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デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む日本企業は年々増え、手ごたえを感じ始めている企業もある。しかし、日本企業にはいくつかの課題があり、DXが進みにくい面がある。その1つが、古いテクノロジーをベースに更新を重ねてきたレガシーな基幹業務システムだ。日々の業務データは基幹業務システムで生まれ、管理されている。このデータをDXに活用するには、まず基幹業務システムをモダナイズし、新しいテクノロジーで構築されているDXのシステムとうまく連携させる必要がある。「戦略編」では、この課題を中心に日本企業のDX推進に向けた戦略について検討する。
画像: 日経BP総合研究所 フェロー 桔梗原 富夫

日経BP総合研究所
フェロー
桔梗原 富夫

桔梗原’s Eye
2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」でも指摘されていますが、米国企業の多くは、業務ソフトウエアが提供する標準的なプロセスに合わせて業務フローを変えてきたのに対し、日本企業では逆に、業務フローに合わせてシステムの方を変え、巨額な投資を行って多数の独自機能を積み上げてきました。その結果、日本企業の基幹業務システムは複雑化。このレガシーなシステムの維持とメンテナンスに、人材・コストの多くが割かれています。だからこそ基幹業務システムのモダナイズが進めば、日本全体で多大な企業成長を期待できるでしょう。

DXは進んでいるが、明暗が分かれつつある

2023年2月に情報処理推進機構(IPA)が発行した『DX白書2023』によれば、2021年度の調査では、DXの取り組みで「成果が出ている」と答えた企業が49.5%。2022年度の調査では58.0%と8.5%も上昇した。DXの成果を実感する日本企業は、着実に増えている。

画像: 日本企業のDXは着実に進み、成果を出しつつある。しかし、米国企業と比べるとまだ成果が出ていないとする企業が多い  出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX白書2023』

日本企業のDXは着実に進み、成果を出しつつある。しかし、米国企業と比べるとまだ成果が出ていないとする企業が多い

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX白書2023』

その反面、「成果が出ていない」とする企業も22.6%から24.7%に増えた。「わからない」と回答した企業は27.9%から17.3%に減っている。つまり、DXへの取り組みは着実に進んでいるが、成果を感じている企業とそうでない企業の明暗が分かれ始めているのだ。

米国企業を見ると、日本企業とはかなり違った光景が広がっている。2021年度の調査で「成果が出ている」と回答した企業が90.1%と大半を占め、2022年度の調査でも89%がそう答えた。数年前から9割に上る企業がDXで成果を出しているのだ。

この違いはどこから生まれているのか。業種や企業によっても事情が異なるだろう。しかし、多くの日本企業に共通する課題がある。基幹業務システムのモダナイズだ。

クラウド移行で基幹業務システムのモダナイズを推進

日本企業の基幹業務システムには、米国企業にはあまり見られない特徴がある。米国では、業務ソフトウエアが提供する標準的なプロセスに合わせて業務フローを変えてきた企業が多いのに対し、日本では逆に、業務フローに合わせてシステムの方を変えてきた。日本企業の多くは、これに巨額な投資を行い、多数の独自機能を積み上げてきた。

その結果、日本企業の基幹業務システムは複雑化し、ブラックボックス化した。OSやアプリケーションの更新時にも、独自機能の動作検証やセキュリティー対策に時間とコストがかかる。そのため、古いテクノロジーをベースとするシステムを使い続け、老朽化が進んだ。このレガシーなシステムの維持とメンテナンスに人材とコストの多くを取られ、DXにまで手が回らない状況が続いている。

この事実は、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」でも指摘されている。いわゆる「2025年の崖」だ。基幹業務システムを支えているメジャーなプラットフォームの刷新が2021~2025年に集中し、レガシーな基幹業務システムがDXの足かせになると指摘した。2025年以降、年間最大12兆円に上る経済損失が懸念されている。

日本企業の多くには、この前提がある。データ活用によるDXを加速させるには、老朽化した基幹業務システムをモダナイズし、最新のテクノロジーで作られるDXのシステムと連携させる必要がある。

