日立市の魅力を再発見する旅として3軒の酒蔵を訪問した前編に続き、後編では橘さんが地元の食材と調理にこだわり、地酒にマッチした料理を提供している3軒の飲食店を訪れました。日立市だからこそ食べられる新鮮な魚、食通の橘さんを唸らせた創作料理など、「食」から日立市の魅力に迫ります。
前編の記事はこちら▷▷「豊かな自然が育んだ、開拓精神あふれるまち。橘ケンチさんとめぐる“日立市”の魅力、新発見の旅〜酒蔵編〜」
最高の眺望、最良のおもてなしを提供する「茨城県立国民宿舎 鵜の岬」
絶景と地場の食材、地酒を堪能できる宿泊施設
目の前に広がる太平洋と白砂青松のコントラストが彩る絶景の地に建つ「鵜の岬」。宿泊のみならず、展望温泉風呂やレストランでの食事、宴会、海水浴にと、さまざまなシーンで利用されている施設です。こちらで提供される自慢の料理とお酒のペアリングを橘さんが体験しました。
橘さん:「鵜の岬」さんは素晴らしい場所に建っていますね。どのようなお客さまが利用されているのですか?
赤津さん:約半数が茨城県内から、あとは関東エリアのお客さまが中心となりますが、地元日立市からもお泊まりに来られる方がたくさんいらっしゃいますし、レストランや宴会などでもご利用いただいています。
橘さん:最高のロケーションですが、周囲の環境を含めて施設の魅力とは?
赤津さん:1つには、水平線からの日の出を温泉に入りながらご覧いただけることでしょうか。また、この辺りは全国で唯一の海鵜の捕獲場になっておりまして、ここから各地に鵜飼用の海鵜が送られているんです。そんな珍しい鵜獲場を見学できるのも、ここだけ。そして、やはり海水浴場が目の前にあるということかと思います。
橘さん:そうなんですね。市役所を訪問した際に、日立市には6つの海水浴場があると聞いたのですが、その1つがこちらなんですね。おっ、この魚はなんだろう? 早速ですが、お料理とお酒をいただきたいのですが、今日の料理とお酒をご紹介いただけますか?
根本さん:地元、久慈浜産のカサゴのお造りと、常陸牛のしゃぶしゃぶをご用意しました。お飲み物は「地酒の飲み比べセット」として、森島酒造の「富士大観 純米吟醸」、椎名酒造の「富久心 純米吟醸」、菊乃香酒造の「菊乃香 純米吟醸」でございます。
橘さん:カサゴの刺身に合わせるなら、どのお酒がおすすめですか?
根本さん:「菊乃香」は飲み口がスッキリしていますので、淡白な味のお魚にも合うと思いますが。いかがでしょうか?
橘さん:あっ、ほど良い辛さがあっておいしいですね。ところで、お酒と料理の組み合わせでこだわられていること、意識されているところを教えていただけますか?
根本さん:こちらは県の施設ということもありまして、地場産の食材にこだわっています。地元の食材と地元のお酒の相性が良いと思いますので、食事とお酒を通じて日立市を楽しんでいただければと考えています。
橘さん:料理もお酒も日立市の魅力が詰まっているということですね。
お客さまにとって第2の故郷でありたい
橘さん:赤津さんが思う、日立市の魅力を教えていただけますか?
赤津さん:たくさんありすぎて困るのですが(笑)。海と山、自然環境に恵まれているところが特に魅力だと思っています。あと桜もとっても綺麗です。
橘さん:他の方からも桜が有名だと聞いたのですが、赤津さんのお気に入りスポットとは?
赤津さん:かみね公園ですかね。小高い丘に桜が咲いているので、海と桜を同時に楽しんでいただけるスポットです。日立市役所に「さくら課」という専門の部署があるほど、市全体で桜に力を入れていますね。
橘さん:日立市には、まだまだ素敵な場所がたくさんあるんですね。「鵜の岬」さんも日立市を代表する施設の一つだと思うのですが、お客さまにとって、どういう場所でありたいと考えていますか?
