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大みか事業所において、熟練者の経験・知見に基づいた判断を生成AIで再現し、作業時間を8割以上短縮可能に
 
日立製作所は、社会インフラを支える情報制御システムを提供している大みか事業所において、品質保証業務にAIエージェントを適用し、顧客への対応力・対応品質を強化した。
膨大な過去事例などが蓄積されたデータベースから情報検索可能な品質保証業務支援ツールにAIエージェントを適用して、熟練者の暗黙知の形式知化を推進し、2024年10月から2025年3月まで実証実験を行いながら、現場で活用できるレベルへと精度をあげてきた。
実証実験では、問い合わせに必要な情報検索時間を約9割削減し、作業時間を8割以上短縮できることを確認した。
これにより、担当者の経験値に関わらず、精度の高い回答を短時間で作成することが可能になる。
今後、本実証での成果を受け、2026年度を目標に、鉄道システム分野だけでなく、電力や上下水道など大みか事業所全体の品質保証業務へと適用を拡大していく予定である。

日立は、電力や鉄道、上下水道など社会インフラを支える情報制御システムを提供している大みか事業所において、品質保証業務にAIエージェントを適用し、熟練者の経験や知見などの暗黙知を形式知化し組み込むことで、機器故障などトラブルへの顧客問い合わせ対応を高度化・効率化できることを確認した。
機器故障やトラブルの発生により問い合わせがあった場合、品質保証部門では、発生事象と過去の類似事例やマニュアルなど複数の情報を紐づけ、総合的な判断から対策を導き出している。膨大な情報の中から参考とすべき適切な情報を抽出し、対策に必要な情報と紐づけるには、熟練者の経験や記憶にもとづく勘が必要であり、若手担当者が迅速に対応することは難しいという課題があった。そこで、膨大な過去事例などが蓄積されたデータベースから情報を検索可能な品質保証業務支援ツールにAIエージェントを適用し、熟練者がどのようなキーワードや順番で情報を探索しているのかというパターンや業務プロセスなどの暗黙知の形式知化を推進し、2024年10月から2025年3月まで実証実験を行いながら、現場で活用できるレベルへと精度をあげてきた。
その結果、担当者の経験値に関わらず、誰でも適切な類似事例を抽出することができ、さまざまな問い合わせに対して、精度の高い回答を短時間で作成することが可能になった。鉄道システムの品質保証業務における実証においては、問い合わせへの回答に必要な情報を検索する時間を約9割削減でき、顧客への対応力強化として高い成果を得ている。また、検索だけでなく、分析業務やレポート作成業務の効率化を実現することで、対応品質の向上にも貢献する。
今後、本実証での成果を受け、2026年度を目標に、鉄道システム分野だけでなく、電力や上下水道など大みか事業所全体の品質保証業務へと適用を拡大していく予定である。
これらにより、日立は、社会インフラを支えるOT*1 領域の知見・経験と、生成AI、AIエージェントをはじめとした最先端のITの知見を掛け合わせた Lumada で、技能伝承や生産性向上などの社会課題に取り組んでいく。

インタビュー動画:https://www.youtube.com/watch?v=uf9SKYxzxxc

*1 OT:制御・運用技術

 

背景

製造業の品質管理の現場では、熟練者の経験や勘に依存する部分が多く、品質の安定化や技術の継承が大きな課題となっている。特に、エネルギーやモビリティ、産業などのOT領域では、顧客の事業にあわせ複雑で多岐にわたるシステムが構築され、多くの場合10 年以上と長期間稼動することから、顧客からの質問やトラブルに関する膨大な保守運用の情報をデータベースに蓄積している。品質保証業務の一つである、トラブルや問い合わせ対応では、過去からの保守運用の知見・情報が非常に重要であるため熟練者に依存していた。そこで、トラブルや問い合わせの概要を文章で入力すると、過去に発生した膨大な類似事象をデータベースから抽出できる品質保証業務支援ツールを活用することでトラブルを未然に防いできた。
しかし、顧客システムのトラブル対応時には、膨大な関連資料や過去の事例に基づいた熟練者の判断が必要となり、経験の少ない若手担当者では、顧客からの第一報や品質保証業務支援ツール内の検索データだけでは、状況を正しく迅速に把握することは難しいという実態があった。

本実証実験の内容と成果

本実証実験では、日立の生成AIやAIエージェントのスペシャリストを集結したGenerative AI センターのデータサイエンティストを中心とした GenAIプロフェッショナルが、ヒアリングを通して熟練者の暗黙知を生成AIのプロンプトに落とし込み、改善・評価、チューニングを行うことで、従来の品質保証業務支援ツールに生成AI を組み込んだ。そして、鉄道システム分野の品質保証業務を対象とした実証実験において以下3つの効果を確認した(下図)。また、ヒアリングだけでなく、熟練者と日立の GenAIプロフェッショナルが一体となって連携し、実際の業務を想定した質問と模範解答のペアを100件以上作成した。これにより品質保証業務を網羅した共通の評価基準が作成され、熟練者の視点からのフィードバックを繰り返し得ることができるようになったことで、暗黙知を獲得し、より効果的な成果の早期獲得につながった。

画像: 品質保証業務のAS-ISとTO-BE

品質保証業務のAS-ISとTO-BE

(1) トラブル事例検索の精度向上(検索時間を約9割削減)

顧客から不具合に関する問い合わせや質問を受けた際、生成AIが解釈し、類似度が高い順にドキュメントを表示するほか、具体的な質問文の候補を出すことにより、担当者の成熟度に関わらず、過去のナレッジを効果的に活用できることが明らかになった。

(2) 特徴量抽出・分析による品質レベルの向上(分析時間を8割以上削減)

発生件数などの特徴量抽出・分析に生成AIを活用したことで、熟練者の過去のトラブル対応記録へのアクセスが容易になり、ナレッジの共有が進むことが確認された。また、トラブルを記録したレポートの分析を通じて、時系列的な不具合情報や製品ごとの不具合を効率的に把握できるようになり、迅速な対応力の強化が実証された。

(3) 初報レポートのドラフト生成によるトラブル対応の高度化(レポート作成時間を8割以上削減)

熟練者やキーパーソンが不在の場合でも、トラブル対応の初動が可能であることが確認された。将来的には、顧客自身がトラブル情報にアクセスできるようにすることで、24時間体制での初動対応が実現できる見込みである。
また、経験の浅い担当者でもドラフト版の初報レポートを作成できるようになり、顧客に迅速に初報レポートを提供することで、顧客満足度の向上を実現する。

今後の予定

今後、日立は、大みか事業所における生成AI、AIエージェントの活用を順次拡大していく。品質保証業務支援ツールの精度向上を図りながら品質保証部門全体への取り組みを進めるとともに、システム開発のあらゆる工程への適用も進めていく。また、人財不足や業務の属人化など同様の課題を持つ製造業などの顧客向けにソリューション開発・提供も検討し、社会課題解決に貢献していく。

関連リンク

日立の生成AI について
https://www.hitachi.co.jp/products/it/lumada/spcon/generative_ai/

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