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先日公開したCES現地レポートでは、日立が「What's next?」をテーマに、フィジカルAIを社会実装する未来像を示す、日立ブース全体の様子をお伝えしました。その中でも、ひときわ多くの来場者が詰めかけ、熱心に展示員の説明を聞いていたのが、今回の特集でお届けする「Research & Development(以下、R&D)」ゾーン。「AIの信頼性をどう担保するか」「変動する現場にいかに柔軟に対応するか」「熟練の技をどう未来へつなぐか」——産業界が直面するこれらの課題に対し、来場者から「地に足の着いた技術」と評された、日立ならではのソリューションがそこにありました。
 今回は、そのR&Dゾーンで披露された、次なる挑戦の最前線を各技術の「ここがすごい」というポイントと併せて、現地の様子とともにお届けします!

画像1: 【CES2026 R&D特集】日立の研究開発が示す、課題解決の最前線
画像2: 【CES2026 R&D特集】日立の研究開発が示す、課題解決の最前線

AI×物理法則:インフラを支える「確かな信頼」

〜電力網の「見えない」を可視化し、経営判断まで支える〜
生成AIの現場活用において最大のハードルとなるのが、ハルシネーション*1のリスク。生活を支える電力インフラにおいて、日立は「物理法則」をAIに組み込むことで、この課題に挑み、エネルギーという極めて高い信頼性が求められる社会インフラの革新を実現します。
*1 生成AIがまるで真実かのような偽りの情報を生成する現象

**◆物理法則を理解したAIが、数十か月かかっていた審査を数分へ*
(AI-based Transmission and Distribution Grid Computing Acceleration)
米国では今、データセンターの建設ラッシュで電力需要が急増する一方、新規発電所の接続承認には数十ヶ月以上もかかるという大きな課題があります。この喫緊の課題に対し、日立は米国の主要な電力系統運用者であるSouthwest Power Pool (SPP)などと連携し、物理法則を理解した本技術を導入。数日を要していた審査工程をわずか数分に短縮しました。

【ここがすごい:物理を理解したAIだからできる、高信頼な判断支援】
このAIの最大の特徴は、単にデータを学習するだけでなく、オームの法則といった普遍的な物理法則をルールとして理解している点。そのため、センサーの異常などで「物理的にありえない」データが入ってきても、AI自身が騙されることなく、常に信頼性の高い分析を続けます。CESでは「ライブ地図」を使ったデモ動画を通して、その能力を具体的に展示しました。

・ 直感的な地図で、物理的な位置を把握:従来の電力系統図とは異なり、地理的な地図上に送電線や設備をマッピング。電圧に異常があればその場所が「赤色」に変わり、オペレーターは「どの地域の、どの設備に」問題が起きているかを直感的に把握できます。

画像: (写真左:平時の「ライブ地図」写真右:異常が分かった瞬間、該当箇所がパッと「赤色」に変化)

(写真左:平時の「ライブ地図」写真右:異常が分かった瞬間、該当箇所がパッと「赤色」に変化)

・高精度な経営・投資判断を支援:AIが「次にどこにセンサーを設置すれば最も効率的か?」といった、コスト対効果を考慮した最適な設備投資プランまで提案。インフラの意思決定を高度化します。

自律×進化:変化に強い「しなやかな現場」

〜状況に合わせて、自ら考え動くパートナーへ〜
多品種少量生産や突発的なトラブルなど、製造・物流の現場は常に変化しています。日立の研究開発では、あらかじめ決められた動きを繰り返すだけでなく、環境に合わせて適応・進化するシステムをめざしています。

◆AIが自ら学び、進化し続ける生産ライン
(Autonomous Evolving Manufacturing Automation)
その一例として紹介されたのが、バッテリーモジュールの組立工程を想定した、自己進化型の製造オートメーションです。

【ここがすごい:問題が「起きる前」にAIが自ら解決する】

画像3: 【CES2026 R&D特集】日立の研究開発が示す、課題解決の最前線

このシステムは、単に異常を検知するだけではありません。デジタルツイン上で原因を特定し、効果的な対策を自動で生成。その効果と安全性を仮想空間で検証した上で、現実の生産ラインへ展開します。この一連の流れをAIが自律的に実行することで、生産を止めることなく、問題を未然に防ぐ「堅ろう宇で回復力のある」現場を実現します。

