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資源の枯渇や廃棄物の増加といった環境課題が懸念され、サーキュラーエコノミー(資源循環型経済)の取り組みが加速している。サーキュラーエコノミーは、製品の大量生産や大量消費、大量廃棄を行うリニアエコノミー(直線型経済)から脱却して、廃棄物や汚染を排除しつつ高い価値を持った状態で資源を循環させる取り組みだ。

産業界でも、カーボンニュートラルを実現するために企業が協力してサーキュラーエコノミーを構築することが重要になってきた。廃棄物を削減するにはリユースやリサイクルが不可欠であり、製品メーカーや素材メーカー、部品メーカー、リサイクラーといったステークホルダーの協創が求められる。

そんな中、プラスチックをはじめとした再生材の利用促進を支援する「再生材マーケットプレイス」の開発を進めているのが日立製作所(以下、日立)と日立ハイテクだ。すでにプロトタイプの実証を終えて2025年度の事業化をめざす両社に、サーキュラーエコノミーの現状と課題、ステークホルダーが協創する価値を聞いた。

DPPの議論が活発化 政府と企業、消費者「三者連携の重要性」

再生材マーケットプレイス事業の中核を担うのは、日立の森田秀和氏だ。社内で事業化を提案した“生みの親”でもある同氏は、企業が再生材を利用することの重要性をこう話す。

画像: 森田秀和氏(日立製作所 公共システム事業部 公共基盤ソリューション本部 デジタルソリューション推進部 部長)

森田秀和氏(日立製作所 公共システム事業部 公共基盤ソリューション本部 デジタルソリューション推進部 部長)

「EU(欧州連合)では、サーキュラーエコノミーを実現するためにデジタル製品パスポート(以下、DPP)を導入する動きが加速しています。DPPは、持続可能性を追求するために製品に電子データを付加してトレーサビリティーを確保する仕組みです。電子データには、再生材の使用率を示す項目を追加することが議論されています。そうなると今後、製品メーカーは自社製品の再生材使用率が何パーセントなのかを示す必要が出てきます。企業がGX(グリーントランスフォーメーション)を推進する上で、再生材をどう扱うかが今後のカギになることは間違いありません」

DPPはEUで先行しているが、日本でも制定に向けた検討が進められている。森田氏と共に再生材マーケットプレイス事業を先導する日立ハイテクの坂本茂樹氏は、日本企業の現状をこう述べる。

「日本は現在、政府と企業が協力して制定の準備をしている段階です。情報開示の内容や範囲についてはまだ議論中であり、ここがクリアになることでDPPの対応が一気に進むと考えられます」

DPPは、製造業だけでなく幅広い業界に関わる。森田氏によると「金融業では融資や投資の判断材料に利用したり、金融商品の開発につなげたりすることも検討され始めている」という。

注目集まるも利用は進まない再生材 なぜ?

日本でDPPを広げるには課題もある。「製品に電子的なデータをどう埋め込むか」「再生材使用率を正しく測定するにはどうすればいいか」などが代表例だ。

企業としては収益やコストを考慮する必要もある。森田氏は「DPP対応にかかったコストを価格に上乗せできるのかというと、そう単純ではありません。環境価値が高い製品の購入が一般化すれば可能かもしれませんが、消費者や企業が相対的に安さを重視し続けるなら、DPPや再生材への対応が市場競争力に影響する可能性もあります」と説く。

これらの課題を一社単独で解決するのは難しい。環境配慮型製品の普及には政府、企業、消費者が連携した環境づくりが必要だ。

「DPPには、政府と企業、消費者が一体的に取り組みを回していける制度の設計が求められます。政府がDPPのガイドラインを確立して、企業がそれを順守して情報開示を実施する。そして消費者が理解を示し、購入する。この流れを協力して生み出すことがサーキュラーエコノミーの実現につながります」(坂本氏)

