秋学とは…?
今回開催された「秋学」とは、茨城大学工学部が推進している、女子中高生の理系進路選択を後押しするプロジェクト「ミライエ・ラボ」*1の一環として、NPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクト*2との共催で実施されたものです。
*1女子中高生の理系選択応援プロジェクト【ミライエ・ラボ】
*2特定非営利活動法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクト
日立は、2025年7月に茨城大学工学部と締結した協定*3にもとづいた取り組みとして、キャリア講演とキャリアプラン作成会で連携しました。本協定は、地域の発展を支える理工系人財の育成や地域課題の解決・活性化を目的としており、今回の「秋学」への参画はその具体的な第一歩となりました。
*3茨城大学工学部と日立製作所が包括的な連携協力に関する協定を締結:2025年7月30日
当日は、大みか事業所で品質保証業務に従事し、南極観測隊への派遣経験も持つ田端さんがキャリア講演に登壇。女子高校生に向けて「モノづくりを通した理系の魅力」をテーマに講演を行いました。本イベントには、女子高校生16名とその保護者を含む計28名が参加。女子高校生は、理系分野の魅力や将来の進路について、理系に進まれた先輩方や同世代の仲間と交流しながら意見を共有し合い、理解を深めました。保護者向けプログラムでは、茨城大学ダイバーシティ推進室長の佐藤裕紀子先生によるバイアスに関する講演を実施。その後、お子さまの将来についての意見交換が行われました。
理系へ進んだ先輩たちによるキャリア講演
イベントの開会にあたり、茨城大学工学部長の乾正知先生が挨拶し、「理工系は興味深い分野です。多くの皆さんに参加いただき、この世界で豊かなキャリアパスを歩んでほしい」と参加者に呼びかけました。このメッセージに続き、イベントの前半では、理系科目を選んだ先に広がる学びや仕事に触れることを目的としたキャリア講演が行われ、理系分野で活躍する女性技術者・研究者2名が登壇しました。
日立からは田端さんが登壇し、私たちの生活を支える「インフラ」を切り口に講演をスタートしました。電気や水道、交通、病院など、日常に欠かせないインフラを支える「モノづくり」の現場では、知識と経験が不可欠であることを説明。「学生時代に知識を蓄え、企業で実践を積み重ねることがより良いモノづくりにつながる」と参加者にメッセージを送りました。
田端さんは自身のキャリアについても紹介し、理系に興味を持ったきっかけや、日立での仕事の様子を具体的に伝えました。現在の業務として、発電所や変電所向け保護リレーユニットの品質保証を担当していることを説明。雷による送電線のトラブルから電力設備を守るという保護リレーユニットの目的や、長期にわたるインフラシステムの保守・サポートなど、品質保証業務の重要性について身近な例を交えながら分かりやすく解説しました。

田端さん講演の様子
また、講演の中で田端さんが最も想いを込めて語ったのは「電気の魅力」です。電気は社会の基盤を支え、交通機関や医療施設など私たちの生活に欠かせない役割を果たしていること、そして、さまざまな業界で活用されていることを紹介。さらに、オーロラ発生の原因となる太陽風が、時には電力設備へ影響を与えることもあるなど、地球環境との関わりについても分かりやすく説明し、電気の奥深さや面白さを伝えました。さらに、参加者の注目を集めたのは、南極の昭和基地での業務経験談です。実際の写真や動画を交え、基地と研究者たちを支える「発電機制御盤の運用保守」という重要なミッションを紹介しました。
最後に田端さんは、「自分の可能性が広がる理系を選択してよかったと自信を持って言える。これを機にぜひ理系やモノづくりに興味をもってほしい」と、女子高校生たちにエールを送りました。

田端さん講演の様子
続いて、茨城大学からは理学部の飯沼裕美先生が登壇され、物理学の魅力、そして研究者としてのキャリアを語られました。講演の中では、「物理学の視点でSF映画を見てみると?」といったユニークな切り口も交えながら、多角的に理系の面白さを紹介されました。
実験に参加して理系の勉強を体験!
イベントの中盤では、茨城大学工学部の5学科で以下のようなテーマでそれぞれ実験が開催されました。各学科の先生方が実際に大学で学ぶ内容についてデモを行いながらわかりやすく解説。参加者は実際に物質や機械にさわって、理系分野のしくみと面白さを体験できました。実際に体験してみることで理系への好奇心が広がり、新たな魅力の発見へとつながるプログラムとなっていました。
・機械システム工学科:3Dスキャニングと3Dプリンタの世界
・電気電子システム工学科:手のひらの温度で駆動する液体熱電変換
・物質科学工学科:有機合成実験で香りと光を作り出す!
・情報工学科:AIと始めるプログラミング~1日で「アイデアが動く」Webアプリ開発体験~
・都市システム工学科:ベントナイトと液状化―土の不思議な挙動を解き明かす

実験の様子(都市システム工学科)

実験の様子(物質科学工学科)
先輩たちと話してみよう!キャリアプラン作成会
イベント後半では、女子高校生たちが自分の将来を描く「キャリアプラン作成会」が行われました。会場には、夢や目標を三角形のシートに書き込むワークショップが用意され、田端さんをはじめとする講演者や理系に進んだ女子大学生の方々が各テーブルにつき、参加者一人ひとりと会話しながら一緒に取り組んでいきました。まずはワークシートに遠い未来やなんとなくの夢を書き出します。「航空系の仕事や研究者への憧れ」、「猫と暮らす家を建てたい」など、それぞれの個性豊かな夢が並びます。すぐにペンを走らせる女子高校生もいれば、迷ってなかなか書き出せない女子高校生も。そんな時、田端さんは「単純にやってみたいことでも大丈夫だよ」と優しく声をかけ、背中を押していました。

キャリアプラン作成の様子
その後、田端さんも自身のキャリアプランを発表。学生時代からの道のりと未来への挑戦を続ける姿勢を示しました。女子高校生たちからは、「田端さんはなぜ南極に行こうと思ったのですか?」「南極での防寒対策どうしているの?」「人生の転機はどこでしたか?」など、率直な質問が飛び交いました。田端さんは「南極の景色を見てみたかった」「幼少期に自立心が芽生えるきっかけがあった」などと自身の経験を語り、参加者の質問に答えました。
最後のキャリアプランの発表では、「小さい頃からものづくりが好きで、建築に興味がある」「人を助ける仕事がしたいので医療系に進みたい」など、夢や目標をまっすぐに語る女子高校生の姿が印象的でした。迷いながらも自分の気持ちを一つずつ言葉にしていく様子からは、未来への期待と可能性が大きく感じられました。

キャリアプラン発表の様子

付箋には先輩たちや保護者からのメッセージが
イベントを終えて…
今回のイベントを通じて、参加者から「文理選択もまだ終わっていないし、その中で自分のなりたいものってなんだろうと悩んでいた、そこで今日イベントに参加して理系に興味がわいてきた。」といった声が聞かれるなど、自分の進路の可能性を広げるきっかけになった様子が伺えました。進路がまだ定まっていない参加者も、先輩方との対話や体験を通じて、自分の将来について考えるきっかけを得られたのではないでしょうか。理系の世界には、想像以上に多くの可能性と心躍る挑戦が広がっていることを実感できる場となりました。
こうした取り組みが、地域の理工系人財の育成や、若い世代の新たな挑戦を後押しする力になることを心から期待しています。日立は、今後も茨城大学工学部との連携を深め、地域社会の発展と多様な人材の育成に向けて取り組んでまいります。今後の活動にもぜひご注目ください!
本イベントについては、茨城大学工学部が公開している記事も併せてぜひご覧ください!