赤津さん:私どもの心構えとしては、お客さまの第2の故郷でありたいという想いがあります。おもてなしの心でお客さまをお迎えし、寛いでいただき、また来たいなと思っていただけるような場所にしたいと考えています。
橘さん:素晴らしいですね。おいしい料理とお酒、スタッフの方のおもてなし。そして目の前に広がる海。また来たくなりますね。
茨城県立国民宿舎 鵜の岬
住所:茨城県日立市十王町伊師640
電話:0294-39-2202
HP: https://www.unomisaki.com/
日立産の旬の食材と美酒にこだわる和食店「和菜 弐鷹」
料理と地酒を通して、日立市の魅力を発信
日立駅前平和通りに店を構える「和菜 弐鷹」は、県外の料亭で修行した店主の只野貴幸さんと奥様が営む、ほっこりとした雰囲気の和食店。こじんまりとしたお店ながら提供される料理は、通を唸らせる本格派。地域の新鮮な食材にこだわり、料理と地酒を通して日立市の魅力を発信している「和菜 弐鷹」で、橘さんが旬の野菜の旨味と日本酒に酔いしれました。
橘さん:「弐鷹」さんは、いつ開業されたのですか?
只野さん:2014年4月に開業しまして、10年目を迎えました。私は地元が日立市なのですが、県外の料亭で修行しまして、いつかは日立市で開業したいという想いが実現しました。
橘さん:お客さまは地元の方が中心ですか?
只野さん:いえ、そんなこともないんです。ホテルの方から紹介を受けた県外のお客さまもいらっしゃいますし、年に数回来ていただける県外のリピーターの方もいらっしゃいます。
橘さん:県外からのリピーターがいるということは、こちらの料理に魅了されたのでしょうね。只野さんの料理に対するこだわりを教えていただけますか?
只野さん:まずは素材ですね。日立市は海と山に恵まれていますので、新鮮なお魚や野菜が手に入りますし、お肉もブランド牛の常陸牛があります。その新鮮な素材を生かすため、無理に手を加えず、素材の味を感じていただける状態でお出しするのが、自分のこだわりですね。
橘さん:本当に日立市は食材が豊富ですよね。ないものがないんじゃないかと思うぐらい。
只野さん:たしかに、ないものが見当たらないぐらい何でもありますね。今日お出しする料理の中では、唯一レンコンだけが日立市産ではなく土浦市産になりますが。
橘さん:やはり、料理に合わせるお酒にもこだわられているんですか?
只野さん:はい。開業する際に酒販店とお話をして、いろいろ試飲させていただいたのですが、その中で一番和食に合わせやすいと判断したのが森島酒造さんのお酒だったんです。飲食店用に卸している商品を含め、森島酒造さんのお酒を全種類取り揃えているのは、唯一うちだけなんです。なので、料理との組み合わせを考えてお酒を提供させていただいています。
橘さん:この真蛸に合わせるなら、どのお酒がいいですか?
只野さん:「森嶋 雄町 純米大吟醸」がよろしいかと思います。
橘さん:ぜひ、お願いします。おっ、真蛸の弾力がすごいですね。おいしいなぁ。「森嶋」は味は強いですけれど、料理の邪魔をしないですね。
只野さん:そうですね。どの料理にも合わせやすいお酒だと思います。ちなみに、胡麻酢には「雄町 純米大吟醸」の酒粕を練り込ませていただいています。
橘さん:それは贅沢な使い方ですね。東京では食べられないだろうなぁ。
日立市を盛り上げるため、飲食店の有志とお祭りを企画
橘さん:只野さんからは日立市への愛がひしひしと伝わってくるのですが、どういうところに魅力を感じているのですか?