だが、そうした制度設計や環境づくり以前に、再生材の利用を阻む現実的な問題が横たわっているという。一つは「供給不足」の問題だ。

「再生材の取り扱いには専門知識や多くの手間が必要であり、再生材を特定の企業に合わせて個別対応で作ることが多いため製造が追い付いていません。再生材を作るための廃材が海外に流出するケースも増えています」(森田氏)

画像: 坂本茂樹氏(日立ハイテク サプライチェーンプラットフォーム統括本部 SCレジリエンス推進本部 マテリアルソリューション部 部長)

坂本茂樹氏(日立ハイテク サプライチェーンプラットフォーム統括本部 SCレジリエンス推進本部 マテリアルソリューション部 部長)

 「品質の安定化」も再生材供給のハードルになっている。

「廃材で作る再生材は、バージン材(新品の素材)に比べて品質が安定しません。不純物の混入や変色が原因で『製品材料として適さない』と判断されるケースもあります。例えば自動車業界はエンジンまわりなど高仕様部品の要求水準が高く、供給できるメーカーも限られます。品質と供給量が安定しない再生材は『使いたくても使えない』状況です」(坂本氏)

供給不足については、ステークホルダー間のニーズのミスマッチも要因になっている。通常、再生材は回収業者が廃材を回収してリサイクラーが分別や洗浄、成形を行い、素材メーカーが製作する。買い手にとっては、リサイクラーの探索・選定や再生材の品質を確認するための情報が必要だが、そうした情報を集めにくいのだという。

「当社も顧客企業から『こんな仕様の再生材が欲しい』といった相談を受けていますが、手配には苦労しています。メーカーやリサイクラーに1件1件問い合わせをしなければなりませんし、希望通りの再生材を見つけられても、製品に利用できるかどうか評価する必要があり、多くの時間と工数がかかります。売り手も、買い手が見つからないため廃材を再生材として利用できず、最終的には廃棄してしまうケースが増えています」(坂本氏)

これらは日立や日立ハイテク自身が再生材を扱っているからこそ痛感してきた課題であり、その経験が再生材マーケットプレイスの発案につながっている。森田氏は「企業間の取引を電子化して再生材マーケットプレイスに集約すれば、再生材の利用の効率性と利便性は大幅に向上します」と力説する。

「サーキュラーエコノミーを実現するための社会課題は、一社単独では解決できません。再生材についても回収業者やリサイクラー、素材メーカー、製品メーカー、商社といった全ステークホルダーが同じ方向を向くことが重要です。今はEUに比べて取り組みが遅れているかもしれませんが、日本は企業間の連携次第で世界でも強い競争力を持つ可能性があります。その強みを発揮する第一歩となるのが、ステークホルダーをつないで協創を促す再生材マーケットプレイスだと考えています」

マッチングだけではない、再生材マーケットプレイスの価値とは

再生材マーケットプレイスでは、「再生材を原材料として購入したい買い手」と、「廃材を再生材として循環させたい売り手」をオンラインでマッチングするサービスなどを提供する予定だ。日立が持つマテリアルズインフォマティクス(以下、MI)や生成AIなどの先進デジタル技術の知見、日立ハイテクが商社として長年培ってきたプラスチック材料に関する知見など、両社の強みを随所に生かしている。

再生材マーケットプレイスのイメージ図

提供を予定している機能

代表的な機能は3つ。1つ目は簡単に必要な再生材を見つけることができる初心者向けのマッチング機能だ。再生材の活用に関する日立の知見や生成AIを用いて、質疑対応形式でユーザーが求める仕様や用途を明確化し、要求仕様を満たす再生材をレコメンドする。

2つ目は、MIソリューションを利用したプロフェッショナル向けのマッチング機能だ。再生材と添加物、バージン材の配合レシピを提案してもらうことで要求特性を満たせるかどうかを確認できる「MIレコメンド」と、配合レシピで生まれる物性の予測モデルを設計できる「MI物性シミュレーション」を提供する。

