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舞台は2040年の日立市

最終回となる今回は、前回作成した未来洞察をさらに深化させるため、未来社会を物語として構想する「SFプロトタイピング」という手法を用いて、ワークショップを進めます。具体的には、参加者に「2040年の日立市の地域雑誌」を制作してもらい、未来の暮らしをリアルに想像することに挑みます!

ワークショップは、参加者へのこんな問いかけから始まりました。
「想像してください、ここは2040年の日立市です。あなたは地域雑誌の編集者として、『未来のまちで暮らす』という特集を任されました」
舞台は、私たちが2025年に構想したスマート住宅エリアが実現した世界。8つのエリアの住民の暮らしを取材し、記事にするのが今回のワークショップのゴールになります。

未来の生活者になりきって、雑誌制作に挑戦!

当日は、まずこれまでの4班で、前回作成した「未来洞察」を振り返ることから始まりました。描いた未来像の認識を全員で合わせた後、各班はさらに2つのチーム計8班に分かれ、スマート住宅エリアを一つずつ担当し、雑誌制作に取り組みます。

雑誌制作の第一歩は、記事に登場する「2040年の住民」の人物像を、年齢や職業、ライフスタイルまで細かく設定すること。そして、2040年の生活者の視点になりきって架空のインタビューや記事の執筆を進めました。制作過程では、生成AIで未来の風景や暮らしの画像を生成するなどして、未来の暮らしを具体的に可視化していきました。

画像生成では、思い描く未来の風景をAIに理解させるため、プロンプトの表現を何度も調整する場面も。こうした試行錯誤を経て、ついに各班で、全3回にわたるワークショップの集大成となる「未来の地域雑誌」を完成させました!

画像: 議論の様子

議論の様子

画像: 画像生成に取り組む様子

画像生成に取り組む様子

最終成果物の発表

各班それぞれが1エリアを担当し、完成した未来の地域雑誌。雑誌内では、それぞれのスマート住宅エリアに住む人々の暮らしがリアルに描かれています。以下では発表のハイライトをご紹介します。記事本文で紹介しきれなかった全容は成果物の写真よりぜひご覧ください!

【A-1班】

日立市の古き良き店舗を愛すLocal Legacy Firstなライフスタイルを選んだ人々の現在

A-1班が描いた未来では、レトロな喫茶店や昔ながらの銭湯、地形の特徴を生かした天体観測エリアなどを中心とした、さまざまなテーマを持った住宅エリアが整備されています。インタビューに登場する住民は、「まちなかのカフェなどが地域の交流拠点になっており、仕事の合間にも立ち寄れるのが嬉しい」とその魅力を語ります。

画像1: 最終成果物の発表

【A-2班】

「私たちが未来につなぐ日立市」日常から広がる資源循環に立ち上がった

A-2班が描いた未来では住民自らが楽しみながら資源循環に取り組んでいます。その象徴となるイベントが、海岸で資源回収をするビーチコーミング。そこで回収したガラス片を地元企業が魅力的なシーグラス製品へとアップサイクルし、販売しています。「海岸の資源を活用し全国区の人気商品を創る」という成功体験が、住民の誇りを育んでいます。

画像2: 最終成果物の発表

【B-1班】

人や職の枠を超え、ワークスタイルはさらに自由に!「ストーリーのある」生き方をこのまちで

B-1班のインタビューで登場する住民は、漁師を本業としながら、雨の日は町工場で働くなど、地域内で柔軟に仕事を掛け持ちしています。特筆すべきは、町工場の技術をメタバース上に記録された師匠のデータから学ぶことができる点です。これにより、後継者不足という長年の課題解決にもつながるといいます。

画像3: 最終成果物の発表

【B-2班】

デジタルツインを使った整備施策シミュレーション!高校生の主導で通学専用道路が生まれたまち

B-2班が描いた未来では、高校生が主体となり、テクノロジーを活用してまちづくりに参加しています。 「この道は危ない」といった生徒たちの気づきを住民共有のアプリで収集し、その改善案を「デジタルツイン」でシミュレーション。効果を事前に検証した上で、政策に反映させていきます。「自分たちの手で未来を変えられる」という成功体験こそが、まちの未来を担う人材の成長につながっている様子が、紙面からよく伝わってきました。

画像4: 最終成果物の発表

【C-1班】

Hitachi Bloom City~ほどよい居場所と自然が点在している心地よいまち~

C-1班のインタビューで登場した女性は、市の「お試しStart-upプラン」や、市外から地域を応援する「デジタル市民制度」を活用し、一度は閉店した故郷のケーキ屋さんをUターンして再オープンさせました。また、まちの緑地化が進み、新都市広場は緑地化され人々の憩いの場に。さらに、将来的には「食べられる街路樹」も整備される予定だと、遊び心あふれる未来が語られていました。

