今回は、オンプレミス環境に蓄積された非構造データを、セキュアかつ効率的にクラウドAIで活用するための「オンプレミスデータ利活用ソリューション for HybridCloud」について、入社2年目でありながら組織横断プロジェクトの技術検証リーダーを務める飯塚彩さんにお話を伺いました。
オンプレミスデータをクラウドAIで安全かつ効率的に活用し、価値につなげる
——今回のソリューション開発のきっかけとなった課題意識について教えてください。
企業が自前でサーバーを所有して運用するオンプレミス環境には、顧客情報、技術ノウハウ、システム運用記録など、価値ある非構造データが大量に蓄積されています。もしこれらをAIで有効活用できれば、業務の効率化、意思決定の高度化、知識の継承、新サービスの創出など、さまざまな価値創出につながります。こうした期待の高まりから、高価なAI基盤を自前で用意しなくても、データを安全かつ効率的にAI活用できる仕組みとして、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloudといったパブリッククラウドが提供するAI基盤に大きな注目が集まっています。
ただ、その一方でクラウドAIを利用する際には、情報漏えいリスクへの対策、クラウドストレージのコスト最適化、オンプレミスとクラウドでのデータ二重管理の回避、ビジネスに最適化されたAI基盤の実現など、多くの課題が存在します。
AI活用をより幅広いビジネスへ普及させるためには、これらの障壁を解消する必要がある——そう感じたことが、今回の取り組みの出発点でした。
飯塚 彩(日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット クラウドエンジニアリング本部 クラウドデリバリプラットフォーム部)
——「オンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloud」とは、具体的にどのようなソリューションなのでしょうか。
クラウドAIを使いたいけれど、いろいろな課題があって踏み出せない——そんなお客さまのお悩みを解消するために、日立はネットアップ合同会社(以下、NetApp)のご協力のもと、「オンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloud」を開発しました。特長としては、まずオンプレミスのNetAppストレージにあるデータは、クラウドへキャッシュとして連携されます。これによりオンプレミス上のデータとの同一性を確保すると同時にクラウド側での改ざんはできません。また、オンプレミスとクラウドのストレージを同じ権限体系とポリシーで運用できる仕組みにしており、これによって管理を一本化しつつ、セキュリティを維持することができます。さらにクラウドに展開されたデータは、クラウド上に構築するアプリケーションによって、チャットボットや文書生成などさまざまな業務で、業界の各種ガイドラインに準拠した形で活用いただけます。
お客さまがクラウドAIを用いて同様の仕組みをご自身で構築する場合、ストレージ・クラウド・AI基盤にまたがる専門的な調整が必要になります。しかしこのソリューションを導入いただくことで、そうした複雑な調整を伴わず、お客さまはオンプレミスのデータをスピーディーかつ安全にAIを使って価値へと変換することができます。

オンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloudのシステム概要
——今後の「オンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloud」の取り組みについて教えてください。
「オンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloud」は、これまで十分に生かされてこなかった企業や自治体のオンプレミスデータを安全かつ容易に利用できるようにします。それによって社会に存在するさまざまな課題に、より的確な解決策を導き出しやすくする点に大きな価値があると考えています。社会のさまざまな領域における課題の解決にこのソリューションが寄与できることを願っています。
領域ごとに異なる文化を持つメンバーたち
——入社2年目でメンバーをリードする中で、飯塚さんが大切にしたことは何ですか。
今回の取り組みは、プロダクトサイドを担うNetAppに加えて、日立の中でもクラウドSI*1とストレージSI*2という2つの部門をまたぐ組織横断プロジェクトでした。私はクラウドSIの部門に属していますが、自分の専門領域外である他部門や他社の領域については知識が追いつかない部分もありました。一方で周りを見ると、各メンバーも専門領域ごとに異なる開発スタイルや業務文化、用語の差異に戸惑いを感じているようでした。
私はこのプロジェクトを推進するうえで重要なのは、異なるバックグラウンドを持つメンバー全員が納得しながら前に進める土台をつくることだと感じました。メンバーの技術力の高さはわかっていたので、リーダーとして、それぞれの専門的な知見をひとつのテーブルに集め、行き違いなくスムーズに議論できる環境を整えることに力を入れました。
たとえばプロジェクトの初期段階で、コミュニケーションのハードルを下げるために、「『こんなことを聞いていいのかな』と思わずに何でも話し合って進めていきましょう」とメンバーの皆さんに呼びかけをしました。そうした細かな働きかけを重ねたことで、“何でも話し合える雰囲気”が生まれ、メンバーがお互いの専門知を引き出し合える土台が整っていったと感じています。
また、今回のプロジェクトを通して改めて認識したのが、豊富な専門知を持つ先輩社員が新しい世代の挑戦をしっかり支える──そんな日立の文化です。その存在が、私たち若手が安心して前に踏み出せる環境をつくっているのだと実感しました。
*1 クラウドを安全かつ効果的に業務で活用できるよう、業務要件に応じてクラウド環境の設計・構築から移行、運用までを支援するシステムインテグレーション。
*2 企業のデータ特性や業務要件に応じて、適切なストレージ基盤を設計・構築し、データの保存・保護・活用の高度化を支援するシステムインテグレーション。
「社会課題の解決に直接携わりたい」という想いからSEに
——飯塚さんはSEですが、もともと大学では文系だったそうですね。
私はもともとPCなどのデジタル機器があまり得意ではなく、設定作業なども人に頼ることが多かったのですが、そうした場面でスマートにサポートしてくれる人を見ると、「すごくかっこいいな」と思っていました。
そうした目で世界を見ると、SEの人たちが自ら構築したシステムを通じて、ビジネスや社会の課題を解決していて、その姿に強く憧れを抱くようになりました。
日立の採用試験では営業職を希望して内定をもらったのですが、入社後の配属希望調査のタイミングで、「やっぱりSEとして働きたい」と思い、職種転換を希望しました。だからこそ、今回のプロジェクトはまさに夢が叶った形です。
加えて印象的だったのは、会社が「社会課題の解決に直接携わりたい」という私の想いに柔軟に応えてくれたことです。こうしたフレキシブルな対応も日立の若い社員の中に“挑戦し続ける風土”を育んでいると思います。興味のある領域に挑戦できる環境だと、学ぶスピードも早くなりますし、会社としても新たな才能を発掘しやすくなり、組織全体の成長につながるのではないでしょうか。
——日立は、デジタルの力を活用し、地球環境、人々の幸福、経済成長が調和する、ハーモナイズドソサエティの実現をめざしています。飯塚さんはデジタルの力でどんな未来をめざしていますか?
今回のソリューションが、AI活用のすそ野をさらに広げる一歩になればと考えています。いま社会では、労働力不足や熟練者の知識継承の難しさ、社会インフラを支える現場の負荷増大など、さまざまな課題が表面化しています。AIは、こうした問題に真正面から応える確かな手段であり、その活用が広がれば、多くの人々が煩雑な作業を効率化できて、自分らしさを発揮できる創造的な仕事に力を注げるようになると確信しています。
単独の部門やひとつの会社の力だけで、いまの複雑な社会課題を解決することは難しくなってきていると思います。私は今回のプロジェクトで得た学びを生かして、これからも組織の垣根を越え、さらに幅広いパートナーの皆さまと協力しながら、SEとしてさまざまな課題に向き合っていきたいと考えています。
本記事に記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。
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