私たちの生活やビジネス、あるいは業務のあり方を大きく変えようとしている生成AI。今後、生成 AI は、私たちの「相棒的な存在」や「日常生活の必需品」になる可能性を秘めています。
「教えて!あなたの生成 AI 活用術」シリーズは、生成AIを業務やプライベートで利用している日立の従業員が、創造力と技術力を生かし、おすすめの活用方法やアイデア、今後の可能性について、具体的なユースケースやエピソードとともに紹介する連載企画です。
今回は、若手データサイエンティストの片渕凌也さんの活用術を紹介します。「趣味でもデータ分析をしている」と語る、筋金入りのデータサイエンティストである片渕さんから、英語学習や顧客提案資料の作成など、広く参考になる活用方法を紹介いただきました。すでにお客さまとの生成 AI プロジェクトにも携わっている若手データサイエンティストの活用術をぜひご覧ください!
(本記事は、2023/8/23に寄稿された内容です)
片渕 凌也(Ryoya Katafuchi)
株式会社 日立製作所
デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data&Design DataStudio
<Profile>
2022年4月、日立製作所に入社。大学では画像認識分野で「異常検知モデルのアーキテクチャの開発」や「ピクセルラベルを必要としない画像セグメンテーション手法の開発」をテーマに研究。入社後は、交通車両の部品消耗予測や街の再開発に向けた人流データ分析に従事した後に、日立グループの某工場向けのデータ分析ツールを開発。現在は、お客さまとの生成AIを用いた業務効率化支援プロジェクトなどに携わる。
生成AIを使い始めたきっかけと時期、また利用頻度はどのくらいですか?
SNSでChatGPTがData Science界隈で盛り上がっていたことに便乗し、2023年の1月中旬から無料版を触り始めました。同年3月にはPro+Planに加入し、上位モデルの利用を開始しました。利用開始から一年近く経った今も毎日欠かさず数十回は利用しています。
生成AIをどのような用途で活用していますか?
Case 1 提案資料のベースづくり
仕事では、主に顧客理解と提案内容のベース作りを無料版もしくはAzure版のChatGPTにお願いしています(顧客名は省き、業務内容は一般化して入力しています)。
今年に入ってから、「データサイエンス技術の利用やChatGPTの活用方法」について、お客さまへ提案する機会が増えたのですが、自分と異なる企業や職種向けにゼロからアイデアを出すのはなかなか難しいです。
そこで、「①顧客(企業・部署)の理解、②業務の理解、③課題の想定、④ソリューションの考案、⑤効果の想定」のステップで、ChatGPTにそれぞれマクロな説明をしてもらい、考えるべき観点やアプローチのベースを把握するようにしています。
例として広報部に「ChatGPTの活用方法」を提案することを想定して、「①顧客(企業・部署)の理解、②業務の理解」をChatGPTに聞いてみました。
このようにゼロから調査を始めるよりも、ある程度ベースとなる知識を持った状態で作業に取り掛かる方が圧倒的に効率的です。同様に、提案内容のアイデア出しに関しても、まずは複数のアイデアを出してもらい、それをお客さまに特化させていくといった流れで作り込んでいく方が作業するハードルが下がります。
ここでのポイントは、ChatGPTの回答が的確かどうかではなく、その回答から新たな観点が見つかったり、不足していたアイデアに気づける足がかりになることです。
社内で生成AIの活用術をグループで共有しているTeamsの投稿を見ると、まずはChatGPTにベースを考えてもらうというアプローチが一般化していると感じますが、やはり便利なので私もこの使い方をメインにしています。
Case 2 英語学習 ~生成AIがネイティブ英語の先生代わりに~
プライベートでは、有料版のChatGPTを英語学習に活用しています。英会話の練習をしていると、「これってどうやって言うんだっけ?」という問題に多々遭遇します。そこで、頻繫にChatGPTに適切な口語表現を聞いています。
