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 日立製作所と日立市ではデジタル技術を活用して社会課題の解決を図る「共創プロジェクト」を展開しています。より暮らしやすく、魅力あふれるまちへの発展をめざす、このプロジェクトに共感したのが、EXILEのパフォーマーであり、所属事務所のLDH内では社会貢献や地方創生に従事する「Social Innovation Officer」として精力的に活動する橘ケンチさん。まずは、日立市役所を訪問後、自らの目で日立市の魅力に触れる旅に出ました。
 前編では、日本酒業界でも屈指のインフルエンサーとして知られる橘さんが日立市を代表する酒蔵をめぐり、この地で生まれる酒の特色、造り手の熱い想いに触れた模様をご紹介します。

日立市はダイバーシティ&ベンチャーの先駆けだった

画像: 日立市はダイバーシティ&ベンチャーの先駆けだった

海と山に囲まれゆったりと暮らせる場所、日立市

 初めて日立市を訪れた橘ケンチさんが、まちの魅力と課題を探るべく向かったのが日立市役所でした。建築にも造詣の深い橘さんは、日立市出身の世界的建築家・妹島和世さんが設計した庁舎のデザイン性に感動。駅と並ぶまちのランドマークともいえる市役所内にて、日立市の活性化に取り組む3名の職員に、日立市の魅力と課題についてお話を伺いました。

橘さん:3人とも日立市のご出身と伺いましたが、日立市を愛されている皆さんだからこそわかる、まちの魅力を教えていただけますか。

画像: 左から、共創プロジェクト推進担当課長の窪 久司さん、広報戦略課長の瀧深 秀一さん、市長公室参事の寺山一男さん、そして橘ケンチさん

左から、共創プロジェクト推進担当課長の窪 久司さん、広報戦略課長の瀧深 秀一さん、市長公室参事の寺山一男さん、そして橘ケンチさん

窪さん:私は東京の大学を卒業後、日立市役所に就職しました。確かに東京は刺激的なまちではありましたが、地元への想いは消えることはありませんでした。日立市は自然も多く、人もやさしい。気候も穏やかで、東京とは時間の流れがまったく違って感じられます。私の性格的なことが大きいとは思いますが、自分らしくいられるまち。それが日立市の魅力だと考えています。

瀧深さん:私にとっては日立市のすべてが魅力的です。広報戦略課という部署柄、さまざまな事業と通じて市外の人と接する機会も多いのですが、そんな皆さんが日立市の魅力として挙げるのは、やはり海が近いということ。海から街までが近いので、海の良さを実感しながら生活できる。さらに、海と山の距離も近いので、どちらも堪能できるのが日立市の魅力だということを伺います。

寺山さん:私も東京の大学に進学し、卒業後に日立市に戻りました。東京も好きですが、日立市とは100kmぐらいしか離れていませんので、都内へのアクセスも良い一方で、ゆったりとした時間を過ごすことができる日立市が気に入っています。個人的には、そこが一番の魅力ではないかと思いますね。

「日立モデル」と呼ばれるまちをめざして

橘さん:皆さん、それぞれが日立市をしっかり愛していらっしゃるんですね。行政を足場としながら市を盛り上げていく立場として、今後日立市をどのようなまちにしていきたいと考えていますか。

瀧深さん:市民一人ひとりが幸せを感じていただけるまちにしたいと考えます。市報や動画制作に関わる取材を通じて感じることですが、仕事や趣味など、何かに生きがいをもって取り組んでいる方々の瞳はキラキラしていて、笑顔もとても輝いていて幸せを感じているように見えます。そのようなきっかけ、環境を創り出していきたいと思います。

寺山さん:100年以上前の話ですが、日立市は銅山から発展していったバックボーンを持つまちです。全国から多くの人が集まる、当時のダイバーシティに富んだ地域だったと私は思っています。その中から日立製作所が事業を立ち上げた。いわゆるベンチャーですよね。時代は変わってもダイバーシティとベンチャーのDNAが、われわれ日立市民のどこかに根付いていると思うのです。そのDNAを再認識して、全国の自治体が倣っていけるような「日立モデル」をつくり上げていきたいと考えています。

