今年のテックトレンドを占う世界最大級のテクノロジーイベント「CES」
CES2025は、世界中のテクノロジー企業が最新の技術や製品を披露する場として注目されています。今年も多くの企業が参加し、AI、モビリティ、デジタルヘルスなどさまざまな分野における技術・製品が紹介されました。各企業の展示やKeynoteを通じて分かる、今年のデジタル・AIのトレンドは・・・?グローバルのテックトレンドの目利き力を持ち、日立のGenAIアンバサダーも務める日立ソリューションズの北林さんにお話しいただきました!
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グローバルのテックトレンドの目利き力をもつGenAIアンバサダー
―まずは北林さんのこれまでのキャリアと現在の業務を教えてください。
新卒で現日立ソリューションズに入社し、JavaエンジニアとしてECサイト開発から始まり、米国業務研修後、大手通信事業者のシステム再構築プロジェクトなどに参加していました。2020年から3年半の間シリコンバレーに駐在し、スタートアップ企業とのパートナーシップなどのリエゾン活動を行っていました。現在は日本に戻り、クラウド・インフラに関するソリューションを担当する本部で新規事業開発や事業企画を担当しています。
また、これまでも日立ソリューションズの中でAIトランスフォーメーション推進本部のシニアAIビジネスストラテジストとして、社内の生成AI活用の推進や、生成AIを活用したソリューション事業の推進を担っていましたが、2025年1月から日立のGenAIアンバサダーに選出され、生成AIに関する社内外の情報発信活動により力を入れています。
メインの業務であるクラウドやインフラに関するソリューションの事業を進めるうえでも、今は生成AIをはじめAIが不可欠となっているので、それぞれの業務を切り離さずにセットで考えています。
―さまざまな業務に携わっていますが、一貫して“これまでにない新たな事業の推進”に関わっているんですね。そんな北林さんのCES2025参加の目的を教えてください。
第1の目的はグローバルな技術トレンドをチェックすること。AIに限らず、さまざまな技術を実際に見て体感して、トレンドを考察しています。2つ目は新たな技術要素の発掘です。シリコンバレー駐在中も我々とシナジーを創出できるスタートアップ企業を発掘し、パートナーシップを組むというリエゾン活動を推進していましたが、CESは比較的若いスタートアップ企業も多いので、まずは我々の新規事業に組み込める技術要素を見つけることをめざしています。そして最後は、ネットワーキングです。CESは日本を含め各国から多くの人が集まります。ベンチャーキャピタルや、有望なスタートアップ企業、現地でビジネスをされている方や日本の大手企業の方など、さまざまな方とのネットワーキングの場としても、非常に重要だと考えています。
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AIの価値がより具体化されるフェーズに。キーワードは「AIエージェント」と「フィジカルAI」本サービスの特徴
―今回のCESを通じてどのようなAIトレンドを感じましたか?
CESには2020年の駐在中から参加をはじめ、今年で4回目の参加でした。昨年から「生成AI」は技術ワードとして注目されていましたがコンセプトの紹介にとどまっていたのに対し、今年は「AIエージェント」や「フィジカルAI」といった、より具体的な形で展示されていたことが印象的でした。AIが自律的に行動し、特定のタスクを達成できる「AIエージェント」、さらにAIとロボットなどのハードを組み合わせて実世界で自律的に判断、行動をする「フィジカルAI」。これらが今後、人の業務の効率化や自動化を実現していく、これがまさに次の進化のフェーズです。また、CESで開催されたKeynoteでは、AIが従来のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を超えて、より直感的で効率的な新しいユーザーインターフェースとなる可能性も示されていました。
別の視点でいうと、消費者体験をパーソナライズするためにAIを活用する、これも一つのトレンドですね。多くの企業が展示やKeynoteを通して紹介していました。消費者が求める内容や好みの内容を自動的にAIがつくってくれる、そんな未来が近づいていると感じました。
―これまでと今年のCESを比較して、他に感じたトレンドはありますか?
韓国企業の存在感が年々増していると感じました。出展企業数も多かったと思います。一方、日本企業はこれまで家電分野での出展がメインでしたが、モビリティやエンタメ分野などでも目立ってきましたね。
また、サステナビリティに関して言うと、2年前はこれにいち早く取り組んでいること自体がアピールポイントだったのに対し、今はもうどの企業も当たり前に展示やKeynoteに組み込んでいました。サステナビリティへの取り組みが世界的に浸透していることが伺えました。
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―今年のCESで得た発見や学びを今後どのように業務に生かしていく予定ですか?
CES2025を通じてAIの進化の方向性が見えてきました。これを今後の事業開発の中でも意識して進めていきたいです。また、これは自分だけではなく、組織に対してもフィードバックを行い、最新の技術トレンドを踏まえた事業開発をめざしていきます。
特に、どの事業においてもエンドユーザーの体験をパーソナライズしていくことがより一層求められると思いますが、そこに尖ったAI技術を見つけて上手く組み入れていきたいです。
プロフィール

北林 拓丈
日立ソリューションズ AIトランスフォーメーション推進本部 AX戦略部 シニアAIビジネスストラテジスト 兼 クラウドソリューション本部 企画部 担当部長
新卒で現日立ソリューションズに入社し、JavaエンジニアとしてECサイト開発に従事。米国業務研修後、大手通信事業者のシステム再構築プロジェクトなどに参加。2020年からシリコンバレーに駐在し、スタートアップ連携に従事しつつ、生成AIに関心を持つ。2023年7月に帰任後は主に事業企画・開発に従事し、2024年4月からAIトランスフォーメーション推進本部と兼務し、生成AIエバンジェリストとして生成AIに関する社内外への情報発信や戦略策定を行っている。