只野さん:最近では消滅都市なんて言われ方もしていますけれども、全然そんなことはないんです。日立製作所をはじめとして、いろんな企業が会社を構えていますし、自治体もさまざまな取り組みに挑戦しています。ただ、日立市民の人柄と言いますか、あまり前へ出て行こうとしない人が多いんですね。もっと積極的に日立市の良さを発信していく必要は感じています。なので、日立市を盛り上げようと地元のメンバーを募って、昨年からお祭りを主導させていただいているんです。今年の9月に2回目を実施するんですが、徐々に規模を拡大して日立を代表するお祭りにしたいと、みんなで意気込んでいるんです。
橘さん:それは楽しみですね。どんなお祭りなんですか?
只野さん:「ひたち盆FIRE」という盆踊りがメインのお祭りなんです。盆踊り専門のDJをお呼びしたり、地元のダンスグループに踊ってもらったり。去年は5000人の来場者を予想していたのですが、3万人弱の方が集まってくださったんです。飲食店を活気づけようという想いもあったので市内のお店に声をかけて協力してもらっているんですよ。
橘さん:お店だけではなく、そういう活動もやられているのですね。ダンサーが必要だったら声をかけてください(笑)。
只野さん:本当ですか!? 橘さんにゲストで来ていただいたら大変なことになりますよ(笑)。
和菜 弐鷹
住所:茨城県日立市平和町1-18-12
電話:0294-33-9477
営業時間:17〜22時(月曜定休)
Facebook:https://www.facebook.com/p/和菜-弐鷹-100068433923479/
日立市民の活気があふれる老舗の本格和食料理店「網元別館」
創業者の想いを受け継ぎ、家族でお店を盛り上げる
昭和29年創業の日立市を代表する本格割烹。インパクトのある純和風建築の建物が荘厳な印象を与えるが、一歩店に足を踏み込めば、サービス精神に満ちたエネルギッシュな女将をはじめとするスタッフのフレンドリーな接客が印象的。料理はもちろん日立産の新鮮な素材を使った本格和食。お酒のすすめ上手な女将と若女将の明るい接客に橘さんのテンションもアップ。おおいに盛り上がるひと時となりました。
橘さん:こちらのお店は立派な建物ですね。いつ創業されたのですか?
女将:昭和49年に創業しました。昭和29年に父が飲食店を始めまして、そちらは今、ホテルになっているのですが、このお店は私が19歳から経営に携わっています。
橘さん:若女将は娘さんですか? いずれお店を継がれるのですよね?
若女将:はい。今、母からすべてを教わっているところですが、まだまだパワーが有り余っているので、当分先の話になると思います(笑)。
橘さん:地元のお客さまが中心ですか?
女将:そうですね。ご家族でご利用いただいたり、宴会に使っていただくことも多いんです。冬場はアンコウ鍋をお出しするのですが、東京から70人の団体で来られるお客さまもいらっしゃいます。東京の方はスケールが大きいですね(笑)。
橘さん:それはどうでしょう(笑)。こちらの料理のこだわりを教えていただけますか?
女将:新鮮な採れたてのお魚を、あまり手を加えずにそのままお出しするようにしています。そのためには鮮度が大切ですから、私が市場に仕入れに出かけているんです。それと季節のものをお出しすること。それが私のこだわりです。
橘さん:日本酒の品揃えに関してはいかがですか?
女将:うちのお店で最初に出したのが、私の親戚でもある椎名酒造さんのお酒なんです。今は、森島酒造さん、嶋崎酒造さんのお酒も取り扱い、日立市の地酒を提供しています。
橘さん:お刺身からいただきたいんですが、どのお酒に合わせるのが良いですか?
女将:はい。好きすぎて酒蔵を200ヶ所ぐらい回りました(笑)。ああ、なるほど。「玉の雫」はお刺身に合いますね。
市民のみならず県外の人からも愛されるお店をめざす
橘さん:皆さんにお聞きしているのですが、お二人が考える日立市の魅力とは?
