日立製作所と、世界有数の資産運用会社であるBrookfieldグループの日本法人である Brookfield Japan(以下、ブルックフィールド)、およびコモディティトレーディングに強みを持つ Hartree Partners Singapore(以下、ハートリー)は、日本国内のデジタルインフラ領域における共同検討のため、7月17日に覚書(MoU)を締結した。
本覚書のもと、三社は日本国内において、系統の安定化を支える系統用蓄電所や、大量の電力を必要とする大規模デジタルインフラの開発に必要な資金需要に応えるファンディングスキームの検討を進めていく。この検討においては、日立の有するエネルギー・デジタル分野のインフラ設計・構築・運用に関する総合的なエンジニアリング力やデジタルイノベーションを加速する Lumada*1 の知見と、Brookfield グループがデータセンターをはじめとするデジタルインフラアセットなど、世界中で培ってきた大規模インフラへの投資とファンド運営の豊富な実績、ハートリーが強みとする電力、LNG、カーボンなどのエネルギー分野における再生可能プロジェクト開発およびコモディティトレーディングの実績を結集する。今後、そのファンディングスキームを活用した幅広いパートナーとのエコシステムを構築することで、脱炭素化技術とデジタル技術の活用を促進し、持続的な経済成長を可能にする環境配慮型のデジタルインフラの実現をめざす。
※ 画像は環境配慮型のデジタルインフラのイメージ
*1: 顧客のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。
背景について
脱炭素社会の実現に向けては、再生可能エネルギーの出力変動に対応し、電力の需給バランスを安定させる仕組みが不可欠である。また、近年、生成AIやクラウドサービスの急速な普及を背景に、データセンターや半導体工場などの電力需要が世界的に高まっており*2、電力需給のひっ迫も懸念されている。これらの観点から、電力インフラの安定化に加え、データセンターのような大規模電力需要家に対して、グリーンかつ安定した電力を持続的に供給することが重要課題となっている。その解決手段として、系統用・産業用蓄電池やオンサイト電源のニーズが高まる中、先進的な技術を活用したデジタルインフラの整備には莫大な初期投資と戦略的な資金調達が必要であり、それを支えるファンディングスキームが求められている。
*2: 出典: International Energy Agency (IEA). (2025). Energy and AI World Energy Outlook Special Report.
MoU にもとづく合意内容および今後の展望
三社は、日本における「次世代グリーン・デジタルインフラの開発」という共通ビジョンを実現するために必要な多額の資金需要に応じるための最適なファンディングスキームについて共同で検討する。そして、三社は日本市場の事業を対象としたジョイントベンチャーの実現可能性についても検討していく。
今後、これらにより、エネルギーインフラ事業者やデータセンター開発・運用事業者、インフラ関連機器メーカーなど多様なパートナーを呼び込み、ともに環境配慮型のデジタルインフラを構築することで、サステナブルな社会の実現に貢献していく。
各社からのメッセージ
株式会社日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニットCEO 細矢 良智
現在、日立は、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に向け、日立グループの力を結集するとともに多様なパートナーとのエコシステムを構築し、社会課題の解決を加速させようとしています。その中でも、「世界的に拡大するエネルギー需要拡大と脱炭素化の両立」は喫緊の社会課題の一つであることから、戦略テーマの一つと位置付け、4 月に設立された戦略SIB ビジネスユニットの戦略のもと、さまざまな取り組みを進めています。今回のMoU 締結もその一環であり、「次世代グリーン・デジタルインフラの開発」という共通ビジョンのもと、グローバルで豊富な実績を持つブルックフィールドおよびハートリーとの連携を開始できることをうれしく思います。今後、三社の強みを生かしたファンディングスキームを構築し、ビジョンに共感するパートナー各社も含めて、持続可能な社会への変革をともに考え、具体的なアクションにつなげていきたいと考えています。
Brookfield Japan 株式会社 CEO Luke Edwards
私たちは、日本の成長戦略を支える世界水準のデジタルインフラ構築に貢献したいと考えています。このパートナーシップを通じて構築することをめざすデータセンターのようなAI インフラを主導する国々は、世界経済と国家安全保障において戦略的優位に立つでしょう。ブルックフィールドは、データ、電力、コンピューティング資産に1,000 億米ドル以上を投入している、世界最大のAI インフラ投資企業です。日立、Hartree とともに、このグローバルな専門知識を活用し、データセンタープラットフォームを日本でどのように開発できるかを探索することを楽しみにしています。
Hartree Partners Singapore Pte. Limited マネージング・ディレクター兼アジア太平洋地域統括責任者 Ahmed Al-Awa
Hartree は創業以来、電力やガスなどのグローバルなエネルギー市場で積極的に活動しており、これらの分野で深い専門性を築いてきました。環境問題の重要性が高まっていることを受けて、Hartree はカーボンクレジット市場への積極的な参加を含む環境分野の取り組みにも注力しています。世界有数の商品取引会社として、Hartree はそのグローバルな専門性を活かし、日立およびブルックフィールドとともに日本のGX 推進を支援することに尽力しており、日本社会ならびに経
済全体へのさらなる貢献をめざしております。