Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
日立グループは、株式会社山口フィナンシャルグループ(以下、山口FG)、山口県下関市(以下、下関市)と共同で、地域価値向上に貢献する人財の育成を目的としたワークショップ「地域共創人財育成研修」を2023年7月から2024年1月にかけて、実施しました。
このワークショップでは、観光産業をテーマに、下関市が持つ地域資産の整理、他地域での類似の取り組みに関する学習、日立が持つデジタル技術の活用などを総合的に議論し、地域創生につながる新規ビジネス案を検討するものです。山口FG、下関市、そして日立グループの社員・職員が、上記期間中の全6回のワークショップに参加しました。
そして、最終回となる1月15日には、山口FGの椋梨社長、前田下関市長、日立の丸谷中国支社長、さらには地元メディア出席のもと、下関市内の山口FG本店にて最終成果発表会が開催されました。

代表者からの挨拶

最終発表会では、冒頭で椋梨社長と前田市長、そして丸谷支社長の挨拶が執り行われました。椋梨社長からは、「組織の枠を超えて、課題解決し、そして社会実装をめざすべく、ここまで参加者の皆様は頑張ってきました。本取り組みは継続し、さらに広がっていくことが大事だと考えています」、前田市長からは「下関を元気にするために、普段からさまざまな提案を頂いてきました。下関には夢もありますが、一方で課題もたくさんあります。皆様からのアイデアが、その課題解決に結びつくのであれば、ぜひ施策につなげていきたい。下関の活性化に向けて連携していくため、宜しくお願いします」とのコメントを頂きました。

画像: 山口FG 椋梨社長

山口FG 椋梨社長

画像: 前田下関市長

前田下関市長

画像: 日立丸谷中国支社長

日立丸谷中国支社長

各チームからの発表内容

合計28名の参加者は、山口FG・下関市・日立グループからの混合で、計5チームに分かれ、以下の通り発表を行いました。3者の関係者による審査のもと、最優秀チームを選定。その結果、1チームが最優秀賞に輝き、表彰を受けました。

画像: 各チームからの発表内容

<1チーム>テーマ:”福×じげのもん(地元のもの)” “海峡と歴史のまち”

画像: <1チーム>テーマ:”福×じげのもん(地元のもの)” “海峡と歴史のまち”

下関市の名物である「ふぐ」。ブランド認知力自体は高いが、数ある「ふぐ」の環境資源は生かされているとは言えない現状がある。そこで、統一的なブランドと食以外の新コンテンツ作り、そしてコンテンツをデジタルでつなぎ、下関の新しい魅力を引き出すことを提言。「ふぐ」そのものについても、店舗情報はもちろんのこと、「ふぐ」に関する歴史やイベント等の情報を積極的に発信し、その魅力をさらに高めていく。具体策として、観光客の周遊データから傾向を把握し、マーケティングの基礎データとして活用することで、下関市の活性化につなげていく。あわせて、現状マイカーやレンタカーで下関を訪れる観光客が多く、一連の施策により交通量増加が予想されることから、迂回駐車場の情報発信、ならびにそれに伴う他エリアへの流入拡大を狙う。

<2チーム>テーマ:~離島観光ネットワークの構築~ 蓋井島(ふたおいじま) ハテノ博物館

画像: <2チーム>テーマ:~離島観光ネットワークの構築~ 蓋井島(ふたおいじま) ハテノ博物館

下関市を魅力的な観光地にするにあたって、現状は唐戸市場や角島(つのしま)といった有名な観光地に人が集中しており、かつ九州や広島方面に流れてしまう通過型観光客が多く、滞在時間が短いことで、観光消費額も少ないという課題がある。そのため、離島の観光資源を活用し、滞在型の観光需要を引き出したい。具体策としては、自然豊かな蓋井島全体を博物館に見立てることでファミリー層を呼び込み、さまざまな体験や現地の食を宿泊込みで満喫して貰うとともに、指認証や顔認証を活用し、財布や身分証無しでもシームレスに観光を楽しめる、デジタル・アイデンティティ・プラットフォームを整備していく。

