生体認証などを活用したデジタルチケットの実証を香川県小豆島で実施
JTB と 日立製作所 は、観光DX推進に向けた新たなサービス提供において共創を開始することで合意した。両社は、本共創により旅行者の利便性の向上や周遊促進、観光関連事業者の生産性向上・収益向上をめざし、持続可能な観光地域づくりに貢献する。
第一弾の取り組みとして、香川県小豆島において8月1日より生体認証などを活用したデジタルチケットによる新たな周遊企画券サービス「tebu-Ride PASS」の実証実験に取り組む。
特設サイト:https://www.jtb.co.jp/kokunai/teburide/syodoshima/
※ 画像は特設サイトとアプリ画面のイメージ
共創の背景
JTBは、エリア開発や観光DX を推進する中で、観光施設や2次交通*1 のデジタル化を推進する必要性を認識し、この課題に対応するため、先進的な技術やノウハウを持つパートナーとの共創が不可欠であると考えていた。
一方、日立は、自治体や観光事業者・交通事業者と連携し、デジタル技術を活用した観光DXの取り組みを推進している。特に、安心・安全に本人確認を実現する生体認証技術*2 や、移動履歴に伴う料金決済技術など、デジタルチケットを支える要素技術やノウハウを有している。
*1: 拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通のこと
*2: 日立の公開型生体認証基盤(PBI: Public Biometric Infrastructure)に対応した「生体認証統合基盤サービス」を活用することでセキュアな本人確認を実現。
両社の役割
本共創において、JTBと日立はそれぞれの強みを生かし、相互に補完しながら新たな観光サービスの創出に取り組む。
JTBは、長年培ってきた観光業界での豊富な経験と知見をもとに、本共創において中核的な役割を担う。具体的には、地域の特性や旅行者のニーズを深く理解した上で、魅力的な周遊企画券や観光プランの企画・開発を行い、地方自治体や地域の観光関連事業者との強固なネットワークを活用し、tebu-Ride PASS の導入や運用をスムーズに進める。また、旅行者の動向や嗜好を分析し、効果的なプロモーション戦略を立案・実行する。デジタルチケットの利用方法や観光情報の提供など、旅行者向けのサポートを行い、技術と観光の融合による新たな価値創造をめざす。
日立は、本共創において、デジタルチケットシステムの設計・開発・実装を担当する。具体的には、生体認証技術を活用した手ぶらの買い物や、ビーコン(無線装置)を活用して利用者の移動履歴をリアルタイムで取得・処理し、その移動経路に応じた料金を自動精算する仕組みを構築する。また、セキュリティ対策やシステムの安定運用に加えて、将来的な利用拡大や展開地域の拡大を見据え、柔軟に拡張可能なシステム設計を行うことで、持続的なサービス提供を技術面で支える。
tebu-Ride PASS とは
tebu-Ride PASS とは、デジタルチケットによる新たな周遊企画券サービスである。従来の周遊企画券で課題であったユーザビリティの向上と事業者の運用効率化をめざす。デジタルチケットシステムの活用により、スマートフォン一つで複数の交通機関や観光施設のシームレスな利用を実現させる。具体的には、ビーコン技術を活用したハンズフリーチケッティングによって、施設のゲートでのウォークスルーや顔認証*3 による利用を可能にする。また、旅行者の移動がよりスムーズになるだけでなく、事後決済方式を採用することで、旅行中の決済手続きを簡素化する。さらに、利用額に応じた割引制度も提供することでツーリズム体験の付加価値を向上させる。
これらの取り組みにより、移動手段の選択肢が拡大し、より柔軟な旅程計画が可能になると同時に、チケット購入や入場手続きの煩わしさを解消することで、旅行者がより満足できる環境を提供する。
両社はこのサービスを通じて、旅行者に対するより自由で快適な旅行体験を提供し、地域に対する周遊観光の促進や観光施設への来訪者増加による地域観光の活性化、さらに事業者に対してチケット管理効率化やデータ活用による業務改善などを支援していく。
*3: 日立の生体認証統合基盤サービスを活用し、公開型生体認証基盤PBI とパナソニック コネクト株式会社の顔認証技術を融合することで、安心・安全な顔認証を提供。
香川県小豆島における実証実験について
- 実証期間: 2025年 8月1日(金) ~ 10月31日(金) 92日間
- 場 所: 香川県 小豆島
- 目 的: 小豆島をシームレスにつなぐデジタルチケッティングシステムのサービス検証

実証実験のイメージ図
今後の展望
両社は、観光分野におけるエリア特有の課題解決を図り、観光客・地域住民・インバウンドなど多様化するユーザーニーズを適切に捉え、地域の消費拡大や観光産業の収益・生産性向上に貢献していく。
本システムを基盤とし、自治体や地域の事業者がデータを活用し、観光客の行動パターンや需要動向を詳細に分析することで、よりパーソナライズされたサービスの提供や効果的な観光戦略の立案など、さらなる観光DXの実現をめざす。