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~分散型データセンターの実現による強靭な IT インフラの構築を目指す~

 日立製作所とNTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、超高速かつ超低消費電力を実現する IOWN 構想*1 の主要技術であるオールフォトニクス・ネットワーク(以下 APN)を用いた分散型データセンターの実現に向けた技術検証の一つとして、日立ヴァンタラの Hitachi Virtual Storage Platform One Block*2 (以下、VSP One Block)とIOWN APN*3 を用いた共同実証を実施した。
 VSP One Block は、ストレージ仮想化技術を用いて各拠点に設置された複数のストレージをあたかも 1 つのストレージのように管理・運用できるため、災害発生時の事業継続に強みを発揮するストレージだ。また、IOWN APN は、NTT グループがこれまで培ってきた経験と技術力で通信サービスを進化させた低消費電力・大容量高品質・低遅延を特徴とするネットワークである。
 今回、この2つの強みを組み合わせ、長距離間のデータ同期における往復応答時間を日立が推奨するネットワークの応答時間以内に収めることに成功し、また災害発生時にもシームレスにシステム復旧が可能であることを確認した。
*1 IOWN 構想:Innovative Optical Wireless Network の略です。NTT が 2030 年ごろの実用化に向けて推進する次世代コミュニケーション基盤です。革新的な光と無線の技術により、これまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報をもとに全体の最適化を図り、多様性を需要できる豊かな社会をつくるために立ち上げた構想です。「IOWN®」は、日本電信電話株式会社の商標又は登録商標です。
*2 Hitachi Virtual Storage Platform One Block:日立ヴァンタラが提供するデータストレージです。革新的なデータ圧縮・保護技術で、増大するデータの管理の効率化とシステムの安定稼働を実現します。製品ライフサイクル全体で環境負荷も低減します。
*3 IOWN APN:IOWN All Photonics Network の略です。共同実証は NTT の APN 検証設備を使用しました。

背景

 激甚災害の増加やそれに伴うレジリエンス強化のニーズを受け、金融やインフラ事業者などミッションクリ ティカルな事業を支える企業において、ディザスタリカバリ(DR)構成のシステム導入が進んでいる。しかし、システム構築や維持にかかるコスト増加や、災害時における業務継続のためのオペレーション、復旧までの作業時間などさまざまな課題があり、上記のような企業にとって大きな負担になっている。
 さらに現在、生成 AI の普及によりデータ処理量が爆発的に増加し、データセンターの需要が拡大する一方で、電力使用量の増大が地球環境への大きな負荷になっている。そこで、全国各地のグリーンエネルギーを有効活用できる分散型データセンターの実現に期待が寄せられている。 今回の技術検証もその一環であり、離れたデータセンター間をリアルタイムに連携させることで、企業がひとつのデータセンターのように利用することが可能になる。長距離間のデータセンターをつなぐことができれば、土地や再生可能エネルギーの確保がしやすい地域にデータセンターを分散配置し、都市部でのデータセンターの一極集中を回避することができるようになる。
 多様性を受容できる豊かな社会を創る IOWN の構想を実現する上でも、光や生成 AI など革新的な
技術の活用は必要不可欠であり、そうした活動を持続可能な形で支えるデータセンターの実現は非常に重要なテーマとなっている。

実証実験について

以下の通り2つの検証・評価を行った。

(1)長距離間データ同期の往復応答時間を検証

 VSP One Block を IOWN APN で接続し、仮想的に 600km(東京・大阪間)離れた環境を作り、日立
のストレージ仮想化技術 GAD*4 におけるデータ同期に要する時間を測定した。回線の応答遅延を改善した結果、IOWN APN の持つ低遅延、低ジッタ*5 により、日立が推奨するネットワークの往復応答時間(20msec 以内)を大きく下回る*6 結果となり、600km の長距離でもデータ常時同期での環境構築ができるという実用性を確認した。なお、600km 間でのデータの常時同期を実現したのは世界初*7 の実証事例となる。
*4 GAD(global-active device): 2 台のストレージ間でデータを常時同期し、データの可用性を向上する機能です。
*5 低ジッタ:通信におけるネットワーク遅延時間の変動・揺らぎを示す用語です。遅延時間の変動が小さいことを低ジッタと呼びます。
*6 書込み時:7.5 msec、読込み時:0.1 msec 以下を確認しました。
*7 2024 年 11 月現在、日立製作所と NTT Com の調べに依ります。

(2)災害発生時のシステム復旧時間を検証

 同一データセンター内で利用されるクラスタ技術を用いてデータセンター間で冗長化を行い、データセンターのメインサイトで疑似障害を発生させ、サブサイトにおいて業務継続が可能かを検証した。 その結果、メインサイトがシステムダウンした後、データ損失なく、自動的にサブサイトでのシステム稼働が確認でき、災害時にもシームレスな業務の継続ができることを確認した。
 検証結果を適用することにより、メインサイトからサブサイトへの切り替えや災害発生時のデータ損失に対するリカバリー作業などシステム復旧作業にかかっていた SE の稼働が不要になることで、運用者の負担を軽減することができる。さらに、従来の非同期に複数のデータを保持しバックアップを取得していた場合と比較し、ストレージ容量が削減できることで、IT インフラの維持コストや消費電力の低減が期待できる。

画像: (2)災害発生時のシステム復旧時間を検証

各社の役割

3社共創し、以下役割にて共同実験を推進した。
日立/日立ヴァンタラ:IOWN APN 検証設備への VSP One Block の仮想ストレージ接続・機能評価
NTT Com:IOWN APN 検証設備を用いた APN の機能・性能評価

今後の展開

 今後、日立ヴァンタラのストレージと IOWN APN の組み合わせにより、ミッションクリティカルな業務を担う金融機関、社会インフラ事業者*8、クラウド事業者などに向け、東京・大阪間のような長距離間でのデータの常時同期を実現する、次世代 IT インフラシステムの提供をめざしていく。
 また、日立と NTT Com は、「分散型データセンター」の実現に寄与するソリューション提供を推進し、環境にやさしくレジリエントな社会の実現に向けて、両社にて活動を推進していく。
*8 通信、電力、交通機関等を示します。

関連 URL

日立ストレージソリューション

IOWN | NTT グループの取組み


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