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MIを用いた再生材の品質解析・配合比率の提案機能を開発し、リサイクラーと検証
 
株式会社日立製作所(以下、日立製作所)と日立製作所のコネクティブインダストリーズセクターに所属する株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)(以下、日立製作所および日立ハイテクを総称して「日立」)、トーエイ株式会社(以下、トーエイ)は、再生材の活用促進を支援する「再生材マーケットプレイス」の主要機能であるAI技術を活用したマテリアルズ・インフォマティクス(以下、MI)による、再生プラスチックの配合支援の実証(以下、本実証)を11月から開始する。

背景

気候変動、生物多様性の損失、海洋プラスチックごみによる汚染といった社会課題が世界的に深刻化しており、対応の一つとして、サーキュラーエコノミーが注目されている。また、日本国内においても、2022年に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律*1」により、プラスチックのライフサイクル全体における資源循環が促進され、再生材の活用ニーズは上昇している。しかしながら、再生プラスチックはバージン材*2に比べて、機械特性*3・熱物性の低下や品質にばらつきがあり、メーカーが求める材料性能を出しにくいことから、製品への活用は限定的である。また、再生プラスチック開発においては、エンジニアが過去の知識や経験をもとに試行錯誤しながら行うケースや、開発業務を担うエンジニアを社内に有していないケースが多い現状があり、今後、さらなる再生プラスチックの活用が期待される中、収集・蓄積したデータを用いたデータドリブンな開発業務が必要になるとされている。

*1 令和三年法律第六十号「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」 )(e-Gov Web ページ)
*2 バージン材:新品の素材のみを用いて製造したもの
*3 機械特性:材料の力学的な特性の総称。外部から力を加え、そのときにどのように反応するかを示す数値。

本実証の概要

日立は One Hitachi で連携し、日立製作所の Lumada ソリューションの一部である MI や生成 AI などのデジタル技術と、日立ハイテクの商事機能としてのマテリアル・バリューチェーン全体における幅広い知見や解析装置事業における品質解析技術を組み合わせて、「再生材マーケットプレイス」を開発し、サービス提供に向けた準備を進めている*4
リサイクラー*5 であるトーエイは、リサイクル黎明期から20年以上にわたって培った再生業のドメインナレッジを持ち、破砕・粉砕・選別・洗浄・ペレット化まで一貫したリサイクルに関する処理業務を実施してきた。
このたびの実証にあたり日立は、「再生材マーケットプレイス」において、ユーザーニーズに応じた再生材の品質分析(従来測定できなかった成形ばらつき品質、物性、規制物質など)の機能と、MI などを用いてお客さまが求める物性を満たす再生材・バージン材・添加剤の配合比率(配合レシピ)の提案を行う機能を開発した。本実証では、日立とトーエイがこれらの機能の有効性をともに実証し、再生プラスチックの活用における課題解決および活用拡大への貢献をめざす。

*4 ニュースリリース(2024 年 6 月 5 日):https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2024/06/0605.html )
*5 リサイクラー:工場や一般家庭などで出る廃棄物を、再度プラスチック製品や化学製品などの原料として活用できる状態に加工する役割を担う企業

具体的な実証内容

本実証では、再生プラスチックの品質を定量評価し、AIやMIを活用して配合レシピを提案することで、材料開発の効率化や属人化した開発業務の改善に向けた可能性を検討する。具体的には、トーエイの家電リサイクル事業で回収したPP材料*6を用いて、実証①でPP材料の品質を数値データ化し、実証②でMI機能により提案された配合レシピを検証することで、トーエイの新規材料製造の実証を行う。

*6 PP 材料:ポリプロピレン材料

実証① 品質のばらつきを数値化

トーエイの家電リサイクル事業において回収・再資源化されたPP材料の品質解析を日立ハイテクの解析技術を用いて実施し、量産段階で不良になりやすい成形品質のばらつきや物性のばらつきを確認する。品質レベルを数値化した本結果から、一般の汎用製品に適応可能なレベルの物性および成形品質であるかを評価する。

実証② MI による配合レシピを提案

「再生材マーケットプレイス」のMI機能では、日立製作所が独自開発した機械学習モデル(AI)を搭載しており、再生プラスチックの配合に関する実験データベースを活用し、最適な配合レシピを提案する。このデータベースは、材料や実験に関するさまざまな特徴量*7を定義したうえで構築したもので、材料特性(物性)と配合条件などのデータを蓄積している。
そのため、お客さま(リサイクラーやメーカーなど)の社内に再生プラスチックに関する十分なデータが蓄積されていない場合でも、めざす材料性能に応じて、再生材・バージン材・添加剤の最適な組み合わせを探索・提案することが可能である。

*7 特徴量:分析対象となるデータや対象物の特徴・特性などを定量的に表した数値

画像: 「再生材マーケットプレイス」の MI 機能画面例

「再生材マーケットプレイス」の MI 機能画面例

今後の展開

日立は、「再生材マーケットプレイス」の2026年度サービス提供開始に向け、本実証により開発した再生プラスチックのデータを「再生材マーケットプレイス」上に登録する予定である。日立の再生材の活用促進に関するドメインナレッジとAIを用いてデータを価値に変換し、お客さまや社会の課題解決をめざすLumada 3.0を体現することにより、トーエイが推進する環境を守るさまざまな事業を高度化し、循環型社会の実現や、再生材市場における持続的な成長と価値創出に貢献していく。

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