橘さん:僕も、いろんな自治体と地域創生の取り組みをさせていただいているのでぜひ、日立市とも何か一緒に取り組みをさせていただけるとうれしいです。

画像: 市役所来訪の記念に、皆さんと撮影

市役所来訪の記念に、皆さんと撮影

 市役所職員との交流から、日立市の魅力の一端に触れた橘さん。豊かな自然が造り出す、清らかな水を生かした日本酒を求めて、日立市を代表する酒蔵3軒へと向かいました。

古き良き伝統を守り続ける椎名酒造店

画像: 椎名酒造 六代目蔵元の椎名健二郎さんと

椎名酒造 六代目蔵元の椎名健二郎さんと

六代目蔵元が、一人で挑む酒造りへの想い

 明治10(1877)年創業の椎名酒造店。現在、六代目蔵元の椎名健二郎さんが杜氏として、酒造りのすべてを担っている。代表銘柄「富久心」は、敷地内から湧き出る凄烈な水を使用した、昔ながらの味わいを今に伝える日本酒として多くの日本酒好きに愛されています。

画像: 酒蔵のすぐ横には、岩魚が釣れる清流が流れている

酒蔵のすぐ横には、岩魚が釣れる清流が流れている

画像: 仕込水をチェイサーに試飲する橘さん

仕込水をチェイサーに試飲する橘さん

橘さん:仕込水を飲ませていただきましたが、軟らかい水ですね。うっすらと甘みすら感じるような味わいでした。

椎名さん:そうですね。もちろん糖度があるわけではないんですが、そう感じられます。お酒の後味は、やはり水で決まりますので、うちのどのお酒を飲んでいただいても、この水から造られたことを感じていただけるのではないかと思います。

橘さん:健二郎さんは、家業を継ぐ前は他の仕事をされていたそうですね?

椎名さん:はい。日本大学生物資源科学部で微生物について学びましたが、卒業後はスポーツ用品店に勤務していました。入社から5年が経った頃、父が病気になり、家業を継ぐことを決意して戻って来ました。うちの蔵は平成2年から杜氏さんを雇わず、祖父と父が自分たちの力で酒造りを始めていたんですね。その技術を学んだわけですが、父と一緒に酒造りが行えたのは2年だけ。その後は、試行錯誤しながらも、できるだけ昔と変わらぬ、受け継いだ味を残したいという想いで酒造りを行っています。

画像: 先々代から使われ続けている醸造タンク

先々代から使われ続けている醸造タンク

橘さん:今日、4種類のお酒を試飲させていただきましたが、もちろんそれぞれの特徴はあるんですけれど、どのお酒も変化球ではなく、王道な日本酒の良さが表現されているように感じました。昔からの味を守られた結果、この味わいに行き着いたのだろうなという印象を受けました。

画像: 橘さんが試飲した日本酒4種。左から「富久心 純米吟醸 山田錦(蔵元限定)」、「富久心 純米吟醸 生酒」、 「鳳凰」、「鳳凰 袋吊り」

橘さんが試飲した日本酒4種。左から「富久心 純米吟醸 山田錦(蔵元限定)」、「富久心 純米吟醸 生酒」、
「鳳凰」、「鳳凰 袋吊り」

椎名さん:そうですね。特に、「富久心 鳳凰(純米大吟醸)」はお米の収穫量の関係で数年に一度しか造れないお酒なので気持ちが入りますね。長く使ってきた長野県産の酒米「美山錦」にこだわり、それをアピールさせていただいてもいるので、生産者さんや先代の手前、恥ずかしいものは造れないですね。

「地元に愛される酒造り」の矜持を胸に

橘さん:椎名酒造店さんのお酒は、主に日立市で販売されていて、他のまちでは売られていないそうですね。

椎名さん:はい。蔵の規模から供給量が安定しないという理由が大きいのですが、先代の信念だった「地元に愛される酒造り」を受け継いでいるので。ただ、最近はうちのホームページを見た方が蔵にも足を運んでいただくケースがすごく増えているんです。コロナ禍で少し事業が停滞していた時には、とても助けられました。そういうお客さまに「また来たい」と思っていただくには、酒造りに対する気持ちであるとか、本気度が試される時代なのかなと感じています。

画像: 「何度でも足を運びたくなるような酒蔵にしていきたい」と椎名さん

「何度でも足を運びたくなるような酒蔵にしていきたい」と椎名さん

橘さん:地元日立市のために何か取り組んでいこうと考えていることはありますか?