画像5: 最終成果物の発表

【C-2班】

子どものラクガキがまちを彩る~涼しさにつつまれて、心にサクラが咲くまち~

C-2班のページでは、「都心より涼しいから」とUターン移住を決めた住民が登場。緑のカーテンや街路樹が整備され、子どもが外でのびのび遊べる環境が大きな魅力だと語ります。そして、このまちのもう一つの特徴が、市のシンボルカラー「日立ピンク」。子どもたちがラクガキでまちを彩る活動が景観の一部となり、遊びの中からまちへの愛着を育むというユニークな活動が紹介されています。

画像6: 最終成果物の発表

【D-1班】

地域資源と魅力をつなぐ「リンクひたち」-日立市内の交通拠点が拓く地域繁栄のかたちとは-

D-1班が描いたのは、地域の交通結節点となる「リンクひたち」が、人・モノ・情報の流れを活性化させる未来です。インタビューに登場したリンゴ農家を営む夫婦は、リンクひたちができる前の不便な生活を振り返るとともに、「リンクひたちができてから、作物の出荷が楽になり、リンゴの収穫体験を通じて地域の人との交流も増えた」とその効果を語ります。

画像7: 最終成果物の発表

【D-2班】

地域の顔となった「#のまち」エリアでのテンポラリーで創造的な集い

D-2班のページでは、まちの魅力を大学生のインタビューを通して紹介。「匿名のアバターで共通の趣味を持つ人とつながることができ、イベントに参加するうちに、いつしか自分も主催者になっていました。気軽な交流ができて、東京にいるより刺激的で毎日が飽きません」と語ります。こうしたつながりは、住民主催の創造的なイベントを生むだけでなく、災害などの有事の際には助け合いのネットワークとしても機能します。普段の「楽しさ」が、そのまま「地域の強さ」になる、新しいコミュニティの形が提案されていました。

画像8: 最終成果物の発表

全3回のワークショップを終えて…

以上のように、8つの班から、それぞれの個性あふれる2040年の日立市の暮らしが描かれ、1つの地域雑誌が完成しました。スマート住宅エリアで暮らす未来の人々の喜びや抱える課題が具体的に描かれ、未来への想像力をかき立てる一冊となりました。

画像: 未来の地域雑誌の表紙と目次ページ

未来の地域雑誌の表紙と目次ページ

全3回にわたるワークショップを終え、参加者に感想を伺いました。

東京出身で、大学進学を機に日立市へ来た茨城大学の上原さんは当初、「正直、日立市は交通が不便で『住みにくい』と感じていました」と、市外出身者ならではの率直な課題意識を持っていました。

しかし、議論が進むにつれ、自分には見えていなかった日立市の姿や魅力に気づかされたそうです。
「大きな発見だったのは、多様な参加者の視点に触れられたことです。特に、地元出身の学生たちは、自分が全く知らなかった魅力的なカフェや場所をたくさん知っていました。」
このように、日立市の内側、外側という多様な視点を持つ人々と意見を交わすことができたことが良い議論につながったと話されました。

そして上原さんはもちろんワークショップは簡単なことばかりではなかったと振り返ります。
「特に第2回は、多様な意見が飛び交う中で、一つのコンセプトに収束させていくプロセスが本当に大変でした。」と難しさもあったようです。

最後に、「ワークショップを終えて、今後も日立市に住み続けたいと思えましたか?」と尋ねると、少し考えた後、こう答えてくれました。
「今のままだったら、正直、東京に戻ることを考えますが、今回のコンセプトが実現したら、魅力的で住みたいまちになると思います。そして、これからも、この取り組みが進んでいる事を応援したいので、是非こういった取り組みの発信を続けていって欲しいです!」と率直な思いを語ってくれました。

編集後記

年代や出身地など、多様な背景を持つ方々が集まったからこそ、一人では思いつかないアイデアが生まれ、議論が深まっていく様子を実感できました。現在の気づきの発見から、未来の洞察、そして今回の未来の地域雑誌制作という流れで進められた本ワークショップ。同じ「2040年における日立市の暮らし」というテーマでも、班ごとに全く異なる、創造性豊かな暮らしの姿が描かれたことも大変興味深かったです。

ここで生まれた議論やアイデアを、今後のプロジェクトのコンセプト策定に生かし、スマート住宅エリアの実現へとつなげていきます。本プロジェクトの今後の動向にも、ぜひご期待ください!

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