◆匠の技を高速学習し、指先まで器用な「双腕ロボット」
(Autonomous Evolving Manufacturing Automation)
従来のアーム型ロボットが苦手としていた人間にしかできない繊細な作業。これまで自動化が難しいと言われていた、その領域にも日立のAIは挑みます。

【ここがすごい:プログラミング不要で「匠の技」を習得】
CES現地のデモ映像で紹介されたのは、従来のロボットが最も苦手とする作業の一つ、「柔らかいケーブルのハンドリング」です。

画像: (写真:熟練者の動きを学習したAIロボットが、2本指で器用にケーブルをつまみ作業する様子)

(写真:熟練者の動きを学習したAIロボットが、2本指で器用にケーブルをつまみ作業する様子)

• リアルタイムに適応: 形状が変わりやすいケーブルをカメラで捉え、その時々の形に合わせてAIがリアルタイムにロボットの動きを生成。プログラムがなくても、巧みにケーブルを扱います。

•「匠の技」を高速コピー: 最も革新的なのは、その学習方法。複雑なプログラミングは一切不要で、熟練作業者が作業する動作をロボットの身体を介してAIに教えるだけで、その「コツ」を学習し、自ら実行できるようになります。これにより、これまで数週間〜数ヶ月かかっていたロボットへのティーチングが劇的に短縮され、導入の手間と時間を大幅に削減します。

◆物流の「自動化」と「脱炭素」を両立する
(Logistics Automation and Decarbonization)
物流分野では、「オートメーション(自動化)」と「脱炭素化」を実現するアプローチとして、物量の変動に柔軟に対応する自動倉庫や、EVトラックの運行効率を最大化する充電管理といった、ソリューションが示されました。

【ここがすごい:ロボットも充電器も、全体最適で「シェア」する】
この「シェア」という革新的なコンセプトを、日立は2つの具体的な技術で実現します。

画像: (従来は別々だったAGVとAMRのシステムを、AIによって統合)

(従来は別々だったAGVとAMRのシステムを、AIによって統合)

・メーカーの壁を越えた「ロボット群制御」
メーカーや種類の異なるロボット(AGV(Automated Guided Vehicle)、AMR(Autonomous Mobile Robot)など)が、AI技術で互いに連携し、まるで一つの生き物のように動きます。渋滞を予測して最適な経路を生成し、作業者の待ち時間を解消。さらに、将来の物量を予測してロボットの役割を自動で割り当てる技術により、資産を無駄なく使い切る運用を実現します。

・充電インフラを共同利用する「協調型CaaSマネジメント」モデル:EVトラックの充電問題を解決するため、複数の物流事業者が充電設備を協調して共同利用する「協調型CaaS(Charging as a Service)マネジメント」という新しいソリューションを提案。ドライバーはアプリで最適な充電ステーションを予約でき、拠点管理者は電力価格などに応じて需給や充電サービス価格を最適化。輸配送の信頼性確保と充電インフラの稼働率向上や電力コスト削減を両立します。

メタバース×技能:距離を超える「知の継承」

〜現場と知識をシームレスにつなぐ〜
熟練工が物理的に現場へ行けない場合でも、高度な技能をどう継承するか。この課題に対し、日立は現場で働く人々を支援するAIエージェント「Naivy(ナイビー)」を開発。「Navigation(ナビゲーション)+AI」を名に冠した、現場の頼れる「パートナー」です。

◆デジタル空間で実現する、人とAIの協働
(Naivy Orchestrates Frontline Worker and Physical AI)

【ここがすごい:人とAIとロボットをつなぐ「パートナー」】
Naivyは、単なる作業支援ツールではなく、日立が長年培ってきたOT(制御技術)の知見を学習し、「現場を本当に理解している」からこそ、人とAIをつなぎ、円滑なコミュニケーションを実現。主に以下の特徴を持つソリューションです。