インターネットを使えば、書き言葉は比較的に適切な表現が見つかりやすいですが、自然な話し言葉を見つけるのは時間がかかり、機械翻訳ツールも堅い文脈で翻訳する傾向があると感じています。それに対して、ChatGPTは話し言葉としての出力も得意なので英会話学習に最適です(実際に、GPTモデルを利用した英会話アプリも登場しています)。
また、ネイティブスピーカーに尋ねないと分からなかった微妙な単語のニュアンスを教えてくれるのも良いなと思っています。例えば、「I think this test is hard.」と「I find this test is hard.」では、日本語では両方とも「このテストは難しいと思う。」と訳されますが、このニュアンスの違いを知りたいときChatGPTだと詳細に解説してくれます。
このようにChatGPTを用いることで、よりスピード感のある英語学習が実現できていると感じています。
Case 3 データ分析と技術調査~コーディング時間を短縮し、思考作業に集中~
プライベートでデータ分析を行う時には、有料版のChatGPT4.0を使い、実装したい処理の概要を伝えてコードを生成してもらっています。同時にデバッグ用のコードも生成してもらうことで、コーディング時間を体感ですが従来の1/5程度に短縮することができています。
また、技術調査時には、疑問点を質問し、自分の理解が正しいかを確認するためにChatGPTに壁打ちを行っています。対話することで、自分が知りたい情報を直接得ることができるだけでなく、新たな視点も得られるため、知識の吸収速度が従来よりも圧倒的に早くなっている気がしています。
さらに、ChatGPTのプロンプトを音声で入力する拡張機能も利用しています。これにより、プロンプトを打ち込む手間が省けるため、よりスムーズな会話形式でChatGPTに相談できます。話しながら指示し、回答を待つ間に他の作業を進め、回答を読んで再び口頭で聞くというサイクルで作業することが多いです(GPT4.0だと雑なプロンプトでも回答の品質がそこまで落ちないので、この作業フローが成り立っていると思います)。
生成AI を活用するメリットをどのように感じていますか?
メリットは、新しい分野へ踏み出す勇気をくれることだと思います。
今の時代、何事においても、専門知識だけでなく広範な知識も要求されることがあります。データサイエンスを例に挙げると、データサイエンスの領域の中でさえカバーしきれない分野と技術知識があるため、全ての分野を学ぼうとすると膨大な努力と時間が必要となってきます。同様にどの領域においても、新しい分野や学問を学び始める際、必要な調査や膨大な勉強時間を考えると、新たな学びに躊躇することも多いのかなと思います。ですが、生成AIのおかげで、何でも教えてくれる専門家が身近にいる環境ができ、新しい分野に踏み出すことへの安心感や挑戦する勇気と楽しみを与えてくれているような気がしていて、この点が大きなメリットと感じています。
今後、どのように生成AI を活用していきたいですか?
今現在、LangChainの活用に取り組んでいます。LangChainとは、ChatGPTなどの言語系モデルの機能を拡張するためのフレームワークであり、文書のベクトル化やベクトルに基づく情報検索、また記憶保持などさまざまな機能を提供しています。
お客さまの業務によっては、素のChatGPTでは解決できない課題が多々あります。既に多くの生成AIが世に溢れていますが、顧客課題にそのまま当てはまるものはほとんどなく、そういった課題に対しては、LangChainを用いることで、各課題に特化したソリューションを提供することができます。例えば、文書ファイルとExcel表データの両方をもとにユーザーからの質問に回答するアプリケーションを構築できます。LangChainの活用により、これまで以上に広範な課題を解決できる可能性が広がるため、顧客の課題解決に向けてLangChainを積極的に活用していきたいです。
関連リンク
生成AI|Lumada:日立 (hitachi.co.jp)
ChatGPTで話題の「生成AI」とは? 働き方を変える最新技術:社会イノベーション:日立 (social-innovation.hitachi)
※「ChatGPT」はOpenAI OpCo, LLCの登録商標です。
その他記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。