※蓋井島
下関市北西、響灘に浮かぶ山口県最西端の離島。面積2.35平方キロメートルで、吉見港から連絡船(1日3往復、所要時間約40分)でアクセスできる。人口約90人。島の周囲は日本海の荒波によって生まれた険しい岩石海岸が続き、多数の洞窟や奇岩が多く、あわせてその海流が運ぶ豊富な海産物により、漁業が盛んで釣りに訪れる人も多い。ヒゼンマユミの群落や「山の神」の森といった雄大な自然を生かした名所の他、エミュー牧場も観光地となっている。

<3チーム>テーマ:田耕(たすき)地区の活性化

画像: <3チーム>テーマ:田耕(たすき)地区の活性化

豊北町の田耕地区という、人口減少に悩む地域の活性化にフォーカス。豊北町自体が約30年で人口半減している中で、さらに田耕地区は約20年で人口半減と、特に早いペースで人口減少が進んでいるという課題がある。そういった中で、テントサウナや地元産のジビエ、野菜、鮎の塩焼きなど、海の幸・山の幸が豊富にあるという魅力がある。まさに非日常感・贅沢感によりその魅力を存分に体感できる。現在、下関市を訪れる国内観光客は、関門海峡を越えた福岡県が一番多い。特にその中でもファミリー層に豊北町の田耕地区の魅力をPRすることで、下関からさらに足を延ばして田耕地区に引き込み、地域の活性化につなげていきたい。

<4チーム>テーマ:「川棚のクスの森」と共に歩む川棚温泉再生プロジェクト

画像: <4チーム>テーマ:「川棚のクスの森」と共に歩む川棚温泉再生プロジェクト

下関市豊浦町川棚に所在する「川棚のクスの巨木」は、推定樹齢1000年を超え、国の天然記念物である。「日本三大楠樹」の1つとしても知られているが、5年前に突然枯れ始め、かつての深緑の雄大な光景が失われてしまった(現在は、少しずつ新芽が育ち始め、回復傾向にある)。川棚地区はまた、山口県を代表する「防長四湯」の一つであり「下関の奥座敷」とも称される川棚温泉を擁する。さらに、川棚は世界的音楽家であったコルトーが愛した場所であり、現在は芸術を通した人と人との触れ合いの場としてのミュージアムである「川棚の杜」が、新しい川棚の観光資源の柱となっている。「観光」「アート」「森林保護」の3つの観点から、かつての活気を川棚地区に取り戻していきたい。

<5チーム>テーマ:「BOAT RACE下関」を核とした、韓国からのインバウンド誘客プロジェクト

画像: <5チーム>テーマ:「BOAT RACE下関」を核とした、韓国からのインバウンド誘客プロジェクト

下関市東部に位置するボートレース場「BOAT RACE下関」は、現在、電話やネット投票の普及などによる来場者減に悩まされている(ネット投票が普及したことで、ボートレース自体の売上は増加傾向)。そこで、インバウンド客を取り込んだ、「BOAT RACE下関」を核とした滞在型観光の推進を提案したい。下関港からは毎日1便、韓国・釜山港までの関釜フェリーが運航されており、韓国からの観光客を取り込むことが期待できる。そのためには、「受け入れ態勢の整備」「情報発信強化」「コンテンツの充実」の3ステップで、インバウンド誘客を進めていく必要がある。外国人観光客は、コミュニケーションの問題や公共交通機関の使い方、カード類の利用環境などが困りごとの上位となる。対話型音声サービスや外国人観光客向けのデジタルサイネージの充実といったハード面、そしてボートレースの魅力発信といった、ソフト面の両方からインバウンド誘客を進めていきたい。

日立グループ参加者インタビュー

最終発表会終了後、日立グループの参加者計7名にインタビューを行いました。日立製作所からは3名、日立システムズから3名、そして日立ソリューションズから1名が参加。準備段階から最終発表会までの苦労と、発表会という大一番を終えた直後の心境を語って頂きました。

<1チーム>
日立システムズ 公共・社会営業統括本部 地域ソリューション推進部
齋藤 剛(さいとう つよし)

