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AIの新たな時代が、いま幕を開けようとしています。変圧器から交通管理に至るまで、ミッションクリティカルなシステムの開発・導入・自動化のあり方を変革しているインダストリアルAI。本シリーズでは、日立がインダストリアルAIの革新力を、最前線からご紹介します。

世界中で老朽化が進む社会インフラを前に、日立の研究開発部門は XR・AI・メタバースをどのように組み合わせ、産業界の課題解決に挑んでいるのか。

経験の浅い作業員が、産業現場に現れます。設備はどれも見慣れないうえ、解決すべき問題も初めてのもの。そうした中作業員は、熟練技術者を呼んで目の前の問題を説明してもらう代わりに、タブレットやVR(仮想現実)あるいはAR(拡張現実)ヘッドセットを手に取り、現場のデジタルツイン、つまり設備仕様、オペレーター、プロジェクトに関する情報を3Dで視覚化できるメタバース環境に入ります。

とはいえ、最初は情報量が多く戸惑うかもしれません。そこでAIエージェントが、こうしたデータと現場の出来事や状況を追跡するセンサーからのリアルタイム情報を統合し、修理作業を一つひとつ案内してくれます。その結果、エラーが減り、ストレスが軽減され、より迅速な解決につながります。

日立の研究者たちが思い描くのはまさにこうした未来であり、同社の現場拡張メタバースにAIエージェントを導入することに成功しました。そのエージェントである「FrontlineCoordinator – Naivy」(ナイビー)は、効率性を向上させ、現場経験の浅い作業員の心理的負担を軽減することを目的としています。 

このツールはまだ研究開発段階ですが、実証においてNaivyは日本の半導体メーカーにおける施設管理作業で、経験の浅い作業員のパフォーマンスを約30%向上させる効果が確認され、さらに
この試行では若手作業員のストレス軽減にも役立つことがわかりました。

「日立の現場拡張メタバースNaivyの最終目標は、現場作業員にとって革新的な働き方を創造することです」と語るのは、日立の先端AIイノベーションセンター主任研究員の藤原貴之氏です。「これにより、労働力人口が減少し続ける中でも、社会が持続的に発展し続けられるように支援しています。」 

AIとXRの融合

世界各地で、道路や橋、公共施設、電力、上下水道といった社会インフラの維持管理に各国政府は苦労しています。

たとえば、米国土木学会(ASCE)は、2025年版「米国インフラレポートカード」で、米国のインフラに「C」の評価を付けました。これは近年の評価に比べて改善しているものの、2033年までに3.7兆ドルのインフラ投資不足が生じると予測しています。

資金調達やメンテナンスの先送りに加えて、人口動態も社会インフラの更新における課題となっています。世界保健機関(WHO)によると、世界の60歳以上人口の割合は2015年の12%から2050年には22%へ、ほぼ倍増すると見られています。これは、熟練労働者が大量に引退し、代わりとなる若手が不足することを意味します。

藤原氏は、現場拡張メタバースと Naivy(“navigation” と “AI” を組み合わせた名称)の技術が、社会インフラだけでなく、製造、エネルギー、物流などの産業分野においても人材不足によって生じるスキル・人材のギャップを埋める一助になると考えています。「現場拡張メタバースとNaivy を活用してエネルギー、モビリティ、コネクティブインダストリーなど、さまざまな分野が抱える多様な課題に、1つの共通したコンセプトのもとで解決できることに大きなやりがいを感じています」と同氏は語ります。

XR(eXtended Reality)とAIの組み合わせは、産業現場の作業員を支援するのに特に適していると藤原氏は言及します。

ゲームやソーシャルメディアといったXRの用途をめぐる誇大宣伝は数年前に比べ落ち着きました。しかし、藤原氏はメタバースを「没入型の仮想環境」と捉え、訓練、シミュレーション、迅速なコミュニケーションなど産業利用に向いていると話します。

「製造、運転、点検、さらには手術のプロセスさえも、仮想環境で学ぶことができます」と同氏。
「メタバースは複雑なシミュレーション結果もわかりやすく表現できますし、関係者は物理的な場所に関わらず即座に情報を共有することもできます。」

さらに、メタバース技術の上にAIを組み合わせることで、産業現場での効率向上、自動化の推進、分析能力の拡大が期待できると藤原氏は述べます。

たとえばAIは、危険な動作をリアルタイムで検知して警告したり、品質検査のスピードを高めたり、反復的なタスクを自動化して業務プロセスを最適化することができます。

「AIをメタバースに統合することで、AIは状況を分析するだけでなく、重要な情報を提示し、3次元の特性を生かした直感的なかたちでユーザーを支援できるようになります。」と藤原氏。「言い換えれば、現実世界をメタバース上で仮想的に再現できるようになります。AI はその同期された状況を理解し、ユーザーに適切な指示を示すことができるのです。」

メタバースの没入感を活かす

日立が描く産業現場におけるXRとAIのビジョンは、すでに研究室から現場へと移行しつつあります。同社の研究開発チームは、施設管理、輸送、エネルギー、製造など、いくつかの業界で複数のPoCを実施しています。

藤原氏によると、現場拡張メタバースとNaivyを組み合わせることで、ユーザーの習熟度に合わせてAI が XRコンテンツやサポート内容を生成し、理解度を高めることができるため、研修効果が向上しているといいます。また、状況に応じた支援を提供することで、運用・保守サポートの品質も向上。さらに、チームの誰もが同じ3D環境にアクセスできるため、多様な関係者間の合意形成に役立つ点もメリットです。

鉄道車両の保守を対象としたパイロットプロジェクトでは、このソリューションが保守マニュアル、レポート、画像などのデータをオペレーターが連携させるのに役立ち、保守作業に必要な部品を迅速に特定できるようになりました。エネルギー分野のパイロットプロジェクトでは、潜在的なリスクをユーザーに分かりやすい形で可視化。また、物流のパイロットプロジェクトでは、経験の浅い作業員でも工場の点検業務を実施できるように支援しました。

「これらの取り組みは、AIの推論能力とメタバースの没入感を組み合わせることで、ダウンタイムの削減、安全性の向上、そして強靭なオペレーションの実現といった実践的な価値を提供できることを示しています。」と藤原氏。 

現場拡張メタバースとNaivyはまだ商用利用には至っていませんが、藤原氏は、このような現実世界での研究が技術を前進させるうえで不可欠だと強調します。「日立には実際の運用現場があります。AIなどのIT に精通した専門家に加え、エネルギー、モビリティ、コネクティブインダストリーといった分野の設計、製造、運用、保守に関する深い知識を持つOT(制御技術)の専門家もいます。両社が協力することでこうした課題解決に取り組めるのです。」

「IT と OT の専門家が同じ企業内にいて、深い議論をしながら密に協力できる環境は非常に珍しいと思います。」と藤原氏は付け加えます。「これこそが日立独自の強みなのです。」

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藤原貴之氏は日立製作所 研究開発グループ 先端AIイノベーションセンタの主任研究員です。
eXtended Reality, メタバースと生成AIを活用して産業応用につなげるための技術、プロセス開発に取り組んでいます。

*こちらはCIOの記事を翻訳したものです。

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