*1: サイロ化されている開発チームと運用チームの壁を取り払うDevOpsの実践と、ソフトウェアエンジニアリングの手法を用いることにより、システムのアジリティ(機敏性)を生かしたまま、リライアビリティ(信頼性)、レジリエンス(回復性)とセキュリティを効果的に高めるためのシステム運用とサービス管理の方法論。
「Hitachi Application Reliability Centersサービス」を提供開始
日立製作所(以下、日立)が、システム運用の自動化を推進するSRE(Site Reliability Engineering)の手法に基づき、アジリティと信頼性の両立やセキュリティの強化、クラウドコストの最適化を支援する「Hitachi Application Reliability Centersサービス(以降、HARCサービス)」を6月30日より日本で提供を開始する。
HARCサービスは、SREに精通したソフトウェアエンジニアがさまざまなツールを駆使してクラウド全体の可視性向上や運用自動化を実現するクラウド向けマネージドサービス。日立の米国子会社である日立ヴァンタラがグローバルに先行して提供し、ジョンソンコントロールズなど製造業や金融機関、小売流通業のお客さまを中心に多くの導入実績がある。日立ヴァンタラと連携し、サイロ化したクラウド運用の煩雑な業務からお客さまの運用チームを解放するとともに、お客さまのクラウドアプリケーションの信頼性向上とリリースサイクルの高速化を実現する。
さらに、国内では基幹システムのクラウド移行や運用高度化を成功させてきた実績があり、そこで培ったベストプラクティスを本サービスに取り込み、モダナイゼーションやマルチクラウド運用などクラウド活用に対するさまざまなニーズに対応。これにより、クラウド運用を抜本的に変革し、お客さまのDX実現に貢献する。
グローバルでのHARCサービスの実績やノウハウと、国内で培ったベストプラクティスを融合
国内外問わず多くの企業が、DX推進の一環として、パブリッククラウドの利用を積極的に進めている一方で、部門や業務ごとにクラウドサービスが乱立し、システムのサイロ化が進む中でクラウド運用の負荷は増え続けている。運用チームがトラブル対応に忙殺されるなどこれまでの運用方法では限界を迎えつつあり、システムの信頼性やセキュリティの低下につながるケースが増えてきている。また、クラウドの利用状況が把握できず、想定以上にクラウドの利用コストが上昇してしまう課題も出てきている。日立ヴァンタラでは、アマゾン ウェブ サービス、Microsoft Azure、Google Cloudなどあらゆるクラウドプラットフォーム上で、世界中のお客さまの業務システムのクラウド移行やモダナイゼーション、クラウドアプリケーションの運用を支援するHARCサービスを提供する専門チームの拠点を2022年6月にインド・ハイデラバード、2022年9月に米国テキサス州ダラスに開設*2している。
日立は、クラウド活用が先進的に進むグローバルでのHARCサービスの実績やノウハウと、国内で培ったベストプラクティスを融合し、日本でのHARCサービスの提供を開始する。
*2: 2022年9月14日ニュースリリース「日立ヴァンタラが、米国ダラスにクラウドの運用管理を提供する「Application Reliability Center」を開設」
SREに精通した専門チームがクラウドアプリケーションの運用変革を支援
HARCサービスは、グローバルの先進事例や取り組みで培ったSREの専門的な知識・技術・ノウハウを集結し、お客さまのクラウドアプリケーションの運用変革を支援する。具体的には、SREに基づいた日立独自の評価指標により、クラウド運用の現状を信頼性やセキュリティなどの観点からスコア化することで、めざす姿とのギャップを明確にし、改善に向けたロードマップを提案。また、システム設計・運用支援に加えて、お客さまの中でのSRE組織の立ち上げに向けて、クラウドを前提とした運用やセキュリティに関する適切なガイドラインの策定、人財育成、体制構築などさまざまな角度から継続的に支援することで、例えば、次のような運用改善を段階的に推進し、アジリティと信頼性の両立を実現していく。
- ・ソフトウェアエンジニアリングによるトイル作業*3の自動化
- ・オブザーバビリティ導入によるシステム/サービス状況のリアルタイム監視
- ・AIOps*4を活用したインシデントの予測/予防
