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日立製作所(以下、日立)がデジタルの力でめざす未来、それは人々の快適で豊かな暮らしと、持続可能な地球環境の両立です。そんな日立のデジタルの取り組みを紹介する本企画 "Light Up! - Digital for all."
第一回は、高齢社会におけるさまざまな課題を解決し、シニアの方だけでなく、支えるご家族も含めたすべての人々が健康的でいきいきと暮らせる社会をめざす取り組み「社会参加のすゝめ」について、実際にプロジェクトに取り組む日立の小林薫樹さんに話を聞きました。

高齢社会の課題解決の糸口となる、シニアの社会参加と介護リスクの関係

シニアの社会参加が活発であるほど、要介護認定の割合が低い

ー 小林さんが取り組んでいるプロジェクト「社会参加のすゝめ」について教えていただけますでしょうか。

みなさんも良く耳にする話だと思いますが、日本では高齢化が進んでおり、2022年の時点で高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口割合)は約30%でした。今後、高齢化率は35%(2040年)、40%(2070年)と上昇しつづける傾向にあります。*¹ それに伴い、2022年度は11兆円だった介護費用も2040年には約25兆円に倍増すると推計されており、持続可能な福祉の実現という大きな社会課題が存在します。*² 
こうした社会課題に対し、日立として少しでも課題解決に貢献できないかと考えていたときに着目したのが「老年学」や「社会疫学」といった研究分野です。例えば、「活動性の高いシニアはそうでないシニアよりも要介護状態になりにくい」、「退職後もコミュニティに所属することが健康長寿の秘訣」といった話を聞いたことはないでしょうか。誰もがなんとなくイメージできるのではないかと思いますが、近年の研究ではシニアの状態や特性ごとに「何%介護状態になりにくいのか」、「将来使う介護費用がいくら低いのか」といった定量的な検討ができるようになっています。非常に面白いと思いましたし、健やかに歳を重ねていくにあたり「社会参加」がいかに重要かということがよく分かりました。ここでは「社会参加」とは生活の中で「外出する」「地域や趣味の集まりに参加する」「友人に会う」など、他者と交流する行動の総称としています。

このプロジェクトを始めたときの想いとしては、「これらの面白い研究を広く知って貰いたい」、「自分の親も含めて皆に社会参加を増やして元気な老後を過ごしてほしい」、「全てのシニアが社会参加を増やせるような仕組みを作りたい」というものでした。
そこで私たちは、シニアが社会参加の促進を意識しながら健やかに生活できる社会をめざして、自分の社会参加量の認識、社会参加促進に対する意識変容、さらに行動変容を支援する仕組みづくりに着手しました。最初に取り組んだのが、自分の社会参加量を自動的に計測して可視化する無料のスマートフォンアプリ「社会参加のすゝめ」です。

*1.出典:国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
*2.出典:厚生労働省「令和6年版 厚生労働白書」

画像: 「社会参加のすゝめ」のプロジェクトを推進している、日立製作所の小林薫樹さん

「社会参加のすゝめ」のプロジェクトを推進している、日立製作所の小林薫樹さん

スマートフォンアプリ「社会参加のすゝめ」の機能とは

アプリを利用するシニアは、そうでないシニアと比べて、社会参加量が増える。

ー「社会参加のすゝめ」のアプリには、具体的にはどのような機能があるのでしょうか?

「社会参加のすゝめ」は、スマートフォンのGPS機能を用いて、利用者の外出行動や、どの場所で時間を過ごしていたか、という滞在行動を計測することで、疑似的に社会参加状態を測定することができるアプリです。

※Google Playでダウンロードされる方は、こちらのリンクからダウンロードください。

このアプリは、計測した社会参加のデータから、“社会参加の活発度”を「おでかけの駆け出し」から「おでかけの達人」までの4つのランクで提示します。自身の現状や外出動向を知る機会になるのはもちろんのこと、ランクを上げたり、維持したりするためには社会参加が必要なので、日々の外出や人との交流へのモチベーションにもつながります。
さらに、アプリ内のコラムでは、社会参加をすることが自身にとってどのようなプラスの効果をもたらすかについて紹介するなど、アプリの利用者へ自主的な社会参加を促す仕組みとなっています。
このアプリの効果については、国際論文誌や国内の学会において「60歳以上のシニアで、本アプリを用いて社会参加の効果を意識しながら生活する方は、そうでない方と比較して社会参加量が増える」ことが発表されています。

画像: スマートフォンアプリ「社会参加のすゝめ」の機能や利用イメージ

スマートフォンアプリ「社会参加のすゝめ」の機能や利用イメージ

さらに、シニアのご家族の方から「両親と離れて暮らしているので、日々の行動を見守れる仕組みがあると嬉しい」と多数のご要望をいただきました。そこで新たに「見守り機能」を追加しました。シニアの方々だけでなく、ご家族など周りの方々にも本アプリを使っていただくことで、日々の社会参加の状況をお互いに共有できるようにしました。
例えば「離れて暮らす両親が、先月までは元気に活動していたけど、今月に入ってから活動が少ない」といった際に、サッと電話をかけて体調について確認できると、すごく安心ですよね。お互いの行動を共有していることで、「今週はよくお出かけしていたね」といった声掛けのきっかけになり、家族間のコミュニケーションが活発になったという声もいただいています。
シニアの方からは「いつ外出していて、どこに滞在しているかを細かく知られるのは恥ずかしい」というお声をいただくこともありますが、このアプリでは、具体的な外出先や滞在先は共有されず、あくまで「社会参加の度合い」だけが共有されるので、安心してご利用いただけるようになっています。