女将:海があって山があって素晴らしいところです。東日本大震災の影響は多少ありましたけれど、台風も来ないので災害が少ないんです。とても住みやすいまちだと思います。移住者を増やそうと市役所も頑張ってくれていますが、本当に良いところなので、ぜひ皆さんに来ていただきたいですね。
橘さん:若女将はいかがですか?
若女将:私も子どもがおりますが、子育てに手厚い補助をしていただけるんですね。自然にも恵まれているので、子育て世代は住みやすいまちだと思います。
橘さん:日立の方って、皆さんまちを愛されていますよね。どなたに話を聞いても、次々と魅力を語っていただけるので。僕は地方に行くことも多いんですけど、「うちのまちは何もないよ」と言われることが多いんです。謙遜されている部分もあるとは思うんですけど、日立の人の反応とは全然違いますよ。
若女将:みんな本当にそう思っているんですよ。何でもあるので満足していると言いますか。だからPRが下手なのかもしれないですね。足りないものがないので、ストイックには何かを求めていかないところがあるのかもしれません。
橘さん:なるほど。若女将の言葉は説得力がありますね。まだ女将がお店を切り盛りされていくとは思いますが、若女将は将来、どういったお店にしたいと考えていますか?
若女将:この建物には祖父と母の想いが詰まっているんですね。最近、こういう和風建築の建物が少なくなっているとも思いますので、この建物を生かして大切に守っていきたいと考えています。そして、日立市の人たちにも愛されて、他県の方にも来ていただけるように、おいしい料理とおもてなしに手を抜くことなくやっていきたいと思います。
橘さん:女将のエネルギーを受け継いで、ぜひ頑張ってください。
網元別館
住所:茨城県日立市鹿島町1-20-12
営業時間:11時~14時30分・17時~21時(月~金)
11時~21時(土・日・祝)
連絡先:0294-24-6525
市民に愛されるまち、日立市が「ずっと」愛されるまちであるために
2日間にわたって日立市の酒蔵と飲食店をめぐった橘さん。初めて日立市を訪れた橘さんは、市民との交流でどんな印象を受けたのでしょうか。
「正直、日立市を訪れるまでは、日立製作所のイメージが強くて、企業城下町なんだろうなと思っていたんです。ところが実際に来てみたら、それ以上に、海と山、自然に恵まれた魅力あるまちなんだなという認識を新たにしました。日立市の自然、気候風土、市民の人柄が相まって、おいしい料理が生まれ、素晴らしい日本酒が造られているのだなと。そうしたさまざまな魅力がつながりあう日立市は、まちとしてとても高いポテンシャルを持っていると感じましたし、何よりも日立市民の人柄が良いですよね。この2日間で僕はすっかり日立市のファンになりました。ぜひ、日立市と日立製作所が取り組んでいる共創プロジェクトを応援させていただき、僕なりの方法で日立市の魅力を全国に発信していきたい。そんな想いにさせてくれた旅でした」
▼今回の旅をもとにしたAIが誕生しました!▼
デジタルによるイノベーション創出
“地域の魅力を発見・つながる” 縁を育む対話型AI【EX05-19】
今回、橘ケンチさんが日立市の酒蔵や地酒を提供する飲食店を訪れ、現地の方々との交流を通じて培った知見は、「日立市共創プロジェクト」の1つのアイデアとして対話型AIを活用したデモの開発に生かされています。この概要については、9月4日(水)・5日(木)に東京国際フォーラムで開催される日立グループ最大規模のイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2024 JAPAN」にて、 「“地域の魅力を発見・つながる” 縁を育む対話型AI」として 紹介されます。なお、当日は「おすすめのトークセッション」に橘ケンチさんが登壇。対話型AIのデモ機を紹介しながら、日本酒を介して地方創生に取り組む意義や想いを語っていただきます。