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 日立製作所は、J-クレジットの認証・発行といったプロセスのデジタル化に向けて、11月から本格的に実証を開始する。J-クレジットは、再生可能エネルギーの活用などによる温室効果ガスの排出削減・吸収量をカーボン・クレジットとして国が認証するもので、市場での取引や報告書への活用が可能となる。
 本実証では、太陽光発電を対象に、日立のサステナブルファイナンスプラットフォーム *1 の一部を適用し、IoT センサーなどを使ったデータ収集から、ブロックチェーンを使ったデータの検証、J-クレジットの認証・発行まで、一連のプロセスのデジタル化に関する効果検証を行う。本年6月から実証計画を策定しており、11月から実機システムを使って本格的な実証を行い、2024年3月までに実証効果の整理と実運用に向けた計画の検討を行う予定。
 なお本実証は、日立が、環境省の「令和5年度 J-クレジット制度に係るデジタル技術活用に向けた調査検討委託業務」の委託事業者であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社の協力事業者に採択され、取り組むもの。
 日立は、今回のカーボン・クレジットの1つである J-クレジットの認証・発行と、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場における取引システムの構築を通じて培った知見をもとに、今後カーボン・クレジットの発行から流通までを一気通貫で行う仕掛けの実装に貢献する。こうした取り組みにより、カーボン・クレジットのさらなる普及・拡大を支援し、脱炭素社会の実現を推進していく。

*1: サステナブルファイナンスプラットフォーム:
企業の ESG データやグリーンプロジェクトの稼働データを収集・可視化し、サステナブルファイナンスの促進を支援するプラットフォーム。今回の実証で利用するサステナブルファイナンスプラットフォームのグリーン・トラッキング・ハブは、IoT やブロックチェーンを活用することで、投資先プロジェクトの設備の稼働データを安全に収集し、モニタリング/レポート作成までを自動化するもの。なおサステナブルファイナンスのエンゲージメントサポートサービスは、運用機関とその投資先である上場企業をデジタルプラットフォームでシームレスにつなぎ、ESG に関する相互理解や情報開示などを促進するもの。日立と 7 社の金融機関が共同で一般社団法人サステナブルファイナンスプラットフォーム運営協会を設立し、取り組む。

 

本実証における日立の強み

1. デジタル環境債の発行実績を持つ、日立のサステナブルファイナンスプラットフォームを適用

 日立は、2022年4月に日本取引所グループはじめ 3 社と協業し *2、同年6月には国内初のデジタル環境債を発行した *3。日立は、デジタル環境債のシステムの一部を開発しており、サステナブルファイナンスプラットフォームのグリーン・トラッキング・ハブを適用することで、投資家のグリーン投資をもとに建設した再生可能エネルギー発電設備の CO2 削減に関するデータを記録・管理している。
 今回、こうした稼働実績のあるグリーン・トラッキング・ハブをもとに、J-クレジットの認証・発行のデジタル化に向けて、対象設備のデータ収集・検証・報告を簡易化する基盤(簡易創出基盤)を構築した。具体的には、IoT センサーで計測した発電量をもとに CO2 削減量の測定・算定するほか、ブロックチェーン上への記録や、J-クレジット登録簿システムへのデータ連携まで、自動的に行う。本基盤より、J-クレジットの認証・発行にかかる手間を削減し、J-クレジットの供給量拡大につなげていく。

2. カーボン・クレジット市場のシステム構築で培った、カーボン・クレジットに関する実績とノウハウを活用

 日立は、2022年9月~2023年1月に東京証券取引所が実施したカーボン・クレジット市場の実証事業(試行取引)における取引システムを、日本取引所グループ傘下の株式会社 JPX 総研とともに共同開発した *4。なお、本年10 月に東京証券取引所は常設のカーボン・クレジット市場を開設しており、引き続き同取引システムが利用されている。
 日立は、カーボン・クレジット市場のシステム開発を通じて把握した供給者・需要者のニーズをもとに、今後、太陽光発電以外の再生エネルギー設備・森林など連携することで対象とする方法論を拡大していくほか、プロジェクトの実施場所・温室効果ガスの排出削減・吸収量のモニタリング情報など、さまざまな属性情報を需要者が確認できるようにし、カーボン・クレジットの透明性をさらに向上させることで、利便性の向上に貢献していく。

*2: 日立ニュースリリース(2022年4月15日)
「国内初のデジタルな仕組みを用いた環境債「ホールセール向けグリーン・デジタル・トラック・ボンド」の発行に関する協業について」

*3: 日立ニュースリリース(2022年6月1日)
「日本取引所グループ、国内初のデジタル環境債であるグリーン・デジタル・トラック・ボンドの発行条件を決定」

*4: 日立ニュースリリース(2022年9月30日)
「カーボン・クレジット市場の実証における取引システムの共同開発について」

背景

 近年、脱炭素への関心が高まっており、企業だけでなく、自治体・一般家庭でも、省エネルギー・再生可能エネルギー設備の導入や、環境に配慮した投資、植林などが積極的に行われている。こうした取り組みを促進するため、2013年度から経済産業省・環境省・農林水産省が連携し、温室効果ガスの排出削減・吸収量をカーボン・クレジットとして国が認証する J-クレジット制度を運営している。
 しかし、J-クレジットの認証・発行に必要となる温室効果ガスの排出削減・吸収量の計測や算定、検証は人手で行っており、膨大な時間と手間がかかるため、特に中小企業や一般家庭での活用が伸び悩んでいるという課題があった。そのため IoT やブロックチェーンなどデジタル技術を活用した、J-クレジットの認証・発行の簡易化が求められている。

日立がめざすサステナブルファイナンスプラットフォームの全体像

画像: 日立がめざすサステナブルファイナンスプラットフォームの全体像

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