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日立独自の技術で約2万通りのシミュレーションからまちの複数の未来シナリオを生成、長崎県壱岐市では政策の方向性確認・見直しに活用

日立は、複雑化する社会課題に直面する自治体の政策検討を、AIと日立独自の未来シナリオのシミュレーション技術*1で支援する取り組みを、2026年5月28日から本格的に開始した。
本取り組みでは、はじめに人口や税収、環境、福祉といった自治体固有の政策検討要素(指標)と過去の施策KPIデータ、住民や職員のアンケートデータなどをもとに、指標間の因果関係をモデル化(因果連関モデル*2)する。このモデルをもとに、日立独自の未来シナリオのシミュレーション技術により約2万通りのシミュレーションを実施し、「子育て支援に力を入れた場合」、「産業振興を優先した場合」など複数の政策を組み合わせた際に、まちの未来がどのように変化するのかをAIで分析・可視化する。また、「2030年が意思決定の重要な分岐点になる」といった未来のターニングポイントやキーイベントまでを具体的に示すことができる。自治体は、このように可視化された未来のシナリオを分析・比較しながら、総合計画*3をはじめとした上位計画の方向性や具体的な施策を検討できる。
さらに、すでに策定済み、実施中の政策の見直しにも活用可能である。一度作成した因果連関モデルは改訂しながら活用できるため、データ収集やシミュレーション実施における自治体の負荷も低減できる。
日立は、このような一連のプロセスにおいて、自治体職員が参加するワークショップを実施し、指標の選定や因果連関モデルの構築、さらにはシミュレーション結果の解釈に伴走型で取り組む。あわせて、自治体の計画策定やDX支援に関するコンサルティングの知見を有するパートナー企業などとも連携し、施策への落とし込みや組織内の合意形成を支援する。これにより、自治体における効果の高い政策の検討や、職員が課題をより身近に捉えて政策を推進できる環境づくりを支援し、EBPM(Evidence Based Policy Making)*4の実現やよりよいまちづくりに貢献する。

*1 シミュレーション技術を活用した事例:AIが提示する「脱炭素」の未来シナリオ 政策立案に活用へ
*2 それぞれの指標がどのように影響しあうのか、指標間の因果関係を定義したもの。
*3 自治体の最上位計画で、まちの将来像や施策の方向性を総合的かつ計画的に定めるもの。自治体において5年に1回程度作成される。
*4 政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計などのデータ(エビデンス:証拠)に基づいて、政策を企画立案し、質の高い行政サービスの提供を行うもの。

背景

近年、自治体は少子高齢化、財政難、環境問題など複雑化する社会課題への対応を求められている。これらの課題は相互に関連し合っているため未来のまちの姿は見通しにくく、また限られた財源の活用という条件下で、どこから何に着手すべきかといった判断がより困難になっている。
一方で、政策の説明責任も増大している。国がEBPMの促進を提唱する*5中、自治体は政策選定の理由を議会・住民に対してエビデンスをもって説明することが求められている。しかし、従来の手法では、複雑な因果関係を考慮した分析や説明が難しい状況であった。こうした背景から、自治体では客観的なデータを活用した将来予測や政策検討のサポートへのニーズが高まっている。
本取り組みで用いる日立独自のシミュレーション技術は、複数のトレードオフが存在する複雑な社会課題の解決に活用可能なものである。これまでさまざまな自治体やエネルギー・製造分野をはじめとする民間団体などで20件以上の活用実績がある。

*5 内閣府Webページ:経済財政運営と改革の基本方針2025

本取り組みの特長

(1) 約 2万通りのシミュレーション結果とAI分析で未来のシナリオと分岐点を可視化、エビデンスに基づく政策検討を支援

総合計画などの上位計画の策定では、10〜20年後のまちの姿を見据えた施策の優先順位付けが求められるが、従来の検討材料は人口推計など限られたデータにとどまり、担当者の経験・専門領域に偏る傾向があった。
本取り組みでは、因果連関モデルを構築し、指標間の因果関係に加え、未来への影響の強さや影響が現れるまでの時間についても、自治体が保有する実績データなどをもとに定量的に設定する。このモデルをもとに、日立独自の未来シナリオのシミュレーション技術で約2万通りのシミュレーションを実施し、その結果をAIで分類・整理することで、まちの未来と重要な分岐点を可視化したシナリオを10個程度生成する。
自治体は、このシナリオを活用することで、まちの未来がどのように変化するかを比較検討できる。さらに、「この施策の有無で2040年の姿が大きく変わる」といったターニングポイントやキーイベントを把握できるため、統計的・論理的に導き出されたエビデンスにもとづく施策の優先順位付けや具体的な施策の計画策定が可能である。

