ここ数年で、生成AIはビジネスの世界で急速にその存在感を増しており、多くの企業が「AIをどう使うか」という検討フェーズを終え、「いかにしてAIを業務に組み込み、具体的な成果を出すか」という実践フェーズへと移行し始めています。AIは、単なるチャットボットを超え、私たちの日々の業務に寄り添う「相棒」として、ビジネスパーソンの働き方を根本から変えようとしています。現在は、そんな潮流の真っ只中にあります。日立グループもこの大きな潮流を捉え、AIを使いこなす人財の発掘や育成を加速させています。
その取り組みを象徴するイベントとして、2025年10月8日、今回で第2回目となる「Microsoft 365 Copilot(以下Copilot)活用コンテスト」が、日本マイクロソフト品川オフィスで開催されました。(第1回目の活用コンテストの様子はこちらから!)
(第2回Microsoft 365 Copilot活用コンテストの会場の様子)
当日はリアル会場とオンラインのハイブリッド形式で実施され、総勢250名もの参加者が集結。社内の全グループ会社から寄せられた応募総数31件の中から、厳しい選考を勝ち抜いた10名のプレゼンターが、最終決戦の舞台に登壇しました。今回は、その熱気あふれる様子と、そこで披露された「受賞5大事例」を中心にご紹介します!
なぜ今、Copilotコンテストなのか?
〇開会の挨拶

(OEA推進室 原田室長による開会の挨拶)
開会の挨拶に立った日立製作所 オペレーショナルエクセレンスAI推進室(以下、OEA推進室)の原田室長は、「第1回目と比べ、Copilotを使うのは当たり前に。我々の使命は、この"相棒"をさらに進化させ、生産性を向上させること。そのためには、良い事例を積極的に発信することが不可欠」と、コンテストの意義を力強く語りました。今回のコンテストを主催したOEA推進室は、デジタルシステム&サービスセクター内を中心に、調達、人事、財務、法務といったバックオフィス業務のAI活用促進と事業貢献を目的に2024年10月に新設された実行部隊。「Everyday AI」をミッションに掲げ、現場部門とのハブとしてAIの徹底活用をめざしており、今回のコンテストもその活動の一環として実施されました。開会の挨拶では、日本マイクロソフト社の綱島常務執行役員からも「アジェンダを見ただけで非常にワクワクしている。機能は高速でアップデートされており、ぜひ活用してほしい」とコメントがあり、パートナー企業からの期待の高さもうかがえました。
見るだけでもワクワクするような、当日の最終決戦で行われた10件のプレゼンテーションの一覧はこちらです!コンテストのルールは「発表5分、質問2分」。応募31件から選ばれた精鋭たちが、この限られた時間内で、自らのAI活用術の革新性と実用性を熱くプレゼンしました。審査員は、日本マイクロソフト社から綱島常務執行役員、新井本部長(グローバルビジネス本部)、日立から原田室長(オペレーショナルエクセレンスAI推進室)、山本CIO(コネクティブインダストリーズ事業統括本部)らが担当しました。

(プレゼン一覧)
ハイライト:コンテスト受賞事例にみる「Copilot活用の最前線」
全10件のハイレベルなプレゼンでは、発表後の質疑応答も非常に活発に行われ、会場の熱気をさらに高めました。

(プレゼン中の質疑応答の様子)
ここでは、特に審査員と聴講者の心を掴んだ以下の「受賞5大事例」を、本レポート独自の視点として、活用テーマごとに【Before】(課題)、【How】(活用法)、【After】(成果)、【Next】(今後の展望)の4つの観点でぎゅっと凝縮してご紹介します。
| 活用テーマ | 受賞内容 | タイトル |
|---|---|---|
| 業務プロセス革新 | Microsoft賞 | 目視チェックの軽減! Copilotが導く脆弱性情報収集の自動化(No.2) |
| 業務プロセス革新 | 日立賞 | 手書きアイデアを即プロトタイプへ Copilotが変えるUI開発(No.8) |
| ナレッジの共有・拡張 | 日立賞 | プロンプト共有サイトの作成(No.4) |
| AIの高度活用 | オーディエンス賞 | AI上司エージェント(No.3) |
| AIの高度活用 | Microsoft賞 | AIエージェント作成AIエージェント(No.10) |
1. 業務プロセス革新ケース ―AIが"目"となり"手"となる
AIを業務フローに組み込むことで、人間の目視作業や手作業を劇的に削減した2事例が、Microsoft賞、日立賞をそれぞれ受賞しました。
・Microsof賞: "目視チェック"の軽減!Copilotが導く脆弱性情報収集の自動化 (No.2)