基幹業務システムをモダナイズする有力な方法として期待されているのが、クラウドへの移行だ。ハードウエアや基盤の管理が不要になるため、移行前より容易かつ低コストで管理できるようになる。ハードウエアに依存しないので、スケーラビリティも向上する。サービス提供事業者がシステムのアップデートや不具合に対応してくれるため、常に最新のシステムを利用できる。クラウド移行によって基幹業務システムをモダナイズし、運用や管理の工数を下げ、その分のリソースをより戦略的なDXに振り向けることができる。

パブリッククラウドの活用が広がっていることは、統計にも表れている。『DX白書2023』によれば、「パブリッククラウド(IaaS、PaaS)」を「全社的に活用している」「事業部で活用している」の合計値は32.5%に達している。

画像: DXの取り組みで活用している主な要素技術。パブリッククラウドの活用が進んでいる 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX白書2023』

DXの取り組みで活用している主な要素技術。パブリッククラウドの活用が進んでいる

出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)『DX白書2023』

オンプレミス環境にある基幹業務システムをクラウドへ移行するために、まず考えられるのは「クラウドリフト」と呼ばれるアプローチだ。オンプレミス環境で稼働するシステムの多くは、仮想マシン上に構築されている。それをそのままの形でクラウド上に移行する。

基幹業務システムをパブリッククラウド上で一から作り直す「クラウドシフト」というアプローチもある。アプリケーションの設計や開発にかかる期間とコストは、クラウドリフトより格段に大きくなるが、新たなテクノロジーで構築し直すためクラウドのメリットを最大限に享受できる。

クラウド活用は「基盤」と「運用」の両面で考えよ

クラウド移行のメリットは大きいが、その道をすぐに選択できない企業も少なくない。

例えば、セキュリティーの観点から重要なデータをクラウドに置きたくないという場合がある。パブリッククラウドは高いセキュリティー環境を備えているが、インターネットに接続されている以上、アクセスしやすい場所にデータが置かれることに変わりはない。担当者の設定ミスによって情報漏洩を引き起こすケースもあり得るし、経済安全保障の観点から主権をコントロールできないクラウドにはデータを置きたくないという声もある。

また、レガシーな基幹業務システムを一気にクラウドに移行してモダナイズするには、時間もコストもかかる。そのため、完全なクラウドシフトをめざしている企業でも、段階的に進めるアプローチが有効な場合が多い。

以上の理由から、現実的な施策としてオンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウドを選択する企業が増えている。

この場合、オンプレミスとクラウドの両方にデータが存在する状態になるため、セキュリティーを確保しつつ、柔軟かつスピーディにデータを運用できる基盤が必要になる。例えば、あらゆるビジネスデータを1つの基盤に集約し、オンプレミスとクラウドでのデータ運用を適材適所で管理できるような共通のデータ基盤だ。

また、運用面においても工夫が必要だ。管理対象となるITリソースが増えれば増えるほど、運用管理の負荷は高まり、運用チームはトラブル対応に忙殺される。結果として、システムの信頼性やセキュリティーの低下を招いたり、クラウド利用コストが想定以上に増加したりするケースも見られる。さらに、オンプレミスとクラウド、異なる環境を運用するチームをいかにスムーズに連携させるか、また、パブリッククラウドで進化し続けるクラウドネイティブでアジリティの高いアプリケーションを、オンプレミスのシステムやデータといかに連携させるかといった課題もある。

ハイブリッドクラウドの戦略を成功へ導くには、システムを「基盤」と「運用」の両面で捉えていくことが必要だ。過去の投資によって独自に築き上げてきたシステムから考えを切り換え、クラウド活用によるモダナイズを推進し、アジリティの高いIT基盤と人材を確保して、競争力の高いアプリケーションの開発にリソースを配分し直すべき時期に来ている。

次回「実践編」では、その具体的な方法論と企業事例を紹介する。

画像: digital-highlights.hitachi.co.jp
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