2040年、日立市はどう変わる?
第2回となる今回は、前回見つけ出した現在の日立市らしさを起点に、未来へと視点を移します。世の中の動向や国内外の先進事例を手がかりに、2040年の日立市で起こりうる社会の変化を予測し、具体的な暮らしの姿を描き出す「未来洞察」に挑みました。
ワークショップでは、まず参加者一人ひとりが事前に調査した世の中の動向や事例をカードに記入し共有。班ごとに、集まったカードをグループ分けし、関連付けることで、2040年に向けて起こりうる社会の変化を読み解いていきました。
議論は活気に満ち、各班で創造的なアイデアが飛び交います。
例えば、前回ワークショップで「若者が集うサードプレイス」の必要性を指摘した班では、海外事例を参考に「生活機能に加えサードプレイスも程よい距離感にある15-Minutes City(自宅から徒歩や自転車などで15分圏内に必要なサービスが揃うまち)が日立市にも欲しい」という意見や、「例えば、AIファシリテーターがサードプレイスでの人々の交流を促進するなど、だれもが居場所と思える場所づくりを手伝ってくれたら!」といった学生の声も上がり、国内外の事例を参考にしながら多世代に向けた空間や仕組みのイメージが次々と膨らんでいきました。


日立市の未来洞察を発表
こうした熱のこもった議論を経て、各班はどのような「日立市の未来の姿」を描き出したのでしょうか?その発表のハイライトをご紹介します!
【A班の発表】
・デジタルとアナログで生まれる「まちづくりエージェント」
デジタル技術を活用した市民参加プラットフォームを導入することで、未来を担う子どもたちや、市外に住む「関係人口」も地域の意思決定に参加できる仕組みを提案。将来的には、関係人口20万人の達成を目標に掲げ、さらにはAIが市長の政策をサポートするという未来の姿を発表しました。
・地域に残すべきものを使い倒していく ” Local Legacy First " なライフスタイル
市内に住む人々は「残すべきもの」を「地域の遺産」と捉え、その維持を暮らしの中心に置くようになり、銭湯を活用するために自宅にバスタブを設けない、レトロカフェに通うために公共交通の定期券を購入するといった、ライフスタイルを選ぶようになっていると提案。そして、店舗・物件を中心に地域内外の人々の交流が活発化していく姿を発表しました。
・地産・地消・地産…の「マイクロ・サーキュレーション」
最後に、資源活用を起点とした、地域内での資源循環について紹介します。ここでは、ビーチコーミングをきっかけに、海岸近くでは資源の分別・再利用が一種の娯楽コンテンツとして広まり、環境意識の高い来街者の観光コンテンツになっている未来を洞察。また高品質な再生材を求める協賛企業が、分別に協力的な人に謝礼や無料のコーヒーを提供するようになり、資源回収場は市民の滞在・交流の場になっている姿を描きました。

A班発表の様子
【B班の発表】
・まちの個性継承
B班は、守るべき日立のアイデンティティである、小さな町工場や漁業、個人経営の飲食店などにおける後継者不足によって存続が難しい現状を指摘。そして、この課題に対し、新しい形で価値を継承していく仕組みが必要だとしました。具体的なアイデアとして、閉店してしまう飲食店の味を後世に残すレシピ継承のプロジェクトや、空き店舗を時間帯で区切ってランチ営業やコミュニティスペースとして活用する、また町工場のノウハウ・ナレッジをメタバースに保存し継承していくなど、まち全体を柔軟に使いこなすライフスタイルを提案しました。
・高校生が主導する道とまちの整備
次に、高校生が主体となって地域の課題や改善案を市に提案する未来を紹介。自らの意見がまちに反映される経験は、若者の地元への愛着を育み、「住み続けたい」という想いにつながるのではという意見が出ました。また、その際には、デジタルツイン技術で政策の効果を事前にシミュレーションすることで、説得力を持って施策を行うことができると紹介しました。こうした取り組みは高校生を中心に、高齢者など多世代の意見も取り込んでいくことで、より大きなコミュニティへと発展する将来像を提案しました。

B班発表の様子
【C班の発表】
・ほどよい距離に居場所と自然が点在する、心地よいまち
C班は、若者が「とりあえず行ってみるか」と気軽に集えるサードプレイス創出にむけて具体的な解決策を提案。例としては、空き家をリノベーションしてチェーン店ではないユニークなカフェを作ったり、コンクリートで覆われた新都市広場を芝生化して、子どもたちの遊び場や市民の憩いの空間に変えたりするなど、身近な場所に心地よい居場所を点在させていく未来を描きました。
・自然資産(山・海・桜)を活かした「シティカラー・ブランディング」
次に、「市民にとって海や山、桜は当たり前の存在で、その価値が十分に活かされていない」と分析。そして、これらの豊かな自然資産を生かして、市外からも魅力的に映る日立市ブランドとして再定義することを提案しました。日立市のシンボルである桜をモチーフにした桜色をまちの景観統一色(シンボルカラー)としてはどうか、というユニークなアイデアを提示。市民がまちに誇りを持ち、自律的に景観を守り育てていく、そんな未来の姿が語られました。

C班発表の様子
【D班の発表】
・ 人とまちの魅力をつなぐ「交通の結節点」
まずD班が着目したのは、地域住民だけが知る隠れた魅力スポットです。これらの魅力を生かすため、AIやアプリで住民がおすすめスポットを紹介しあう仕組みを提案。そして、移動の不便さを解消する解決策として、点在する魅力的な場所同士を結ぶ「交通のハブ」を設けるアイデアが示されました。この拠点は単に移動の中継地となるだけでなく、地域内外の人が交流する場としての役割も担い、コミュニティの活性化をめざします。
・テンポラリーなスポットを基点とした、 まちの創造性と安心安全性の向上
次に、日常の中で人々が自然発生的に集まっている場所に注目し、ポジティブな人の流れを意図的に創り出すことを提案。例えば、道路空間に休憩やスポーツができる場所を一時的に設けたり、商店街に学生が自由に勉強できるスペースを設置したりと、日常空間に新たな機能を追加することで、まちを人の集まる飽きない場所に変えていきます。この人の賑わいが生み出す効果は、魅力の向上だけではありません。車社会で人通りが少ないことが防犯上の課題となる中、まちを歩く人が増えることで自然な見守りが生まれ、子どもたちが安心して過ごせる「安全・安心なまちづくり」にもつながると締めくくりました。

D班発表の様子
まとめ
ワークショップ1回目での「現在の日立市らしさ」を起点に、今回は各班から多様な日立市の未来像が提案されました。印象的だったのは、AIをはじめとするテクノロジーを活用した市民サービスやまちづくりのアイデアが多く見られたことです。各班で未来への期待が膨らむような活発な議論が行われていました!次回はいよいよワークショップ最終回。これらの未来洞察を基に、「2040年における“住民視点”での日立市の暮らし」を描きます。どのような日立市の未来の暮らしが描かれるのでしょうか。次回のレポートもぜひご覧ください!



