国内企業のOSSエンジニアが活躍する場を創出し、AIを中心としたデジタル社会の発展に貢献
このたび、日立製作所(以下、日立)の Head of OSPO (Open Source Program Office)*1 である 中村 雄一 が、グローバルでクラウドネイティブとAIの技術革新を促す最大規模の団体である Cloud Native Computing Foundation(以下、CNCF)*2 の功労賞である「Chop Wood Carry Water Award」を受賞した。本賞は、さまざまなオープンソース・ソフトウェア(OSS)の開発プロジェクトへの貢献や、それらを支えるコミュニティの活性化に尽力したメンバーに贈られるものである。本年は、CNCFに所属する720以上の団体の中から、6名が選出された。
今回の受賞は、企業の枠を超えて、日本初の公式コミュニティ「Cloud Native Community Japan」(以下、CNCJ)の設立*3 と運営に尽力したこと、またCNCFのグローバルイベントとして初開催の「KubeCon + CloudNativeCon Japan 2025」をCNCJメンバーとともに招致し、FinOps Foundation イベントを同時開催して成功に導いたことなどが高く評価されたものである。これらの活動により国内企業のOSSエンジニアが活躍する場を創出し、AIを中心としたデジタル社会の発展に貢献している。
日立はこれまで、デジタル社会の発展に不可欠なOSSの価値をいち早く認識し、ITとOTの両分野でOSS活用を推進してきた。中村は日立においてOSSのビジネス活用を推進するとともに、そのノウハウを複数のOSSコミュニティにフィードバックするなど、日本を代表するOSSコミュニティのリーダーとして数々の功績を重ねてきた。今後も日立は、顧客・パートナーやOSSコミュニティとともにAIエコシステムを形成することで、社会課題を解決し持続的に成長する社会の実現に貢献していく。
*1: ニュースリリース "日立、戦略的なOSS活用をグローバルでリードする Open Source Program Office (OSPO) を設立" (2024年11月8日)
*2: The Linux Foundation 傘下でコンテナやマイクロサービスなどクラウドネイティブ技術の開発や普及をグローバルにリードしている非営利団体
*3: ニュースリリース "クラウドネイティブの技術革新を促す日本初の公式コミュニティ「Cloud Native Community Japan」設立に参画" (2023年12月1日)
CTO of the CNCF Chris Aniszczyk 氏のコメント
Chop Wood Carry Water Award は、私たちのコミュニティを支える陰の功労を讃えるものです。中村 雄一 氏はドキュメントの改善や Cloud Native Community Japan (CNCJ) のミートアップの企画・運営といった、重要な任務に心血を注ぎ、OSS貢献の精神を具現化しています。彼の着実な取り組みが、CNCFプロジェクトの健全かつ持続可能な発展を支え、日本国内はもちろん、グローバルなコミュニティにも貢献し続けています。
日立製作所 Head of OSPO 中村 雄一 のコメント
このたびは、CNCFより栄誉ある賞を拝受し、厚く御礼申し上げます。わたしは、これまで20年以上にわたりOSSコミュニティの発展に尽力してきました。The Linux Foundation (以下、LF) のボード・エバンジェリストとして、また、CNCF Governing Board*4 としても国内コミュニティとLF関連団体との橋渡し役を担い、ビジネスの中でOSSエコシステム発展に取り組んでいます。また、国内エンジニアの育成や活躍を促進するとともに、CNCFのOSSであるKeycloakにおいては認証・認可基盤としてのグローバルの価値向上に貢献してきました。さらに直近では、AIエージェントのアクセス制御*5 についても積極的に知見を提供し、ベストプラクティスの確立を働きかけています。今後もOSSコミュニティにおいてグローバルな社会課題の解決に寄与していきます。
*4: お知らせ "日立の Head of OSPO が Cloud Native Computing Foundation の Governing Board メンバーに就任" (2025年2月28日)
*5: ニュースリリース "AIエージェントの導入効果を最大化する HARC for AI を提供開始" (2025年10月7日)
背景
近年、デジタル変革において活用されるクラウドネイティブやAI技術は、OSSコミュニティの中で機能の拡充が急速に進んでいる。特に、CNCFは世界各地の720以上の団体が加入し、世界中のエンジニアが開発に参加しており、AIの基盤として欠かせないクラウドネイティブ技術の発展に貢献している。しかし、2023年当時、日本ではCNCFと企業や団体をつなぐコミュニティが存在せず、日本発のクラウドネイティブな技術も少ない状況にあった。そこで中村は、グローバルなCNCFの開発コミュニティと、日本の企業や既存の団体をつなぐ組織であるCNCJを中心メンバーとして立ち上げ、国内企業のエンジニアに参画を促すなど、コミュニティ運営や普及活動に尽力してきた。
中村の経歴
株式会社日立製作所 Head of OSPO、博士 (工学)
- 2001年~: OSSセキュリティの研究開発に携って以降、特に国内でのSELinux*6 の普及活動をリードし、多数のコードをコミュニティに提供
- 2015年: SELinux に関するOSS開発活動が認められ、OSSセキュリティのコミュニティメンバーと共に、情報処理学会より「喜安記念業績賞」を受賞
- OSS Keycloak を活用したAPI管理ソリューションを立ち上げ、メンテナも育成
- 2022年: LFのボードメンバーに就任
- 2023年: CNCFの Japan Chapter であるCNCJの設立に参画
- 2024年: LF Japan 初代エバンジェリスト就任
- 2024年: Head of Hitachi OSPO 就任
- 2025年: CNCF Governing Board 就任
*6: SELinux (Security-Enhanced Linux) はLinux システムにアクセスできるユーザを詳細に制御できるLinuxカーネルの組み込みモジュール
日立のOSS活動について
日立は、2000年のLF創立当初よりスポンサーとして、Linuxカーネルの信頼性向上や、Keycloakにおける金融向けセキュリティの欧州・南米の規格に対応した機能開発に取り組み、コミュニティ活動を通じて日本におけるOSSの普及・拡大に貢献してきた。こうした長年の活動実績が評価され、グローバルなコミュニティにおけるCNCFアンバサダー、TAG Security and Compliance の Tech Lead*7、Keycloakや Hyperledger Fabric のメンテナ*8*9 といった役割で、日立社員が活躍しており、日立グループとしてグローバルな普及活動を継続している。近年では、CNCF関連プロジェクトや国内外コミュニティを通じ、AIエージェントのデータアクセス制御でも最新の知見やノウハウを提供している。
*7: お知らせ "日立の社員が Cloud Native Computing Foundation の TAG Security and Compliance の Tech Lead に初期メンバーとして就任" (2025年8月7日)
*8: お知らせ "OSS「Keycloak」開発プロジェクトのメンテナに日立の社員が就任" (2021年10月26日)
*9: お知らせ "日本企業で初めて、日立の社員がエンタープライズ向けブロックチェーンのOSS「Hyperledger Fabric」開発プロジェクトのコアメンテナに就任" (2024年4月18日)
関連サイト
OSS (オープンソース・ソフトウェア) ホームページ
https://www.hitachi.co.jp/products/it/oss/index.html
商標注記
記載の組織名、製品名は、それぞれの組織の商標もしくは登録商標です。



