CO2削減に向けた世界と日本の動向
地球温暖化への対策が大きな社会課題となる中、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、企業に求められる対策の必要性も益々高まってきています。そして各国は世界規模で温室効果ガス削減の取り組みにコミットしており、目標を定め課題解決に向け動き出しています。
こうした中で日本でも国の目標が示され、各企業でカーボンニュートラルの取り組みが急務です。
特に、様々な企業が、カーボンニュートラルの取り組みを加速させなければならない動向として、以下の4点があげられます。
(1)EUの規制(CBAM、ESPRなど)
欧州に輸出している製造業では、欧州エコデザイン規則(ESPR)、EU炭素国境調整措置(CBAM)により、企業は製品単位のCO2排出量を正確に把握しないと欧州市場への輸出・販売が制限されたり、過大な炭素コスト負担を余儀なくされる恐れがあります。また、単にカーボンフットプリントの開示だけでなく、値の低減をはかっていかないと、競争力にも影響が出てきてしまいます。
2023年から2028年あたりの施行を踏まえ、今現在はその重要な準備期間であるといえます。
CBAM(EU炭素国境調整措置):
EU域外国から輸入される対象製品に対して炭素価格の支払いを義務付ける措置です。2024年から順次適用が開始され、2026年本格適用が開始となります。
ESPR(欧州エコデザイン規則):
持続可能な製品に対するエコデザイン要件設定のための枠組みを確立する規則で、EU域内のほぼ全ての製品は環境情報を記録が必要となります。2024年から順次適用開始となります。
(2)社会全体からのカーボンニュートラルへの取り組み要求
カーボンニュートラルについては、さまざまなステークホルダーからの、取り組みの要求や必要性が生まれてきています。また、排出量に関する算定や、報告が必要ですが、排出情報の取得や管理、報告資料作成は企業にとっての大きな負担となっています。
要求の主なものとしては、
■「地域・自治体からの要求」
カーボンニュートラル実現のため、地域の脱炭素化を積極的に推進することが義務化されてきています。
■「サプライチェーンの上位企業からの要求」
カーボンニュートラルへの取り組みが企業としての競争力に直結します。
■「投資家・市場からの要求」
カーボンニュートラルへの取り組みが企業イメージやブランド価値にも影響します。
また、国、関連機関、投資家などに向けた、排出量の算定、報告、公表制度等としては、以下のようなものがあります。
■「地球温暖化対策推進法(温対法)」改正 特定排出者に対し、温室効果ガスの排出量を算定し国への報告を義務化(2005年)
■「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」改正 非化石エネルギーも含めたすべてのエネルギーの使用の合理化、非化石エネルギーへの転換を求め、電気の需要の最適化を促すもの(2023年)
(機関投資家が重要指標として参照するSDGs/ TCFD/CDPなどに関連する各種報告の実施)
■東証プライム上場企業へのCO2排出量開示実質義務化(2022年)
■年度末の有価証券報告書におけるCO2排出量の積極的開示要望(金融庁) (2023年度以降)
(3)GX投資、補助金制度など支援策
このように、企業活動に対しての負担が増大する一方、国、自治体などからの支援も行われるようになりました。
例えば2023年から10年間で官民あわせて必要となる150兆円のGX投資実現に向けて、「GX経済移行債」を創設し20兆円規模の先行投資支援が実行される、などがあります。
(4)CO2排出量の責任範囲~サプライチェーン全体の排出量の把握
カーボンニュートラルをめざす上で「サプライチェーン排出量」という概念があります。大きくScope1,2,3と分類されていますが、CO2排出量の責任範囲は、自社の製造範囲のみでなくScope3を含めたサプライチェーン全体の排出量に拡大しており、対応が必要です。しかしながら、Scope1,2に比べ、難易度が高く、課題と言えます。
カーボンニュートラルに向けた3つのステップ
経産省ではカーボンニュートラル達成へのステップを、
STEP1:「CO2排出量の見える化」
STEP2:「脱炭素化手法の検討」
STEP3:「脱炭素化施策の導入・実行」の3段階で定義しており、日立もこのステップ段階に沿って、ご支援をいたします。
まずは、はじめに取り組むべき「CO2排出量の見える化」についてご紹介します。
STEP1:「CO2排出量の見える化」
「CO2排出量の見える化」に対する取組みのアプローチとして、次の二点があげられると考えます。
第一に、国、関連機関、投資家などに向けた、「報告・開示制度等に係るCO2見える化対応」があげられます。この課題には、「企業全体のCO2排出量の見える化」を行う必要があり、見える化作業の効率化、データの一元管理や、分析などを具体的に推進します。
第二に、「海外規制等に係る見える化対応・CO2削減に係る意思決定の精度向上」。
この課題には、「製品単位の見える化の精度向上」を図っていくことで、対応が前進します。
日立が提案するCO2排出量の「見える化」の進め方とソリューション
日立は、前記のアプローチでお客さまの抱える課題解決をご支援します。
CO2排出量の見える化とカーボンニュートラル達成への具体的な道筋を立てる
企業・拠点単位の見える化 EcoAssist-Enterprise
さまざまな環境情報を多拠点から収集し、企業全体のCO2排出量を見える化。
環境情報をデータベースで一元管理し、データの迅速な分析・改善、情報開示をご支援します。
【ニュースリリース】環境情報管理「EcoAssidt-EnterPrise」の「CO2算定支援サービス」
本サービスは、コンサルティングとシステム導入のシームレスなワンストップサービスで、日立製作所と日立コンサルティング連携により提供するものです。このサービスでは、(1)CO2削減目標設定 (2)システムによる環境情報の集約、管理、レポーティング支援 (3)気候変動イニシアティブ取得支援 などの支援を行います。
▶関連情報
環境情報管理 EcoAssist-Enterprise
脱炭素化・再生可能エネルギー導入のためのコンサルティング
製品単位の見える化の精度向上しEU規制に対応する
製品単位の見える化 EcoAssist-Pro/ LCA
製品単位の環境負荷物質を定量分析し、CO2排出量などを可視化。
BOM(Bill Of Material)をベースとした積み上げ方式での算定により、精緻な評価を実現します。
加えて、下記を連携することで、排出量をより効率的に、精密に把握することが可能になります。
Scope3を含めたサプライチェーン全体の排出量の把握
企業間取引サービス TWX-21
企業間取引サービス TWX-21を利用するサプライヤーとバイヤー間の取引の実績データを活用し、Scope3(上流)の品目別CO2排出量の自動算定をめざします。
この機能によりサプライヤーから投入されたデータは、発注者側が利用する「EcoAssist-Pro/LCA」において、Scope3のCA1のデータとして反映されます。
そのデータをBOMと掛け合わせることで、製品単位の排出量算定精度を一定レベルまで高めることができます。
製造工程における様々なデータ(電力データなど)を収集
現場デジタルツイン Hitachi Intelligent Platform (HIPF)
Hitachi Intelligent Platformは、現場データを含め、あらゆるデータの利活用を目的としたソリューションです。このソリューションを活用し、EMS(energy management system)やMES(Manufacturing Execution System)を通じ、製造ラインで消費される電力データなどを取得し、CO2に換算した上で、実績値としてEcoAssist-Pro/LCAに取り込むことが可能になります。
つまり理論値で算出されていた数値を、リアルな実績値に置き換えることで、更に数値精度を上げることが可能になります。
更にこのHitachi Intelligent Platformと、EcoAssist-Pro/LCAを連携することで、EcoAssist-Pro/LCAが算出した製品のCO2排出量を、生産計画や設計情報にフィードバックし、現場の改善検討に環境データを考慮可能になります。