地域創生の取り組みにはさまざまなアプローチがあります。今回は行政と金融機関、そしてわれわれ日立が入って、組織を跨がって取り組みを進めてきましたが、発表した内容は決して発表のままで終わるのではなく、事業化をめざした検討を進めていくことが大事だと思います。私は自治体さま向けに新しいサービスやソリューションの提案を支援する業務に従事しているのですが、普段の業務ではあまり接点が無い、金融機関の方々が加わって一緒に取り組んでいく中で、当然のことではありますが、一つの課題であっても所属する業界によって見えているものが違うということを皆さんとのディスカッションで再認識できたことは本当に勉強になったと思います。また、地域協創事業を進めるにあたっては、やはり地域の方々との連携は非常に大事だと実感しました。私たちのチームでは、下関市のメンバーの方が地域で色々と活動している方々へのヒアリングを担当頂いたのですが、現場の方々が抱えている課題感とか、「こういったことがあれば新しいことができるよね」といった生の意見を知ることができました。山口FGのメンバーの方々に金融機関としての目線での提言を頂けたことも、大きかったと思っています。

日立システムズ ビジネスサービス事業部
田辺 弘樹(たなべ ひろき)

研修序盤は一般的な講義を聞き、グループワークを進めるような研修をイメージしていたのですが、
各地域で地域協創事業の推進や経営に携わっている方が講師に来られ、現場の生の声を聞く機会も設けていただきました。そして、地域協創というところでは、やはりどの地域にも熱い想いを持った方が必ずいらっしゃるのだと、改めて気付きを得ることができました。
最終発表会に当たっては地域での新規事業を提案することとなり、最終的に想像していた研修とはまったく異なる成果を得られたと感じています。また、自分たちが議論してきたことが単に提案で終わるのではなく、事業化に向けた道筋を見せられたことは、大きかったと感じています。
チーム検討を進める中で、アイデアは素晴らしくとも技術的には実現できないといった企画や、検証できる人や手段に欠けるなどで、ある程度の修正はあったものの、基本的には最初の段階で立てた方向性を最後まで一貫し、ブラッシュアップできたことが成果につながったと思っています。
齋藤さんも私も普段は関東在勤ですので、下関市に在住の山口FGと下関市の方々から情報を頂きながら、研修で下関市へ足を運ぶたびに市内を探索し、理解を深めていく活動も進めました。
研修以外の期間ではWeb会議でグループ内の意見を纏めていくというやり方で進めていたのですが、やはり昨今Web会議という手段が定着化したこともあり、関東にいながらも下関がより近くに感じられた気がします。今後も地域の方とコミュニケーションを進めながら地域協創に向けて取り組んでいきたいと強く感じました。

<2チーム>
日立製作所 中国支社 金融システム営業部
大道 健太(だいどう けんた)

私は普段、金融機関への営業を担当しているのですが、今回のように、地域創生という切り口で提案する経験は無かったので、個人的には難しさを感じたところはあったものの、新しいことに一歩足を踏み入れたことで、今後お客さまにどういった提案を行っていくべきか、というところに生かしていけるのではないかと思っています。本日の最終発表会では、私たちのチームでは蓋井島という、現時点では知名度が角島などの観光名所に及ばないものの、素晴らしい観光資源を持っている場所をアピールできましたが、それ以外のチームでもいくつもの地域が取り上げられた通り、下関周辺には魅力ある歴史や文化を持った観光資源を持った場所がいくつも存在します。
最終発表会に向けて、オンラインも含めるとかなりの回数の打ち合わせを設定しましたが、チームメンバー全員で意見を出し合い、時には発散しつつもしっかり集約しというところを重点的にやってきましたので、完成度の高い発表ができたのかなと思っています。そして何より、当事者である蓋井島の島民の方々の視線を取り込むことにも大事にしてきました。具体的には、島の人たちが何を望んでいて、何が誇りに思っているのか、私自身も蓋井島に計4回足を運んできましたが、それを踏まえてどう進めるかというところを実践してきました。こういったことは、協創活動だけでなく、普段の私たちの事業活動でも同じことが言えるのではないかと思います。そういったことを、今回の研修だけに留まらず、今後にも生かしていきたいです。最後に蓋井島の話に戻りますが、ぜひ、今回の発表会を機に蓋井島という隠された魅力がある島の存在を知っていただき、皆様にも足を運んでいただきたいです。

<3チーム>
日立製作所 金融第一システム事業部 全国金融システム本部
森本 祐介(もりもと ゆうすけ)