(2) ワークショップを通じて、政策への職員のより主体的な関わりを促進

効果の高い政策を策定するためには、自治体内の各部署が個別に対応するのではなく、関連する複数部署が連携し、横断的に検討を進めていくことが重要である。本取り組みでは、関連する部署の職員を中心に、テーマに応じて住民も参加するワークショップを実施する。
ワークショップでは、DX施策の推進を伴走的に支援してきた日立の豊富な経験・知見を生かしながら、職員などの関係者と、自治体固有の指標の選定や因果連関モデルの構築について議論する。続いて、こうして構築したモデルから得られるシナリオをもとに、まちの未来の姿を読み解き、どの未来がより望ましいかを議論しながら基本方針を選定していく。このように、本取り組みは政策の担い手となる職員が主体的に関わるプロセスのため、職員間の議論や合意形成を促進するとともに、課題をより身近に捉えて政策を推進できる環境づくりに貢献する。加えて、職員自らがEBPMを政策検討の現場で実践できる機会としても活用できる。

(3) 実施中の政策の方向性確認や見直しにも活用可能

本取り組みは、策定済み・実施中の政策の方向性確認や見直しにも活用できる。例えば、策定済みの上位計画に対して本取り組みを実施することで、「想定通りの未来がくるか」「想定外の事象が生じないか」といった点を確認できる。また、定期的にシミュレーションを実施することで、「どの施策が特に効果的だったか」、「想定と異なる点はどこか」なども把握でき、政策の見直しに生かすことができる。一度作成した因果連関モデルを改訂しながら活用できるため、データ収集やシミュレーション実施における自治体の負荷も低減できる。
先行してKPMGコンサルティング株式会社とともに本取り組みを実施した長崎県壱岐市においては、市がめざす未来像やそのために必要な政策の方向性の検討に向けた支援を行った。その結果、現状の政策による人口減少抑制効果と、未来のまちの姿の分岐点が示された。

長崎県壱岐市 市長 篠原 一生氏のコメント

本市の人口は、令和8年2月時点で約2.3万人ですが、国立社会保障・人口問題研究所の試算によれば、2050年には13,199人まで減少すると予測されています。この人口半減の危機に対し、本市では「2050年以降も人口2万人を維持する」ことを掲げ、まちづくりを推進しています。
こうした中、令和7年3月27日に「壱岐新時代創造会議」を開催し、新たな政策構想を発表しました。掲げた政策の妥当性を検証し、めざすべき未来像について市民と共通認識を持つことが、今回の取り組みの主な目的です。
今回の試みにより、政策による人口減少の抑制効果を確認できただけでなく、未来への要因や重要な局面といった、具体的な知見を得られたことは大きな成果です*6。これまでの手法とは異なる新しいアプローチでしたが、政策立案におけるAI活用の大きな可能性を実感する結果となりました。

*6 壱岐市Webページ:壱岐新時代対話会を開催しました!

今後の展開

今後日立は、壱岐市などにおける事例をふまえ、他自治体へも本取り組みを展開し、総合計画をはじめ、人口減少対策、環境政策、都市計画、産業振興、財政計画など、幅広い政策検討の場面での活用をめざす。
あわせて、データを価値に変換するLumadaの取り組みを自治体業務へ適用し、自治体が直面する複雑な社会課題の解決やEBPM実現、よりよいまちづくりを支援していく。

日立 自治体分野Webページ

https://www.hitachi.co.jp/Div/jkk/jichitai/index.html

商標注記

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