- ・開発チームを含めたバックログ*5共有による継続的な運用改善ループ
- ・DevSecOps%%*6実現を支えるSRE体制の構築
*3: 繰り返し手作業で行う定型的な運用作業
*4: IT運用にAI(人工知能)を適用するアプローチのこと。機械学習や分析アルゴリズムによる分析結果をIT運用に適用することで、IT運用の自律化をめざす
*5: 信頼性向上のために開発チームが対応すべき項目を一覧にしたもの
*6: システムの開発チームと運用チームが密連携することで、システム開発の迅速化と稼働の安定性を高めるソフトウェア開発とシステム運用の手法であるDevOpsにセキュリティの取り組みを加え、セキュリティを確保しつつ、迅速かつ安定的にシステム開発を実施するための手法。
End to Endの継続的なクラウドコストの管理と最適化を実現
FinOps*7を活用し、現状のクラウドコスト分析から、施策の提案/実装、継続的なコストの監視/管理までの3段階のフェーズを通じて、お客さまのマルチクラウド環境におけるクラウドコストの最適化を支援する。具体的には、総負担コストの把握や同業他社とのベンチマークから現状を明らかにした上で、リソースサイズの適正化やインスタンスタイプの変更などコスト最適化に向けた具体的なアクションを推進。また、お客さまのITシステム部門だけではなく、財務部門やサービス提供部門とも連携した継続的なクラウドコスト管理を実現する。これにより、トータルのクラウド運用コストを平均20%削減*8することが可能。
*7: 変動するクラウド エコノミクスの管理・最適化を支援するために開発された標準やベストプラクティスをまとめたもの
*8: 日立ヴァンタラでの運用実績に基づく効果
ベストプラクティスをまとめたテンプレートにより基幹システムの運用モダナイゼーションに対応
日立が国内でこれまで培ってきた基幹システムのクラウド移行や運用高度化のベストプラクティスをまとめたテンプレートを活用することで、基幹システム含めたシステム全体の運用モダナイゼーションを実現する。具体的には、基幹システムに必要となる運用やセキュリティなどに関する標準的な設計をテンプレートとして蓄積し、IaC*9の仕組みを用いて自動化することで、必要なときに迅速にIT基盤を構築することを可能にする。また、基幹システムとDXシステム双方の運用を対象に、自動化の範囲をIT基盤の構築だけではなく、高度な運用を含めたシステム運用全般に段階的に拡大していく。
さらに、日立グループ32万人が利用するIT基盤や大手金融機関、官公庁などでの運用ノウハウを有するセキュリティエキスパートが、マルチクラウド環境における安全・安心なセキュリティ運用を提供する。
「アドバイザリサービス」「デザインサービス」「運用管理サービス」「クラウドコスト管理サービス」の4つのサービスメニューがあり、お客さまの課題やシステム状況に合わせて、SaaS型運用統合プラットフォーム「JP1 Cloud Service/Operations Integration」(以下、Ops I) *10など「IT基盤/運用高度化オファリング」*11のサービスメニューとも組み合わせが可能。
*9: IaC: Infrastructure as Code (ITインフラ構築をコード化する手法)
*10: 2022年1月24日ニュースリリース 「「JP1」および「JP1 Cloud Service」を強化し、DX推進に向けたIT運用の変革を支援」
*11: IT基盤/運用高度化オファリングWebサイト
HARCサービス提供拠点として日立の顧客協創フラッグシップ拠点Lumada Innovation Hub Tokyoを活用
日立は、日立ヴァンタラと連携し、SREをベースとした高付加価値なサービス開発などを軸にHARCサービスの継続的な強化を図る。また、日本でのHARCサービス提供拠点として日立の顧客協創フラッグシップ拠点であるLumada Innovation Hub Tokyo*12を活用することで、日立は、お客さまのDXシフトとクラウドシフトの両方のニーズにワンストップで伴走し、サステナブルな成長を継続的に支援。具体的には、デジタルエンジニアリングを活用したビジネス改革の構想策定・設計をGlobalLogicが主導し、アプリケーション開発の高度化など運用改革をHARCサービスで支援するような形で、お客さまのDX実現に貢献する。