARの組み合わせで安全性向上
前輪だけがオムニホイールになっていて小回りの利く仕様を実現。
次世代未来都市(スマートシティ)への共創の取り組み
現在、日立製作所では創業の地「日立市」との共創プロジェクトを推進しています。先進の取り組みが進む街がこれからどんな未来に向かうのか。市民と共に歩みを始めたこの取り組みは、こちらのDigital Highlightsまたは、日立市公式ウェブサイトよりぜひご確認ください!