(脆弱性情報収集業務におけるBefore/After)
【Before】毎日約100件ものURLを手動クリックと目視で巡回し、ソフトウェアの脆弱性情報を収集・確認。更新があったものは分析するという膨大な手作業が発生。
【After】作業時間が毎日約50%弱削減(作業数70%削減)という劇的な効果を達成。多量の更新情報の確認作業が効率化できたことで、分析業務に集中できるようになり、属人化の排除も実現。
【How】CopilotとPower Automateを組み合わせ、Webページの更新を自動確認するツールをCopilotとの「対話形式」で作成。更新があったページだけを人間が確認するフローに改善。
【Next】 脆弱性情報の確認作業の自動化に留まらず、Copilotによる分析そのものの自動化や誤検出の改善にも取り組み、さらなる精度向上をめざす。
・日立賞:手書きアイデアを即プロトタイプへ Copilotが変えるUI開発 (No.8)

(プレゼン中の様子)
【Before】 サービスのUI開発時、手書きのラフ案からデザインを探し、コーディングして動くプロトタイプを作成するまでに最低でも数日を要し、スピード感が課題。
【After】 従来数日かかっていたプロトタイプ作成が1時間以内に短縮(作業効率5倍以上)。アイデアを即座に形にして共有できるようになったことで、手戻りが激減し、議論の質も向上。
【How】 iPadで描いた手書きイメージをCopilotに渡すだけで、数分以内に完成度の高いHTMLコードを自動生成。配色、レイアウト、ボタン動作まで提案される。さらに、改善点をAIエージェントに読み込ませ、エージェントが全てチェック・修正。
【Next】会議の議事録から直接UI修正を行うことや、営業部門が商談のその場でお客様の要望を反映したモックを即時生成するなど、さらなる開発スピードの向上と部門間連携の強化をめざす。
2. ナレッジの共有・拡張ケース ―AIが"組織の知"を繋ぐ
個人の暗黙知やノウハウを、AIを通じて組織全体の資産に変える事例が日立賞を受賞しました。
・日立賞:プロンプト共有サイトの作成 (No.4)

(プレゼン中の様子)
【Before】AI活用を部内で推進する一方で、「AIの使い方が分からない」、「プロンプト作成が面倒」という声もあり、メンバー間でのノウハウ格差やAIが敬遠されることがあった。
【After】利用のハードルが劇的に下がり、利用者の90%が「継続利用したい」と回答。既に20個の実用的なプロンプトが集まり、組織のノウハウとして共有されている状態に。
【How】業務で使えることと簡単に操作できることを条件に、Copilotと幾度もラリーを繰り返し、「プロンプト共有サイト」を構築。さらに、プロンプト追加作業を自動化する「追加エージェント」まで作成。
【Next】今回のコンテストなどで集まった優良なプロンプトを収集・追加する仕組みを強化し、他部署や特定プロジェクトへ横展開していくほか、サイト作成ノウハウを生かし、別サイトの作成なども視野に入れる。
3. AIの高度活用ケース ―AIがAIを作り、やがて"上司"に
Copilotの標準機能を使いこなすだけでなく、AI自体に新たな役割を与える、一歩進んだ2事例がそれぞれオーディエンス賞とMicrosoft賞を受賞しました。
・オーディエンス賞:AI上司エージェント (No.3)
【Before】ケアレスミスや、上司からのフィードバック対応に時間を要していた。また、日々の指摘を断片的に受け取ってしまうことがあった。
【How】普段のTeamsチャットから上司の会話特徴や着眼点をAIに学習させ、レビュー前に壁打ちできる「AI上司エージェント」を開発。利用者が最もよく話す上司*1を選択できるなど、最適化も実施。
【After】事前にAI上司と壁打ちすることでレビューの精度が向上し、本質的な相談に割く時間を創出。さらに、上司の着眼点が言語化・モデル化されたことで、振り返って学ぶことが可能に。
【Next】議事録など他のデータソースも学習させ、精度を向上させるとともに、プロンプトの調整によって仮想ロールプレイへの応用にも期待。
*1 会話データ量が多いTeamsアカウント
・Microsoft賞:AIエージェント作成AIエージェント (No.10)
【Before】AI活用が一部の方のスキルに依存しており属人化。また、エージェント作成に時間を要していた。
【How】各種業務に合わせたAIエージェントを、自然言語の対話ベースで最適なプロンプトを生成する『Prompt for Prompts(AIエージェント作成AIエージェント)』を開発。
【After】専門家でなくても高機能なAIエージェント開発が可能に。開発時間は数時間から数分に短縮され、アイデアの検証サイクルが飛躍的に高速化。
【Next】以下領域での活用などを視野に入れながら、多様な職種に特化したAIエージェントの迅速な展開をめざす。
例:営業職…議事録作成&次のアクションプラン提案エージェント(以下画面キャプチャ参照)
企画職…提案前の企画書をレビューしてくれるエージェント
管理部門…経費精算や勤怠などの定型業務を学習し24時間働く社内問い合わせ対応エージェント

