再生医療等製品の出荷におけるスケジュール調整を効率化する「リソース予約管理機能」を初実装。「HMAX Industry」を支えるデータ収集・蓄積基盤として積極的に展開
日立は、細胞から組織をつくる「細胞シート」開発ベンチャーのセルシード向けに、再生医療等製品向けのバリューチェーン統合管理プラットフォーム「Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine(以下、HVCT RM)」を提供し、2026年4月より運用を開始した。Lumada*1ソリューションであるHVCT RMは、再生医療等製品における細胞の採取から生産、輸送、投与に至るサプライチェーン全体の最適化を支援する統合管理プラットフォームである。今回はセルシードが同種軟骨細胞シート*2の商用化のために実施する臨床試験(第3相試験*3)向けに提供した。新機能として初めて、再生医療等製品の出荷におけるスケジュール調整を効率化する「リソース予約管理機能」(以下、本機能)を実装し、再生医療等製品の製造企業が細胞を培養・加工するための、製造所のラインの空き状況などの情報に基づく予約枠を作成・公開し、医療機関はその候補日から希望日程を簡単に選択・予約できるようにしている。日立は今後、HVCT RMを「HMAX Industry」を支えるデータ収集・蓄積基盤として積極的に展開していく。
セルシードは、細胞から組織を作る技術で再生医療をリードするバイオベンチャー企業であり、細胞同士をつなげたままシート状にする独自技術「細胞シート工学」を強みとしている。「細胞シート工学」は温度応答性細胞培養器材を用いて細胞をシート状に回収する技術である。この技術を用いて作製された細胞シートにより、従来の薬物療法では改善が難しかった組織や臓器を修復する新しい医療の実現に取り組むもので、患者さまの健やかな生活への貢献をめざしている。
現在、変形性膝関節症患者さまの損傷した膝関節軟骨を修復する「同種軟骨細胞シート」の臨床応用に向けた取り組みを進めている。また、再生医療受託サービスのこれまでの取り組みとして、医療機関主導で実施される食道がん内視鏡手術後の狭窄予防を目的とした「食道再生上皮シート」および変形性膝関節症の治療を目的とした患者さまご自身の細胞を用いる「自己軟骨再生シート」について、セルシードは現在、当該治療に使用される細胞シートの製造を受託している。加えて、細胞シートを作製するために温度を変化させるだけで細胞を傷つけずに剥離できる「温度応答性細胞培養器材」の開発および販売も行っており、世界中の研究者の活動を技術面から支援している。
日立グループは医薬・再生医療分野において、HVCT RMのほか、医薬品・医療機器製造業向け製造・品質管理システムとして国内トップクラスの豊富な実績を有する「HITPHAMS」、および細胞培養加工施設、細胞自動培養装置、再生医療用キャビネット、微生物迅速検査装置などの幅広いプロダクトを提供し、医薬・再生医療のバリューチェーン全体にわたる課題解決に貢献している。こうした日立グループの最新テクノロジーを、未来医療国際拠点「Nakanoshima Qross(中之島クロス)」(大阪府大阪市)内のショールームや「再生医療イノベーションセンター」(東京都中央区)で紹介している。
日立は産業分野向けに、プロダクトの豊富なインストールベース(デジタライズドアセット)のデータにドメインナレッジと先進AIを組み合わせた次世代ソリューション群「HMAX Industry」に注力している。これらをコアとする「インダストリアルソリューション」の提供を通じて、お客さまのライフタイムバリューを最大化し、グローバルに産業を変革することで、豊かな社会の実現をめざしている。
*1 Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。
*2 同種軟骨細胞シート:健康な他者(ドナー)の軟骨細胞を培養し、シート状に加工したもの。
*3 第3相試験:多数の患者を対象に、既存の標準的な治療薬やプラセボ(偽薬)などと比較して、新しい薬の有効性と安全性を最終的に確認する臨床試験の最終段階。
本件の特長と効果
- 「リソース予約管理機能」を初実装。スケジュール調整の確実化と工数削減
今回、HVCT RMの新機能として、「リソース予約管理機能」を初めて実装した。セルシード
は、自社の製造状況を踏まえた出荷可能枠を登録するだけで、製品の投与候補日が自動で立案
され、医療機関へ公開される。医療機関は提示された枠から希望日を選択・入力し、予約が完
了する。また、予約確定時には関係者へ通知メールが送信されるため、個別連絡の手間も省け
る。全ステークホルダーが常に最新のスケジュールをリアルタイムで共有できるため、煩雑な
やり取りを大幅に削減でき、ヒューマンエラーを根本から防ぎ、確実なスケジュール調整と工
数削減を実現する。 - スケールアップを見据えた安心・安全なトレーサビリティの確保
HVCT RMの導入を通した業務効率の向上により、本治験薬が商用化フェーズへ進み製造量が増
加した際にも、安定した対応が可能である。また、製造量が少ない治験段階からデジタルツール
を活用して業務を標準化しておくことで、上市のタイミングでの運用切り替えにより発生する混
乱を回避し、スムーズな立ち上げを実現する。さらに、調整業務が治験コーディネーターから製
造企業の担当者へ移行する際にも、業務内容が簡略化されていることで、移行を容易かつ確実に
する。
今後の展開
日立は、再生医療の産業化における最も困難な課題をエンドツーエンドで解決する。具体的には、日立はMESや受発注システムなどの周辺システムとの連携によりHVCT RMの機能強化を図り、再生医療等製品向けプラットフォームのデファクトスタンダードとなることをめざしており、これらのIT、OTと細胞培養加工施設などのプロダクトを組み合わせたソリューションの提供により、再生医療分野の課題解決に貢献していく。
セルシードは、本システムを現在進行中の第3相臨床試験への導入のみならず、将来的な商用生産体制の構築に向けた基盤強化として捉え、原料採取から最終製品出荷までの全工程を追跡可能にし、厳格な品質管理と情報のトレーサビリティの確保を実現していく。また、本システムを通じて効率的なサプライチェーン・マネジメントの知見を蓄積し、再生医療業界全体のデジタル・トランスフォーメーションの推進に貢献していく。
商標注記
HVCT RM は、株式会社日立製作所の登録商標です。
HITPHAMS は、株式会社日立製作所の登録商標です。
Nakanoshima Qross は、一般財団法人未来医療推進機構の登録商標です。
その他記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標または登録商標です。
関連リンク
「Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine」
「HITPHAMS」
細胞培養加工施設
細胞自動培養装置
再生医療用キャビネット
微生物迅速検査装置
「Nakanoshima Qross」内のショールーム
再生医療イノベーションセンタ



