※ 画像は HARC for AI の概要
日立製作所(以下、日立)は、企業におけるAIエージェントの導入効果を最大化するためにAI特有の運用課題を解決し、健全なガバナンスと継続的な運用改善を伴走型で支援する「Hitachi Application Reliability Centers (HARC) for AI」(以下、本サービス)を2025年10月7日より提供開始した。本サービスは、グローバルで60社以上の顧客の運用改善で成果をあげてきたHARCを拡充し、AIの運用課題の解決に適用するもの。2025年4月より海外向けに先行して提供*1 してきた本サービスを、今回、国内市場向けに強化して展開する。
具体的には、人とAIが協働する社会の実現に向け、AIの本格適用をめざす顧客が直面する、AIエージェントの判断内容の正当性や回答スピードの低下、コスト増、セキュリティリスクへの対応といった特有の運用課題を継続的に観測し、日立がAI活用で培ったノウハウに基づき迅速な改善を行うことが可能になる。これにより、健全なガバナンスを確立し安全かつ効果的にAIを利用できるほか、AIエージェントを含むシステムを業務観点の指標で常に可視化し継続的に改善することができるため、AIエージェントの導入効果を最大化し企業の持続的な成長に貢献する。
日立の執行役副社長 兼 デジタルシステム&サービス統括本部長の 阿部 淳 は、「日立はこれまで、エグゼクティブから現場のエンジニアまで、各レイヤーのニーズに合わせてAIエージェントの活用を進めてきました。経営リスク分析や保守高度化など、その用途は多岐にわたり、グループ全体で200件以上の運用実績があります。これは、長年ITシステムの構築・運用を担ってきた日立の経験があってこそ実現できることです。プロダクトやシステムを通じて蓄積された豊富な業務ドメインナレッジこそが日立の強みであり、AIエージェントのガバナンスを健全に保ち運用を成功させる重要な鍵となります。日立は、AIを単なるツールではなく人間の能力を拡張し、顧客や社会的な課題の解決を支援するパートナーとして位置づけ、継続的に強化していきます。そして、私たちは、デジタルを通じて生み出す価値をすべての人に届け、安全・安心で持続可能な社会、すなわち『ハーモナイズドソサエティ』の実現をめざしてまいります。」と述べた。
*1: ニュースリリース "Hitachi Digital Services Unveils HARC for AI to Improve Enterprise AI Reliability, Observability, and Cost Control"(2025年4月15日)
背景
企業の持続的な成長に向けて、新たなビジネス価値創出や変化への適応が急務となる中、さまざまな分野でAIの業務活用が進み、人とAIが共に働く社会が現実となりつつある。これに伴い、企業を支えるITシステムも、AIを前提とした設計や運用が求められる時代へと移行している。一方で、AIを含むIT運用には、ガバナンスの確保やコスト最適化、さらにAIの技術革新への追随といった多くの課題が伴うため、継続的な観測と改善を可能とする包括的なサービスへのニーズが高まっている。
HARC for AI の特長
本サービスは、クラウドネイティブな運用改善を推進するSRE (Site Reliability Engineering)*2 の手法に基づき、運用変革に伴走するマネージドサービスであるHARCの実績と、日立社内で培ったAI運用ノウハウをあわせて、AIを業務に本格適用する顧客向けに、AI特有の運用課題の解決を支援するものである。特長は以下の通り。
(1) 事業変化に応じて、AIエージェントの判断の正当性といったガバナンスやコストを観測し継続改善
ガバナンス
AIの業務活用を拡大する上で、ガバナンスは非常に重要なテーマである。AI基盤やAIエージェントの判断の正当性、回答スピード、障害時のリカバリー対応は、複雑で技術進化が速いため専門性が求められる。日立は、グローバルで活用している評価フレームワークR2O2.ai*3 に基づき、社内での実践経験も踏まえて、適切な観測とチューニングの支援が可能であり、継続的な改善により業務品質の向上に貢献する。
コスト評価