椎名さん:今、市役所が日立市ならではの魅力を取り上げて盛り上げてくれている中で、酒蔵にも着目していただいている実感があります。こちらもできることは協力させていただいて、日立市の魅力を発信できたらと思っています。

画像1: 豊かな自然が育んだ、開拓精神あふれるまち。
橘ケンチさんとめぐる“日立市”の魅力、新発見の旅〜酒蔵編〜

椎名酒造店

住所:茨城県日立市十王町高原411
電話:0294-39-2041
HP:https://fukugokoro.com/

伝統と革新、2つの美学を追求する森島酒造

画像: 森島酒造 六代目蔵元の森嶋正一郎さんと

森島酒造 六代目蔵元の森嶋正一郎さんと

「一石投じる一杯を」に込めた想いとは

 明治2(1869)年、日立の海に面する川尻の地にて創業した森島酒造。伝統ある銘酒「富士大観」に加え、六代目のオーナー杜氏・森嶋正一郎さんが生み出した「森嶋」は、全国的な注目と高い評価を集めています。

橘さん:工場を見学させていただきましたが、石造りの部分が多いですね。

森嶋さん:うちの蔵は石がシンボルなんです。「森嶋25+」のラベルには、壁の石を印刷したものがプリントされています。実は、もともとあった蔵は第二次世界大戦の空襲で全焼してしまい、他界した祖父が昭和20年に建て直したものなんです。今度は焼け落ちないようにという想いが強かったのではないかと思います。

画像: 蔵の内部には、栃木県の大谷石を使用

蔵の内部には、栃木県の大谷石を使用

橘さん:僕も、あの石のラベルのお酒で森島酒造さんのことを知りました。「森嶋」が誕生した経緯について教えていただけますか?

森嶋さん:2011年の東日本大震災の津波で、蔵が大規模半壊の診断を受けたことで、廃業を考えなければならないほどの事態になりまして。父が継続の決断をしたのですが、それによって僕の背中のスイッチが入ったんです。伝統ある「富士大観」に匹敵するブランドを立ち上げよう、自分が造りたいお酒で挑戦してみたいと。その想いを込めて造ったのが「森嶋」シリーズです。自分が好きな、フレッシュで軽快な味をめざしたお酒です。

画像: 左から「富士大観 純米大吟醸」「森嶋 ひたち錦 辛口 純米吟醸」「森嶋 雄町 純米大吟醸」

左から「富士大観 純米大吟醸」「森嶋 ひたち錦 辛口 純米吟醸」「森嶋 雄町 純米大吟醸」

橘さん:そういう背景があったのですね。確かに「富士大観」に比べて「森嶋」シリーズは味にモダンさを感じますね。決して「富士大観」が昔ながらの味というわけではなく、とてもクオリティの高さを感じました。それはブランドコンセプトの違いからだったんですね。ところで、今着ている半被に書かれている「一石投じる一杯を」の意味はなんですか?

画像: 半被に記された「森嶋」のキャッチフレーズ

半被に記された「森嶋」のキャッチフレーズ

森嶋さん:「森嶋」シリーズのキャッチコピーなのですが、僕自身の日本酒造りの精神を表現した言葉になります。どうしたら自分が思い描く、おいしいお酒を造れるかと自問自答しているといいますか。また、スタッフと一緒に造り上げた作品であるお酒を、今度はお客さまに一石投じている、という想いを込めています。

橘さん:森嶋さんにとって「石」は、すごく大きな意味を持つものなのですね。

豊かな自然環境、昔ながらの人間関係が日立市の魅力

橘さん:森嶋さんが思う日立市の魅力を教えていただけますか?

森嶋さん:海があるおかげで夏は涼しく、冬は暖かい。人が住むには、すごく良い環境なんです。僕は「北関東のウォーターフロント」と呼んでいるんですよ(笑)。海の幸に恵まれていますし、近所の漁師さんが獲れたての魚をお裾分けしてくれるような、昔ながらの人間関係も残されています。それが魅力だと思っていますし、そういう環境で育ってきたので、新鮮な魚に合うお酒が、自分が造りたいお酒のベースになっていますね。

画像: 森島酒造は日立市で最も海に近い酒蔵

森島酒造は日立市で最も海に近い酒蔵

橘さん:おすすめのスポット、お気に入りのスポットはありますか?