画像: アプリを利用するシニアは、そうでないシニアと比べて、社会参加量が増える。

企業や団体と「社会参加のすゝめ」のコラボレーションで生まれる新たな価値

企業との連携による介護離職問題の解決をめざした取り組み

- 他にも「社会参加のすゝめ」を活用した取り組みがあれば教えてください。

「社会参加のすゝめ」は、さまざまな企業や団体とのコラボレーションも行っています。近年では、高齢化が進むことで、介護離職が増えているという問題がありますよね。みなさんの周りにも、介護離職された方や、当事者の方もいらっしゃるかもしれません。ご家族が介護状態に移行した際、従業員の業務上のパフォーマンスが低下する(ビジネスケアラー化)という課題も存在しています。さまざまな規模・業種の企業で人事をご担当されている方や、実際に介護離職を経験された方を対象としたヒアリングを重ねた結果、介護離職の原因として「将来、自分の周りの人間が要介護状態になるかもしれない」という当事者意識を持っていないことが挙げられました。そのため、いざ、ご家族や周りの方が要介護状態になった際に慌ててしまい、「とりあえず仕事を辞めて対応するしかない」という判断になってしまう方が多いと分かりました。

そこで、ご家族の社会参加の量が減っているなど、要介護状態に移行する可能性に気づきやすくするため、従業員とご家族の間の見守りをアプリでご支援できないか、と考えています。これにより、従業員は介護に移行するまでに企業が提供する制度を調べたり、利用申請ができるなど、準備の時間が取れるようになり、結果として介護離職率を下げることができる可能性があります。企業にとって、従業員のウェルビーイングや生産性向上、キャリア継続による人材確保などは重要な経営課題ですが、その中で介護離職の問題はなかなか顕在化しません。政府も、企業経営者に対し、従業員への「仕事と介護の両立支援」を求めています。介護離職の問題は、今後ぜひ「社会参加のすゝめ」で解決していきたいと考えています。

UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)との実証実験

もう一つ例を挙げると、独立行政法人都市再生機構(以降、UR都市機構)さまと日立で「社会参加のすゝめ」を活用したプロジェクトを行っています。UR都市機構さまは、高齢者世帯、子育て世代などの多様な世代が生き生きと暮らし続けられる住まい・まちづくり(ミクストコミュニティ)の実現をめざしており、「民間連携事業の拡大・高度化に向けた準備会」というプロジェクトを高津団地(千葉県八千代市)にて行っています。
このプロジェクトでは、UR都市機構さまが住民のみなさまを対象に「健康で楽しい暮らし」を実現するためのさまざまな施策を実施しています。住民のみなさまには「社会参加のすゝめ」をダウンロードしていただいており、日立は「施策の参加者と非参加者」や「施策の実施前後」のアプリデータを分析することで、今後のUR都市機構さまの施策立案等をご支援します。
本プロジェクトのように、実施する施策がどの程度「健康で楽しい暮らし」につながっているかどうか、そのような難しい評価を可能にするところが、「社会参加のすゝめ」のユニークなポイントだと思います。
日立がスマホアプリ「社会参加のすゝめ」を活用し、UR都市機構による住民向け施策の効果検証を支援:2024年10月28日

画像: 「社会参加のすゝめ」を活用したプロジェクトのイメージ

「社会参加のすゝめ」を活用したプロジェクトのイメージ

Digital for all. -日立がデジタルの力でめざす未来

ー 日立は"Digital for all."を掲げ、デジタルの力で人々の快適で豊かな暮らしと、持続可能な地球環境を両立させることをめざしています。小林さんは、デジタルの力でどんな未来をめざしていますか?

私は「社会参加のすゝめ」を「シニアの方みんなが当たり前に持っている定番アプリ」にすることをめざしています。ご自身の「社会参加度」を意識しながら生活することで、生き生きと健康に過ごせる時間を増やすことができますし、アプリデータを時系列に沿って可視化することで、体調や習慣のちょっとした変化に気付くことができるかもしれません。
また、アプリを多くのシニアの方に使ってもらうことで、シニアの周りの方にも役立てていただけると思っています。介護予防、見守りなどの機能は、ご家族や医療・介護現場の方々だけでなく社会保障を支える現役世代の働き手にとっても、今後ますます重要になってきます。
その他にも、GPSのデータを分析していると「シニアが避ける道」や「井戸端会議が起きる場所」などが見えてくることもあり、「シニアがもっと活発に暮らせるまちづくり」に生かせるかもしれません。
これらはほんの一例であり、「社会参加のすゝめ」は、まだまだ多くの可能性を秘めていると思っています。これを読んでいる方で、少しでも「社会参加のすゝめ」が気になった方は、ご両親や周りの方と一緒にアプリをダウンロードしていただけるとありがたいです。多くの方にアプリを使っていただくことで、より多くの課題解決につながります。是非、日立と一緒により良い社会を作っていきましょう!

画像: Digital for all. -日立がデジタルの力でめざす未来

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