AIにおけるコストの適切な評価には、企業のAI基盤の総コストの把握に加え、AIエージェントのビジネス価値とコストバランスの目標レンジを設定した上で、継続評価をするFinOpsのアプローチが有効である。本サービスでは、FinOpsプラクティスに対するKPIの設定・追跡により、IT部門・財務部門・利用部門でFinOpsチームとして共通した評価基準を策定するためのアセスメントとアドバイスを提供し、事業環境の変化を見越した運用が可能である。実践に向けたKPIの継続的な可視化や定期的な評価と調整のアドバイスにより、FinOpsの成熟度の向上に伴走する。
(2) AIエージェントのデータアクセス制御やセキュリティリスクへの対応を強化
AIエージェントのデータアクセス制御
AIエージェントが連携する環境での複雑なデータアクセスの認証・認可をMCP (Model Context Protocol) などのオープン標準プロトコルにより統一的に管理・制御することが可能である。日立は Cloud Native Computing Foundation (CNCF) の関連プロジェクトや国内外コミュニティを通じ、認証・認可技術の標準化と普及に貢献しており、最新の知見やノウハウをもとに、AIのデータガバナンスを強化する。これにより、顧客はAIエージェントの連携で複雑化するデータアクセスの認可を事前に定義して監視できるため、意図しないデータの流出をあらかじめ防止するほか、AIエージェントの認証情報の改ざんによるなりすましなどを防止できる。
セキュリティリスクへの対応
高度なセキュリティエンジニアが、日立グループ内の専門組織と連携し、セキュリティリスクの可視化と対策、セキュリティ監視とインシデント発生時の対応などの支援を行う。これにより、AI適用に伴う新たなリスクが発生した場合も迅速な対応が可能となる。
(3) AIエージェントやアプリケーションの改善サイクルの加速
AIエージェントやアプリケーションの開発・運用の効率化に向けて、リソースや実装ずみの機能を可視化し、その活用ルールを定めることでエンジニアの二重開発などを防ぐために、API基盤や開発基盤の整備と継続的な改善が重要である。そのような基盤の設計・実装と継続的な改善には、プラットフォームエンジニアリングの高度なスキルが必要とされる。そうした対応を日立のエンジニアが支援することで、アプリケーション開発のエンジニアは、業務ロジックの開発や改善に集中することができる。その結果、エンジニアのスキルに依存することなく生産性を向上し、AIエージェントやアプリケーション開発・改善のサイクルを加速することが可能になる。
*2: サイロ化されている開発チームと運用チームの壁を取り払うDevOpsの実践と、ソフトウェアエンジニアリングの手法を用いることにより、システムのアジリティ(機敏性)を生かしたまま、リライアビリティ(信頼性)、レジリエンス(回復性)とセキュリティを効果的に高めるためのシステム運用とサービス管理の方法論
*3: Reliable(信頼性)、Responsible(責任性)、Observable(観測性)、Optimal(最適性)を実現する生成AIの開発・運用フレームワーク。本フレームワークが実現する価値の頭文字をとり"R2O2.ai"と呼称している。
Hitachi Application Reliability Centers (HARC) for AI について
「Hitachi Application Reliability Centers (HARC)」は、クラウドネイティブな運用改善を推進するSREの手法に基づき運用変革に伴走するマネージドサービスであり、グローバルに展開している。Fortune 500 企業のうち40社以上が金融、ヘルスケア、防衛、自動車などさまざまな業界で、信頼性の高い、安全かつコスト効果的な運用の実現に貢献してきた。国内においても、20社以上の支援実績がある。
これまでに、HARCは効率向上、障害の減少、クラウドコストの最適化に貢献している。現在ではFinOps、SecOps、そしてAI運用にまで拡大し、本番環境でのAIのオブザーバビリティ、セキュリティ、コスト管理を含めた包括的な機能を提供する。2024年に発表されたR2O2.aiフレームワークとともに、HARCは責任あるAIの開発・導入・運用を導きる。
R2O2.aiがAIワークロードの開発と導入の指針を定める一方で、HARCはそれを実運用に落とし込む。こうしてAIのオブザーバビリティ、ライフサイクル管理、パフォーマンスチューニングを実世界の活用へと結び付けている。
https://www.hitachi.co.jp/products/it/harmonious/cloud/articles/harc/
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