森嶋さん:国民宿舎「鵜の岬」はオーシャンビューで絶景ですよ。あと、桜がすごいんです。日立と言えば「日立さくらまつり」。日立駅から北に向かう大通りが桜のトンネルになるのですが、あれは絶景だと思います。

画像2: 豊かな自然が育んだ、開拓精神あふれるまち。
橘ケンチさんとめぐる“日立市”の魅力、新発見の旅〜酒蔵編〜

森島酒造株式会社

住所:茨城県日立市川尻町1-17-7
電話:0294-43-5334
HP:https://www.morishima-sake.jp/

江戸時代からの伝統を後世に託す嶋崎酒造

画像: 嶋崎酒造 社長の嶋崎順一さんと

嶋崎酒造 社長の嶋崎順一さんと

 江戸時代中期の享保元年(1716)年創業という長い歴史と伝統を今に残す嶋崎酒造。太平洋を望み、近隣には鮎川が流れる豊かな自然環境の中で育まれてきた銘酒「玉の雫」と「恵泉」。
 代表取締役の嶋崎順一さんに、伝統あるお酒を守り続ける意義をお伺いしました。

橘さん:こちらは、すごく長い歴史のある酒蔵さんだとお聞きしたのですが?

嶋崎さん:創業は1716年、享保元年と昔からいい伝えられておりますので、300有余年になります。日立市では、歴史だけは一番古い蔵元となっています。私自身は大学を卒業後、働きながら、日本酒の勉強をしていたのですが、先代の父が病気になってしまったことで1年ほどで退職して家業を継ぎ、今に至ります。

画像: 長い歴史を持つ嶋崎酒造を守り続ける、嶋崎順一さん

長い歴史を持つ嶋崎酒造を守り続ける、嶋崎順一さん

橘さん:提供されているお酒の特徴を教えていただけますか?

嶋崎さん:「玉の雫」が主力銘柄となります。純米吟醸酒、純米酒、本醸造の3タイプのお酒があり、純米吟醸酒はやや辛口ですが、飲みやすいと特に女性のリピーターが多くいらっしゃる商品です。

画像: 左から「玉の雫 純米大吟醸」「玉の雫 純米酒」「玉の雫 本醸造」

左から「玉の雫 純米大吟醸」「玉の雫 純米酒」「玉の雫 本醸造」

橘さん:現在は、原酒の製造を協力会社に依頼していると伺いましたが、それは昔から続く酒蔵、お酒の味を後世に残していくための選択だったのでしょうか?

嶋崎さん:そうですね。市場の状況も相まって、平成10年頃から自社製造はお休みしています。他社さんに原酒の製造をお願いし、それを独自にブレンドして瓶詰めしたものを出荷している状況です。そういう一時的な手段をとってでも弊社のお酒を後世に残していきたいという想いから選択しました。東京で勤めている息子が、いずれ家業を継ぐという話もしておりますので、なんとか次の世代に繋げていきたいと思っております。

橘さん:古くから地元の方々に愛されている「玉の雫」を、次の代に引き継ぐための選択だったのですね。嶋崎社長にとって酒造りを続けていくモチベーションとは?

嶋崎さん:地域に根ざした酒造りを行ってまいりましたので、やはり当社のお酒を飲んで「おいしかった」と言っていただいたり、わざわざ当社まで足を運んでいただいた時には、続けてきて良かったと込み上げてくるものがありますね。ですから、この嶋崎酒造を絶やすことなく後世に託すことが私の使命であり、宿命だと感じております。

画像3: 豊かな自然が育んだ、開拓精神あふれるまち。
橘ケンチさんとめぐる“日立市”の魅力、新発見の旅〜酒蔵編〜

嶋崎酒造株式会社

住所:茨城県日立市鮎川町4-2-8
電話:0294-33-0025

3つの酒蔵をめぐる旅を経て

 「お酒の味も含め、それぞれ異なる個性と特徴を持つ、3軒の酒蔵にお邪魔しましたが、皆さん真摯に酒造りに向き合う姿が印象的でした。東京では飲めないお酒に出会えたのもうれしかったですね。そして、日立市の魅力を語る時の笑顔から、皆さんがこのまちを愛していることがストレートに伝わってきました」と語る橘さん。
 後編では、今回紹介した酒蔵のお酒を提供している飲食店に橘さんが訪れ、日立市のもう1つの魅力である地元の食材を使った料理とのマリアージュを体験。2つの魅力の融合から生まれる、日立市の新たな魅力を発された様子をお届けします。

後編につづく

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