マッチング機能には、日立がメーカーとして独自に収集してきた材料データベースや「材料開発ソリューション」※を提供する中で得た知見を生かしている。「日立は『各社各様の材料開発の課題』『それを解決するにはどういう予測モデルを作るべきか』に対する知見とノウハウを持っています。再生材マーケットプレイスには、日立だから得られたソリューションをふんだんに生かす予定です」(森田氏)

※MIのデータ収集、蓄積、活用を一貫して支援するサービス(詳細はこちら)。

3つ目は、センシングや計測、分析技術による再生材の成形サポートや品質管理機能だ。これらは、再生材の品質に不安を感じた買い手の要望に応じて分析を行う「受託分析サービス」として提供する。森田氏は「日立ハイテクはRoHS(ローズ:特定有害物質使用制限指令)で制限されている環境規制物質(鉛など)の含有評価が可能な計測や分析装置を有しており、再生材の品質管理における一つの強みになると考えています」と話す。

マッチング機能は「再生材の幅広い活用を促すため、今後も生成AIを取り入れてより手軽に的確なアドバイスを提供できるように強化する」(森田氏)予定だ。再生材マーケットプレイス上の取引の流れは主に「材料情報の確認→サンプル評価→実販売」を想定しており、当面は日立ハイテクが売り手と買い手の仲介役になる予定だが将来的には「売り手と買い手の直接取引も可能にしたい」(坂本氏)という。

「多くの参加企業を募集」 協創で育てる再生材マーケットプレイス

再生材の探索だけではなく「品質管理」「製品への適用可能性」まで支援する再生材マーケットプレイス。まずはプラスチックから取り扱いを始めるが、参加組織の拡大とともにアルミや希少金属などにも対応する。

再生材の利用課題を解決するには、参加する企業が増えることが重要だ。再生材マーケットプレイスへの参加も現時点では基準を設けずオープンとしているが、買い手が積極的に再生材を探しに訪れて安心して購入するためには売り手の十分な情報開示が欠かせない。とはいえ「情報開示は強制力ではなく、市場原理に基づいて促進されるべきだ」という考えから「評価システム」を導入する予定だという。

森田氏は、「2024年のニュースリリース後も再生材マーケットプレイスの開発や機能アップデートを続けています。日々、多数の問い合わせをいただいており、市場からの期待をひしひしと感じています」とまとめる。

「将来的にはグローバル展開を視野に入れており、日本発のデジタルサービスとして世界中の再生材が集まるプラットフォームをめざします。その上で、まずは日本で多様な企業にプレイヤーとして参加してもらいたいですね。売り手となるリサイクラーは中小企業が多いので、金融機関を運営パートナーに迎えて設備投資のための融資制度を共に設計することなども検討しています。再生材マーケットプレイスへの参加に興味のある方からのお問い合わせを、お待ちしています」

「私が日々感じているのは、生成AI活用を推進する上で重要なのは『技術だけではない』ということです。なぜ生成AIが必要なのか、どういうメリットがあるのか、生成AIを活用することでどんな世界が広がっているのか。現場の感情に寄り添った丁寧な価値共有によって、生成AIを活用できる組織の土壌を耕すこと。ただソリューションを提供するだけではなく、イチから伴走支援を行うこと。それがGenAIアンバサダーの役割であり真価だと考えています。日立には多様な分野のGenAIアンバサダーが多数在籍しています。活用で迷ったときにはぜひ最初に思い出していただきたいですね」

再生材マーケットプレイス お問い合わせ先
日立ハイテク サプライチェーンプラットフォーム統括本部 SCレジリエンス推進本部 マテリアルソリューション部
environ-info.ml@hitachi-hightech.com

日立製作所 公共システム営業統括本部 カスタマ・リレーションズセンタ
お問い合わせフォームはこちら

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ITmedia 2025年2月27日掲載記事より転載
本記事はアイティメディア株式会社より許諾を得て掲載しています
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