創業の地 日立市と進める「次世代未来都市共創プロジェクト」
日立製作所は、創業の地である日立市との包括連携協定を2023年に締結*1、産官学金のステークホルダーとの連携を通じて、次世代未来都市の実現に向けた共創プロジェクトを推進しています。市民の皆さんの力とテクノロジーをかけ合わせて、持続可能な日立市の実現をめざし、地域創生の成功モデルを探る本プロジェクトは、第二の創業ともいえる挑戦になります。
*1日立市と日立製作所が、デジタルを活用した"次世代未来都市(スマートシティ)の実現にむけた共創プロジェクト"に関する包括連携協定を締結:2023年12月21日
「次世代未来都市共創プロジェクト」では、「グリーン産業都市の構築 」、「デジタル健康・医療・介護の推進」、「公共交通のスマート化」を3つのテーマを軸に、社会課題解決に向け検討を進めています。
そして、社会課題を解決し、持続可能な日立市を実現するには、行政や企業の取り組みだけでなく、市民の皆さま一人ひとりがまちの主役となり、一緒に考えていく市民参加が重要です。
この市民参加を推進し、3つのテーマを横断しながら未来の暮らしを描き、創っていく取り組みが、「スマート住宅エリア」プロジェクトです。本プロジェクトでは、まず、まちづくりの指針となる暮らしのコンセプトを策定するため、市民参加型のワークショップを開催しました。
全3回で行われる本ワークショップのテーマは、「2040年における、日立市での暮らしのあり方」。各回には20~30代を中心とした約40名が参加し、「日立市の現代を生きる若者世代」の視点から、2040年の住みたい姿を描いていきます。
人口動態や交通量といった客観的なデータから未来を予測するのではなく、「将来こんな暮らしをしてみたい」「日常のこんな所を改善したい」といった、生活者一人ひとりの視点を基に、将来のまちのあり方を検討していきます。
当日は、参加者一人ひとりの視点から、日立市への想いが語られました。 本記事では、活発な議論が交わされたワークショップの様子をレポートします!
多様な参加者が集まり、日立市の今を見つめ直す
全3回で構成されるワークショップの第1回目は、まず日立市の「現在」の姿を見つめ直すことからスタート。当日は、日立市役所と日立製作所のメンバーに加え、茨城大学、茨城キリスト教大学の学生や、常陽銀行や市民団体の方々などにご参加いただきました。
参加者の皆さんには事前に、それぞれの視点で日立市内を歩き、まちの魅力や課題といった日立市らしさを発見するというフィールドワークに取り組んでもらいました。
そしてワークショップ当日は、4つの班に分かれて、写真とコメントを記入したカードを使い、各自の気づきを発表。各班には、本ワークショップの設計を行った日立製作所のデザインチーム
のメンバーがファシリテーターとして参加。参加者と共に情報を分類・整理しながら、今回着目すべき地域の特徴について議論を進めました。


議論の中では、日の出が見える公園といったお気に入りスポットや、坂が多く移動が困難だという課題など、多様な意見が共有されました。これらの気づきを基に各班でグループ化や言語化を進めることを通じて、生活者の視点から日立市の現在について議論を深めていきました。
また、未来のまちづくりを考えていくうえでは、現状の日立市らしさを見つめ直す視点に加え、これからのまちの変化を捉え、バックキャストで未来を描いていく視点も必要となります。そこで、次のステップとして、デザインチームが2040年の世界や日本で予測される社会の変化や統計データについて説明し、参加者全員で未来に起こり得る変化を共有しました。
この共通認識を基に、各班は「その未来の変化に対応していく中で、特に重視すべき日立市らしさは何か」を議論し、これから深掘りしていく視点を絞り込んでいきました。


みんなで日立市らしさを発表
ワークショップ終盤では、それぞれの班でピックアップした日立市らしさを発表し、全体で共有しました!
まずA班が着目したのは、「景色の良さと歩きやすさのトレードオフ」。坂の上からの絶景は守りたい大切な魅力である一方、住民にとっては移動のしづらさにもつながっています。景観を活かしつつ、交通手段をどう充実させていくか、という視点が示されました。 さらに、ユニークな視点として「資源の扱い方」も紹介。日立市の河原子海岸では海流的に漂流物が集まりやすく、さらに砂に砂鉄が少なく漂流物を見つけやすいことから、ビーチコーミングが盛んです。この特徴を活かした「新しい資源のめぐりと、その中での未来の暮らし」の可能性が挙げられていました。
A班発表の様子
次にB班からは、「自然を活かした賑わいづくり」と「地元の固有性を保つ」といった点が提起されました。2023年より始まった「ひたち盆 FIRE 」*2のような新しい風物詩がまちのシンボルとなり、賑わいを生むことで「将来も住み続けたい」という想いにつながると発表。 また、ものづくりのまち日立市には町工場が多く、それが「日立市らしさ」を形作っているという分析もありました。一方で、人口減少や担い手不足により町工場の活力が失われつつある中で、この固有性をどう守り育てていくかが課題であるとの指摘もありました。
*2ひたち盆FIRE
B班発表の様子

C班発表の様子
続いてC班は「ついでに〇〇、ほどよい距離にほどよい〇〇」といったフレーズを挙げました。これは、若者が休日に「とりあえず行ってみるか」と気軽に集まれる“サードプレイス”(自宅や学校・職場以外の第三の居場所)の必要性を訴えるものです。現在の日立市には、こうした若者が集う拠点が不足しているのではないかという指摘がありました。

D班発表の様子
そして、D班では「人が集う場所」という点に着目。スーパーなど日常的に人が集まる場所へのアクセスを改善すると共に、まだ知られていない魅力的な場所をPRすべきという意見がありました。 こうした工夫で交流人口を増やし、一度は市外へ出た人も「また戻りたい」と思えるような、魅力的なまちづくりが必要だと発表されました。
第1回ワークショップを終えて…
会場は終始楽しく和やかな雰囲気に包まれながらも、参加者一人ひとりが日立市の未来を「自分事」として捉える真剣な議論が交わされていました。特に印象的だったのは、参加者の皆さんが愛着を持ってまちの魅力を語る姿です。参加したある学生の方からは、「日立市で暮らす自分にとって当たり前だと思っていた、レトロな喫茶店などが、外からの視点では大きな魅力になることに気づいた」という声が聞かれるなど、ワークショップを通じて新たな発見も生まれていました。
今回見つけ出したのは、現在の日立市らしさです。 次回は、この日立市らしさに関連する社会の動向や先進事例を調査し、2040年に向けた日立市の変化の可能性を探っていきます。
本ワークショップのプロセスを、引き続きレポートしてまいります!次回の報告も、ぜひご覧ください!