私はシステムエンジニアとして、金融関係のシステムを取り扱っていますが、今回の研修を通じて実感したことは、システムを作るにしても、地方創生に取り組むにしても、根底は必ず人の熱意があって、そこがスタートラインになる、ということです。また今後、システム構築に携わる上でも、システムができることで誰の助けになるのか、誰にとって良いものなのかというところを考える重要性を再認識できましたので、本当に良い経験ができました。そして今回、行政と金融機関の方々と関わってきましたが、それぞれ持っている強みや課題に対するアプローチの違いを感じました。行政の方々は普段から下関に関する問題意識を持っておりその知見も豊富ですし、金融機関の方々は本質を捉えるのが速く、鋭い意見を多数出されていました。
もう一つ、普段から「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」の考え方を持つようにというのは周囲からも言われていましたし、私自身も心掛けてはいたものの、果たしてそれは実践できたのかなと振り返るきっかけになりました。普段は山口FGのような金融機関がわれわれのお客さまなのですが、その向こうには地域で暮らす方々が居て、そういった人々を豊かにするために金融機関があり、そして私たちがいるのだなということを実感させられました。そういったマインドを持つことで、より良いシステムが提案できるのではないかと思っている次第です。

<4チーム>
日立製作所 中国支社 山口支店 金融システムグループ
西本 昇裕(にしもと のりひろ)

日立の人間としては、どうしてもソリューションありきで物事を考えてしまうところがあるのですが、金融機関や公共の方々は、いかに課題を解決していくかというところに重きを置いていることを改めて実感させられました。今回の反省点としては、日立としてそれらの課題にどう貢献していくか、同提案していくかが上手く押し出せなかったところだと感じています。課題があって、それを解決するために、われわれソリューションが初めて生きてくるところですので。あまり日立のソリューションが前面に出過ぎてしまうと、いわゆる商売色が強くなったしまうこともあり、その難しさにぶつかったことも一つの要因ではないかと考えています。
私たちのチームでは、川棚地区の活性化という観点で議論し、発表してきましたが、川棚のシンボルであるクスの巨木を守っていくという思いもチーム内では強く、それは根底の部分として尊重しつつ、違うところでも川棚の魅力を発信していくというところは、意見調整に苦労しつつも出来たのかなと思っています。今後、こういった機会があれば、ぜひ日立としてどうお客さまの改題解決に貢献していくという姿を押し出せるようにしたいです。

<5チーム>
日立システムズ 中国支社 第一営業部
丸山 大一郎(まるやま たいちろう)

私は普段は公共営業として、自治体さま向けに基幹システムの提案を行っている立場ではあるのですが、そこでは費用対効果であるとか他社との優位性といった話になるものの、今回は一旦そういった目線ではなく、行政や金融機関の方々と同じ目線に立って、課題解決に向けて考えることができたことは、大きな収穫だったと感じています。
また、山口FGの方々と関われたことで、プロジェクトを進めるうえでの資金の動かし方などを学べたこともまた、今回の研修を通じて学ぶことができました。他の山口FGや下関市のメンバーの方々もそうですが、普段の業務と並行しながら今回の研修準備を進めたこともあり、なかなかタイムマネジメントに苦労したというのが正直なところではありましたが、限られた時間と制約条件の中で、意見をしっかり出し合えたことは良かったなと思っています。

日立ソリューションズ西日本 営業統括本部 金融営業部
水木 祥子(みずき しょうこ)

私は普段、金融営業を担当しているのですが、今回のように行政、金融機関、そして日立というそれぞれ立ち位置が異なる方々と一緒になって検討を進められたことは、まさに貴重な経験をする機会を頂けたことだと思っています。チーム編成が変わったり、途中で講師の方から追加の宿題が出されるなど、半年間にわたる準備期間は正直なところ苦労も多かったです。
また、私たちのチームは「BOAT RACE下関」を呼び水に韓国からのインバウンド観光客をいかに呼び込むかという観点で発表を行いましたが、下関在住のチームメンバーの方が5名中2名という難しい条件であり、なかなか実際にボートレース場などの実地に足を運んで・・・といった地の利を活かしたやり方に限界があった中で、ベストは尽くせたかなと思っています。ようやく海外との往来も自由になったことで、コロナにより落ち込んでいたインバウンド需要も回復傾向にあり、観光だけでなくチーム1の発表でも言及されていた食の面も含めて魅力豊かな街ですので、コロナ前のような賑わいを取り戻していければ良いなと思っています。

金融ソリューションのサイトはこちら

This article is a sponsored article by
''.