(議事録作成&次のアクションプラン提案エージェントの作成手順イメージ)

(議事録作成&次のアクションプラン提案エージェントのシステムプロンプトイメージ)
まだまだある!注目の活用アイデア
惜しくも受賞は逃したものの、10名のプレゼンターからは他にも「複雑な仕様書の自動要約」「社内規定QAボット」「議事録からのタスク自動抽出」といった、現場の課題解決に直結する多様なアイデアが発表されました。
激戦の舞台裏:審査員を唸らせた「受賞の決め手」

(AIアバターによる講評)
プレゼン全体の講評では、日本マイクロソフト社の協力によりAIアバターが登場!アバターは、「業務効率化だけでなく、日々の作業、コミュニケーション実現など多岐にわたりCopilotが活用されていた。プロンプトを工夫し、Copilotをまるで上司や同僚のようにして業務効率を飛躍的に向上させているところに驚いた。」とコメント。アバター自身の表情や抑揚は、より人間に近づいており、技術の進化を感じさせるものでした。また、審査員からは総じて、「前回からぐっとレベルが上がり、特にAIエージェント関連の発表を高く評価した」という声が上がりました。さらに、「プロンプト共有サイトのようなプラットフォームはセクター全体に広げていきたい」、「手書きUI開発のようにクイックにアイデアを反映できる点に可能性を感じる」といった、具体的な事例の横展開や将来性に対する高い期待が寄せられました。
参加者の声:「AIを見る目が変わった」
コンテストの熱気は、参加者から寄せられた多くの声にも表れていました。ここでは、見事オーディエンス賞に選ばれた受賞者のコメントと、会場・オンライン参加者の声を抜粋してご紹介します。
・オーディエンス賞(AI上司エージェント (No.3)) 受賞者コメント

オーディエンス賞を受賞できると思っていませんでしたが、活用事例を皆さんに面白いと思っていただけてとても嬉しいです。コンテスト参加のきっかけは、全社的にAI活用が盛んになっている中で、自らもAI活用に積極的に挑戦したいと思ったことです。この活用事例は、より気兼なく上司とレビューしたいと思ったことがきっかけで着想しました。皆さんも普段の業務でお困りごとがあると思います。生成AIの活用が解決策を導く糸口になると思いますので、ぜひいろいろ試していただけたらと思います!
・会場・オンライン参加者の声(サマリ)
会場からも「日々の開発効率向上のヒントになった」という声や、「"AI上司"や"エージェント作成エージェント"といった、多様で具体的なアイデアが非常に参考になった」という声が上がりました。また、このように互いに知恵を共有し交流する場に対しても高い評価が寄せられ、「個々のプレゼンに対する今後の発展可能性についても話が出ており、有意義な場だった」、「AIを率先して活用する方々と現地で交流でき、多くの気づきを得た。コンテストの継続を励みにしたい」といった、具体的で熱量の高いフィードバックが集まりました。
まとめ:コンテストが示した「次の働き方」

(山本CIOによる閉会の挨拶)
コンテスト全体を通じて見えてきたのは、AIを使いこなす人財こそが、これからのビジネスをけん引していくということでした。閉会の挨拶に立った、コネクティブインダストリーズ事業統括本部の山本CIOは、自身もCopilotを秘書代わりにフル活用していること、自分自身も"Copilot上司エージェント"に相談に乗ってもらっていることを明かして会場を和ませました。次のように総括し、山本CIOの熱いエールで、コンテストは幕を閉じました。
「Copilotにプロンプトを工夫して入れるフェーズから、Copilotにプロンプトを作ってもらう発想に広がってきた。今後は、音声や動画、さらにはエージェント同士が連携する未来にも注目している。第3回がどれだけ進化するのか楽しみ。ぜひこの横のつながりを大事に、仲間とともにチャレンジを続けてほしい。」
編集後記
今回のコンテストを取材し、最も強く感じたのは、登壇者や参加者の皆さんが持つAIへの「熱量」です。AIを単なる効率化ツールとして使うのではなく、業務課題を解決するための「相棒」として使いこなそうとする探究心と工夫が、会場の至る所に溢れていました。
Copilotは、もはや「使うかどうか」を議論するフェーズではなく、「どう協働し、新たな価値を生み出すか」を考えるフェーズになっていることを実感する、そんな会でした。第3回目のCopilotコンテストがどのように進化を遂げているのか、今から楽しみです。
関連リンク
・【イベントレポート】マイクロソフトと共催!「Microsoft 365 Copilot 活用コンテスト」第1回開催 - Digital Highlights:デジタル:日立
・Lumada ー進化するAIについて
・AIアンバサダーご紹介サイト
商標について
・商標について
Microsoft、Teams、Copilot、Power Automate は、米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。Microsoft 365は、Microsoft Corporationが提供するサービスの名称です。



