※ 画像は三菱UFJ銀行での利用イメージ
日立製作所(以下、日立)とサイバートラストは、ICチップを活用したオンラインでの本人確認サービスにおいて連携し、日立の「eKYC支援サービス*1」を機能拡張した。
本機能拡張により、日立がiPadにおける本人確認書類のICチップ読み取りサービス(以下、本サービス)を9月16日より金融機関向けに提供開始した。なお本サービスは、株式会社三菱UFJ銀行(以下、三菱UFJ銀行)での導入が決定しており、同日より店舗において運用を開始した。
本サービスは、iPadにおいて外付けカードリーダーをBluetooth接続し、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードおよび在留カード)のICチップを読み取ることで、取得したICチップ情報の真正性確認を実施し、本人確認書類の偽造による「なりすまし」を防止する。現在はiPadを用いた本人確認においては、カメラ機能により本人確認書類を読み取ることが一般的であるが、本サービスを導入することで、既存のiPadを活用しつつ、利用者の安心・安全な本人確認を実現する。
日立は今後、サイバートラストとの協業を強化し、本サービスを、金融機関をはじめ特定事業者に幅広く展開することで、利用者に対する安心・安全な本人確認を支援する。
*1: オンライン上での契約や口座開設時などの本人確認手続きにおいて、スマートデバイスを活用してオンラインでの本人確認を支援するサービス。https://www.hitachi.co.jp/products/it/finance/solutions/platform/environment/eKYC-Support/index.html
背景
現在金融機関などでは、eKYC(electronic Know Your Customer)と呼ばれるオンラインでの本人確認の際、顔写真付きの本人確認書類と利用者の顔写真を撮影・送信し、両者を照合する確認手法である「ホ」方式*2 が広く利用されている。しかし、この手法では本人確認書類の偽造による「なりすまし」のリスクが伴うため、2027年4月以降は法改正により、本人確認には、本人確認書類のICチップを読み取って確認する「ヘ」方式*3 や「ワ」方式*4 が義務づけられる。
一方で、人財不足や店舗事務の効率化に伴い、多くの金融機関では本人確認手続きにおいて、利用者がオンラインでスマートフォンにて行う他、店舗設置端末としてiPadを用いた手法にシフトすることで非対面取引を推進し、窓口業務に従事する行員の負担軽減を図ってきた。しかしながら、iPadにはICチップを読み取る機能が搭載されておらず、法改正後はeKYCを実施できなくなることで、窓口サービスにおける業務に影響が出る可能性があった。
こうした中、日立は、2020年12月より、公的個人認証サービスの主務大臣認定プラットフォーム事業者である、サイバートラストとの連携により開発した「eKYC支援サービス」を、主に金融機関向けに提供*5 しており、既にスマートフォンにおいては本人確認書類のICチップ確認に対応している。今回、日立がサイバートラストの「iTrust本人確認サービスeKYCライブラリ*6」を用いて機能拡張し、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の「個人認証カードリーダー ID-MY2」と連携することで、法改正に対応したiPadを用いた本人確認を実現した。
三菱UFJ銀行においては、2021年から「eKYC支援サービス」によるオンラインでの本人確認を開始しており、本サービスを導入することで、店舗においても設置端末であるiPadを活用した、非対面での本人確認業務の運用を開始した。
*2: 犯罪収益移転防止法施行規則6条1項1号(ホ)。「本人確認書類の画像+本人の容貌の画像送信」を行うことで、オンライン(非対面)で完結する本人確認手法の呼称。
*3: 犯罪収益移転防止法施行規則6条1項1号(ヘ)。「本人確認書類のICチップ情報送信+本人の容貌の画像送信」を行うことで、オンライン(非対面)で完結する本人確認手法の呼称。
*4: 犯罪収益移転防止法施行規則6条1項1号(ワ)。「マイナンバーカードのICチップ内の署名用電子証明書+特定取引情報の送信」を行うことで、オンライン(非対面)で完結する本人確認手法の呼称。
*5: ニュースリリース「三菱UFJ銀行に、日立の「eKYC支援サービス」が採用決定」(2020年12月27日)
*6: ICチップからのスムーズな情報読み取りを実現するiTrust本人確認サービスのオプションサービス。
本サービスの特長
(1) iPadとBluetoothカードリーダーによる安心・安全な本人確認
本サービスは、Bluetooth接続に対応した外付けカードリーダーを使用して、iPadで本人確認書類のICチップ情報を読み取り、本人確認の真正性を確保することにより、従来の「ホ方式」に比べて、偽造や「なりすまし」のリスクを大幅に低減する。また、現在iPadにて「ホ方式」を利用している金融機関においては、既存資産であるiPadを活用して「へ方式」や「ワ方式」を実施することが可能なため、コスト低減と法改正への対応を両立できる。
(2) 金融機関の店舗における、非対面業務での本人確認対応の推進
本サービス導入により、金融機関は法改正後も、店舗設置のiPadを活用したサービスを継続できるほか、利用者自ら非対面にて本人確認を必要とする手続きを可能とすることで、さらなる窓口業務の効率化に貢献する。さらに、利用者においても窓口の順番を待つことなく店舗での手続きができることで、待ち時間の短縮が実現する。
今後の展開
今後、日立は、サイバートラストとの協業を強化し、本サービスを金融機関や公的機関などに広く展開することで、事業者側の業務効率化と利用者側の利便性向上および安心・安全な金融取引の実現を支援する。さらに、iPad以外のタブレット端末についても対応範囲を広げることで、金融機関のさらなる非対面取引の拡大に貢献していく。
「eKYC支援サービス」について
商標注記
iPadは、Apple Inc.の商標です。