CESを見れば、その年のテクノロジートレンドが分かる
まずは始めに自己紹介として、ご担当されている業務についてお伺いできますでしょうか。
市川:私たちが所属する日立ソリューションズは、日立グループの一員であり、日立の主力事業であるITセクターの中核を担うSier企業です。その中で我々の所属しているチームは、海外のスタートアップ企業の探索から、スタートアップ企業のサービスやソリューションを日本で展開するための再販(代理店)契約、そして日立ソリューションズが得意とするSIとの組み合わせによる価値提供にいたるまでを担っています。最先端の技術をいち早く捉えるために、年間約50カンファレンスを精力的に回っています。その中のカンファレンスの1つとしてCESがありますが、CESは日本で再販契約できるようなソリューションやサービスを探すというよりも、1年の始まりに開催されるということもあり、その年のトレンドや流れをキーノートスピーチや展示を見て把握するために参加しています。

市川 博一 (株式会社日立ソリューションズ シニアイノベーションストラテジスト)
CES2026のキーノートや展示をご覧になって学んだことや、感じたことがあれば教えてください。
市川:今年のCESを歩いてみると、去年とは展示の空気が明確に変わっているなと感じました。去年もAIは大きなテーマではありましたが、今年は更にAIが前面に推し出されており、去年よりもAIが夢物語ではなく、現実味を増しているように感じました。というのも、「今後、AIによってこういうすごい未来が訪れる!』という展示というよりは、直近1〜2年で本当に実現されていくようなAIを使ったソリューション、サービスが多かったと感じています。また、去年はよく目にした「生成AI」というワードですが、今や当たり前のようにソリューションやサービスの中に実装されており、むしろ「エージェントAI」や、「フィジカルAI」のケイパビリティーをアピールする企業が多かった印象ですね。
フィジカルAIのトレンドに乗り、ロボティクスの分野が盛り上がりを見せる
田中:私がおもしろいと思ったのは、ロボティクスのコーナーでしょうか。とくに目を惹いたのは、ボクシングをするロボットですね。SNSやウェブメディアでも大きな話題となっていました。ロボティクス分野の大半は中国の企業で、中国の技術力の高さを感じましたね。ここでポイントとなるのは、なにも企業はボクシングをするロボットを売りたいわけではないというところ。あのロボットボクシングの展示は、対戦相手の動きを捉えるカメラやセンサーの技術、パンチを繰り出すための関節の滑らかさ、倒れた状態から立ち上がるバランス感覚など、ロボットのハードウェアとしての性能・機能をアピールしているんですね。
しかし、もしこのロボットのOSを入れ替えるとどうなると思いますか?ボクシングという繊細なスポーツをやってのけるロボット(ハードウェア)なら、いろんなビジネスに応用できると思いませんか?さらに、今年はフィジカルAIに関する注目も高くなっており、このロボットにAIを組み合わせると、更なる新しいビジネスが生まれそうですよね。そういうところが彼らの展示の上手なポイントだと感じました。

田中 秀治 (株式会社日立ソリューションズ イノベーションストラテジスト)
市川:ロボティクスは昔のCESでは大きなテーマとなっていましたが、近年は下火になってきていると感じていました。しかし、フィジカルAIの流れが加速している中、今年はロボティクスがまた盛り上がってきている印象を受けました。この流れはしばらく止まらないので、おそらく来年もロボティクスの分野はAIとのかけ合わせによる大きな可能性を含めて、非常に注目されると思います。去年、CESでNVIDIAのジェンスン・フアン氏が、『今はエージェントAIの時代、しかしこれからはフィジカルAIの時代となる』とキーノートスピーチで発言し話題となりました。
昨年をフィジカルAI元年だとしたら、今年はそこからさらに一歩進んで、フィジカルAIがどんどん現実世界に実装されていく…そんな1年になるのではないかと感じました。NVIDIAは通常、自社イベントのGTC以外にはあまりブースを出展しないのですが、なんと今年のCESではブース出展も行っていました。NVIDIAがいかにフィジカルAIに注力しているかの現れではないでしょうか。
将来的には、すべての企業がフィジカルAIを活用する時代が来る
CES2026における日立の展示や、NVIDIAとの講演はいかがでしたか?
田中:日立は人通りの多い好立地に巨大なブースを確保できており、展示デザインも印象的で、CESにおいて、大きな存在感を放っていたのではないかと感じています。ブース内も多くの来場者で盛り上がっていましたね。また、展示の内容もHMAXを中心としたフィジカルAIのケイパビリティーを訴求するもので、前述のCES2026のテーマと非常に合致していると感じました。
市川:Foundry Sessionにおける、日立とNVIDIAによる講演も視聴しました。
立ち見が出るくらい大盛況で、すごく注目されているのだと驚きました。内容としては、HMAX by Hitachiについての説明が非常に明快で分かりやすかったですね。講演はHMAXを中心に日立のフィジカルAIのケイパビリティーを紹介し、その後NVIDIAのDeepu Tallaさんと対話するという流れでしたが、Deepuさんの「すべての企業がフィジカルAIを活用する時代が来る」という発言は非常に面白い考えだと思いました。去年のジェンスン・フアン氏の『すべての人々が、エージェントAIと一緒に働くことになる』という発言に近いと思いました。
Deepuさんは特に例は出していませんでしたが、例えば私たちが働くオフィスで言うと、たとえば「机 × AI」とか、「空調x AI」とか、もしくは「ビルまるごと x AI」とか…あらゆるフィジカルの領域に、AIが掛け合わされる未来が近い将来訪れると思っています。




