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 北海道国民健康保険団体連合会(以下「北海道国保連」という。)と株式会社日立製作所(以下「日立」という。)は、北海道主導のもと、2020年度より3ヵ年計画で共同構築してきた「健康・医療情報分析プラットフォーム:KDB Expander」(以下「本システム」という。)を、2023年4月より本格稼働する。健康寿命の延伸や医療費適正化を目的に、北海道および道内全179市町村において活用され、全世代型予防・健康づくりの推進を支援する。
 本システムは、北海道の人口の約7割にあたる若年層から高齢者まで約370万人*1の健康診断結果やレセプトデータといった健康・医療情報を、地域保険*2・職域保険*3から横断的に集約した「地域・職域データプラットフォーム」である。 

 なお、集約したデータは、保健事業推進に役立つ観点で分析し、分析レポートやデータセット(図表データ一式)として市町村職員へ提供する。地域特有の健康課題を年代や性別ごとに把握し、効果的かつ効率的に保健事業を推進できるようになります。分析レポートのひとつとして提供する「健康レポート」*4は、市町村保健師から被保険者への保健指導業務を支援するものです。日立独自AI*5を用いて、大規模な健診結果データなどをもとに生活習慣病の発症傾向を分析し*6、健康改善アドバイスや過去の健診結果などをまとめた個人ごとのレポートとして提示する。開発にあたり、小樽市・室蘭市・北見市において2021年度から2022年度にかけて過去6年分のデータを用いた実証を行い、AIの学習や分析精度向上を行った。

画像: 「健康・医療情報分析プラットフォーム」の概要と活用イメージ

「健康・医療情報分析プラットフォーム」の概要と活用イメージ

*1 2020年度のデータ。北海道の人口約520万人の約7割に相当する、国民健康保険、後期高齢者   医療、介護保険、協会けんぽの被保険者、
   約370万人のデータを本システムに集約。
*2 地域保険:自営業者・農林水産業者・無職者など、職域保険に加入していない人を対象とする社会保険。
*3 職域保険:会社員・公務員・船員とその扶養家族を対象とする社会保険。
*4 本レポートは、国民健康保険の被保険者を対象としたもの。
*5 本AI技術は、デジタルイノベーションを加速するLumada(ルマーダ)で展開する技術の1つ。高精度な予測モデルを構築するための深層学習
  (ディープラーニング)において従来は困難だった「予測に寄与する要因の抽出」が可能。
  また、特許取得済みの日立独自の「根拠データ管理技術」により、予測要因を生成した根拠データまで遡ることができるため、高精度に予測し、
  その根拠を説明できる。
*6 大規模な健診結果データから統計的な発症傾向を分析するものであり、個人ごとの発症傾向を分析するものではない。

背景

 日本の保険制度は、ライフステージや職種などに応じて多数存在し、各制度に基づいた事業がそれぞれにおいて推進されているため、制度間のつながりが十分ではなく、保健事業の継続性が途絶えてしまうほか、地域の健康課題を正確に把握することが困難だった。
 このような中、2019年9月に厚生労働省の提供する「地域・職域連携推進ガイドライン」*7が改訂され、2020年度から保険者努力支援制度*8が強化され、地域・職域連携を推進するデータベース開発などが実施できるようになった。地域保険と職域保険が制度ごとに保有する健康・医療情報を連携させ横断的なデータ分析を行うことで、現状を把握し、継続的かつ包括的な保健事業の推進に向け、地域の実情をふまえた具体的な取り組みにつなげていくことが求められている。
 北海道では、全国より高齢化が急速に進む中、健康寿命が男女ともに全国平均に比べ1歳以上短いこと、一人あたりの医療費も高額なことなどが大きな課題である。これらの解決に向け、北海道が中心となって施策立案に取り組んでいるものの、小規模な市町村が6割を占める地域特有の事情から、マンパワーなどが不足しているため、地域の健康課題を明確化し、予防・健康づくりを推進していくことが困難な状況である。

*7 2019年9月26日 厚生労働省報道発表資料 「地域・職域連携推進ガイドライン」改訂について
*8 保険者努力支援制度は、保険者(都道府県・市町村)における予防・健康づくり、医療費適正化などの取り組み状況に応じて交付金を交付する
  制度。

今回の取り組み

 このような背景を受け、「全世代型予防・健康づくり推進事業」として、北海道国保連は本取り組みを企画・推進し、日立はこれまでに培った地域・職域保険のシステム構築実績やデータ分析ノウハウをもとにシステム設計や環境構築などを行った。
 本システムは、データヘルス*9支援ソリューション「スマートアナリシス/NI」*10をベースに構築したもので、4つの保険制度(国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険、職域保険(協会けんぽ*11))の健康・医療情報を収集・集約*12した上で、性・年齢別などの多様な観点で制度横断的に分析し、データ抽出が可能なプラットフォームである。

(1)健康・医療情報の制度横断や個人単位の経年変化など多角的分析を実現

 制度横断的に健康・医療情報を集約することで、現役世代から後期高齢者までの経年変化を個人単位で分析*13))することも可能としています。この分析データを活用し、例えば重症化に至る病態遷移の経年変化パターンなど、人生100年時代を見据えた全世代横断でのエビデンスづくりに取り組む。

(2)専用ポータルサイトから、保健事業を支援する独自分析レポートやデータセットを提供

 北海道全体や地域特有の健康課題の把握が可能な分析レポート、データヘルス計画作成を支援するデータセット、重症化予防などの保健事業推進に用いる対象者リストなど、約50種類の帳票を提供する。(分析レポートやデータセットの詳細は別紙参照)
 これらのレポートやデータセットは、専用のポータルサイトを通じて各市町村が容易にダウンロードできる仕組みとし、健康・医療統計や対象者リストなどのデータをタイムリーに活用できるほか、医療や介護の各種施策検討および事業活用といった市町村の保健事業の推進に活用することが可能とする。

*9 データヘルス:電子的に保管された被保険者の医療情報・特定健診情報を活用して分析した上で行う、被保険者の健康状態に即したより
  効果的・効率的な保健事業。
*10 データヘルス支援ソリューション「スマートアナリシス/NI」は、株式会社日立社会情報サービスが提供するサービス。
*11 全国健康保険協会(協会けんぽ)のデータは、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に基づき、個人識別ができない匿名加工情報と
  して協会けんぽ北海道支部から提供されたもの。
*12 北海道国保連が管理するKDB(国保データベース)など複数のシステムからデータを連携したほか、匿名加工された協会けんぽのデータを本シス
   テムが稼働するサーバーに集約格納。データは、強固なセキュリティで担保された独自ネットワーク(国保医療保険ネットワーク)内に設置され
  た特定端末のみで参照できる。
*13 制度横断的な個人単位の分析には、国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険のデータを用いる。

今後の展開

 北海道国保連と日立は、将来的に10年分のデータ蓄積を進めるとともに、分析レポートやデータセットの拡充など本システムの強化を継続する。これにより、地域住民の健康増進や医療・介護関係者との連携、データヘルス施策の検討など市町村の保健事業推進の効率化を図り、北海道全体の予防・健康づくりの推進に貢献する。
 また、日立は、健康・医療に関するビッグデータの利活用や分析技術、システム構築のノウハウを活用し、他の自治体への展開を図るなど、日本の持続可能な医療保険制度の構築や誰もが健康に暮らせる社会の実現に貢献する。

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