暗黙知を学習: 熟練者の「勘」や「コツ」といった暗黙知まで学習したAIが、メタバース空間上に現場を再現し、非熟練者の作業を直感的にナビゲート。日立社内での実証では、非熟練者の作業遂行能力が約3割向上しました。

遠隔地の匠と連携: 現場作業員は、Naivyを介して遠隔地の熟練者とメタバース空間でつながり、まるで隣にいるかのように支援を受けられます

画像: (写真:Naivy×現場拡張メタバースにより、非熟練者のつまずき箇所に応じて操作を誘導)

(写真:Naivy×現場拡張メタバースにより、非熟練者のつまずき箇所に応じて操作を誘導)

さらに将来的には、ロボットとも協調し、異常を検知したロボットからの報告を受け、熟練者がNaivyを介してそのロボットを遠隔操作するといった、より自律的な現場の実現も構想されています。

▾特集記事はこちら!
この技術の核であるAIエージェント「Naivy」が、どのような想いで「パートナー」をめざして開発されたのか。その背景や想いについて、以下の開発者へのインタビュー記事で詳しく紹介しています。ぜひ、あわせてご覧ください。
めざしたのは、現場で働く人々の頼れる「パートナー」 ~日立の次世代AIエージェント“Naivy”の魅力に迫る!~

◆現場が信頼できる「産業用アバター」(Hitachi RAG Avatar)
まるで専門家と対話するように、数々のマニュアルから瞬時に答えを引き出してくれる。次世代の相談相手にもなりえる、RAG(Retrieval Augmented Generation)技術を活用したAIアバターが展示されました

【ここがすごい:意図を汲み取り、信頼の回答を返す「ハイブリッド脳」】
デモでは、展示員がアバターに「CESで日立が何を出展しているか?」と尋ねると、「Let me think about that...」と少し考えた後、日立が掲げる「ハーモナイズドソサエティ」というビジョンを核に、関連する展示内容やブースデザインの特徴までを的確に要約して回答。その様子が、以下の動画でご覧いただけます。

画像: (動画:展示員からの質問に対して、アバターが回答を生成し、自然な対話を行う様子 youtu.be

(動画:展示員からの質問に対して、アバターが回答を生成し、自然な対話を行う様子

youtu.be

嘘をつかない「信頼性」:アバターが織りなす的確な回答は、AIがWebを検索するのではなく、事前に学習した情報をもとに探し出すRAG技術によって実現されています。これにより、AIが不確かな情報を作り出す「ハルシネーション」を防ぎ、現場で安心して使える「信頼性」を担保します。

意図を汲む「応答速度」と「対話能力」:単に情報を羅列するのではなく、質問の意図を理解し、重要なキーワードを軸に要約。最後は「より詳しい情報に興味はありますか?」と次の対話を促すなど、高速な応答と自然な対話能力を両立しています。

さらに、この技術は今後も進化を続ける予定であり、将来的には、複数の文書を比較・要約するだけでなく、物理的にタスクを実演することも可能になり、知識と行動の間のギャップをさらに埋めていくことが期待されています。

おわりに

世界最大級のテクノロジー展示会であるCES。その重要な舞台で日立の研究開発が示した技術に共通していたのは、いずれも単なる最新テクノロジーというだけではなく、社会実装という明確なゴールを見据えたもの。それこそが、来場者から「地に足の着いた技術」と評された理由かなと思います。そして、その根底に流れていたのは、現実世界の「物理」「現場」「人」を深く理解しようとする、日立のフィジカルAIへの考え方とその姿勢。現場の課題に寄り添い、人の可能性を拡張する——日立のR&Dが描くのは、技術が人の代わりになるのではなく、技術と人がともに進化する未来です。CESで示したこの確かな未来像を、現実のものとしていく日立の「次」なる挑戦に、ぜひご期待ください!

関連サイト

日立、CES 2026においてNVIDIA、Google Cloud、Nozomi Networksとの協業を通じAIで社会インフラを変革する取り組みを発表:2026年1月15日

研究開発:日立

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